
先週末の海外市場でドル円は、米10年債利回りが4.06%台まで低下した影響で153.02円付近まで弱含んだが、政府機関の閉鎖解消に向けた期待が高まるとドル買いで反応し、一時153.59円まで本日高値を更新した。ユーロドルはさえない米指標を手掛かりに一時1.1591ドルと10月30日以来の高値を更新。その後は週末を控えた持ち高調整の売りが進み、1.15ドル台半ばまで上値を切り下げた。
本日の東京時間でドル円は、153円台を中心とした取引になるか。下値は依然として高市政権の積極財政政策と、米国の政府機関閉鎖の解消期待が支えになりそうだ。一方で、トランプ政権の経済政策に黄信号が点灯していることや、日米両政府のドル高・円安懸念が上値の重しになる。
先週7日から始まった衆院予算委員会が、明日11日まで開かれる。また、参院の予算委員会は12日から14日まで行われ、今週の政治日程は予算委員会で占められる。7日時点までの質疑応答では、市場を動意づけるようなやり取りはなかったものの、物価高対策を中心とした経済対策に踏み込んだ場合は警戒したい。特に経済諮問委員会では、民間からはリフレ派を起用していることで積極財政政策への期待は高い。財政拡大は、株価上昇によるリスク選好の円売りというプラス面、財政不安や格下げというマイナス面ともに円売りに動きやすそうだ。
トランプ政権に対する懸念要因の一つだった「米政府機関の閉鎖」が暫定的な解除に向けて、民主党上院との話し合いが進んでいることもドルの買い戻し要因。早朝はこの報道で、一時154.00円までドル買いを促した。米国では週末、航空管制センターが人員不足で約1500便が欠航となった。米国民の移動が最も多い感謝祭に向けて、トランプ大統領はこれ以上の支持率低下を止める必要があるだろう。報道によれば来年1月下旬までの暫定的に資金を賄うものになっているが、過去最長となった政府閉鎖が解除された場合は米国売り・ドル売りのネガティブ要素は1つ減ることになる。
ただ、ドル売り要因がすべて消え去ってはおらず、ドルの上値も限られそうだ。先週は、主要な米地方選挙で全敗を喫した共和党だが、敗因の大きな理由の一つはトランプ政権の経済対策に対する低評価だ。10月に実施され11月の公開された世論調査では、政権の経済対策が期待通りとの回答が34%、期待外れは63%だった。インフレと生活費については、期待通りが30%、期待外れが66%に達している。外交政策についても過半数が期待外れと示すなど、第2次トランプ政権は国民の支持を失っている。
更に、先週から始まった「トランプ関税」の審理に対して、トランプ大統領に指名された保守派の判事を含め関税を大統領権限で決めることに対して疑念の声を上げている。判決が出るのが年末か年初になるとされているが、トランプ関税が違憲とされた場合は、中間選挙を前にトランプ政権が急速にレームダック化に進むリスクもありそうだ。
トランプ関税が違憲とされた場合は、貿易不均衡を為替操作で行う可能性もある。昨年の米国の為替報告書で、日本は3期連続で監視対象国とされた。為替操作では円安や政策金利の低さを指摘しているが、これらの是正を求めて不均衡の解消を企てるかもしれない。日本以外にも中国、韓国、台湾、シンガポール、ベトナム、ドイツ、アイルランド、スイスなどが対象国に指定されているが、これらの多くの国に対してのドル高修正圧力をかける可能性もある。高市政権にとって輸入物価上昇圧力の円安を是正するために、相応の円買い戻しは渡りに船ということもあり、トランプ関税が違憲判断にも備えが必要となるだろう。
なお本日は日銀から、先月末の「金融政策決定会合における主な意見」が公表予定。また、中川日銀審議委員の講演が岡山県で12時40分から予定されている。同審議委員は、先月の日銀会合で据え置きを支持した。会合後に発表された本邦経済指標では、6日の実質賃金以外には判断に変更をもたらすような数値は見られず、目新しい内容の発言を期待するのは難しいか。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ


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