ゴルフ場市場 8千億円超まで回復
ただし、需要が半減した一方で、供給(ゴルフ場数)は大きく減っていません。多くのゴルフ場が会員権の償還問題に端を発した民事再生などを経て営業を継続していること、また山間地に開発されたゴルフ場は他用途転用が難しく閉鎖が困難であることが背景にあります。
また、日本のゴルフ場は建設費用を会員権によってファイナンスしてきた歴史から会員制が中心の運営形態となっており、これが若年層や初心者にとって参入障壁が高く、パブリック利用やウォークイン利用の柔軟性が低いため、集客力を落としています。
私は日本のゴルフ場の収益性が低迷する主な理由は、サービスのコモディティ化、施設設計と顧客ニーズのミスマッチ、税制の不利、サービスの不便さにあると考えています。
立地面では、都市近郊の一部の名門コースや人気コースを除き、多くのゴルフ場はアクセスが悪く、特に若年層や時間のないビジネスパーソンにとって予約が取りずらい、通いづらいというハードルがあったり、独特のプレー文化により、インターネット予約や、ウォークインによる利用ができないことも不便さを感じさせています。
ゴルフ活動家 ゴルフビジネスに特化したコンサルティング、ゴルフ場のオーナー代理人、ゴルフコース改修プロジェクトマネージャー、人材育成のためのコーチング、セミナーや執筆をしてます。詳しくはプロフィールページをご覧ください。
ではなぜ、ゴルフ場が斜陽産業とされ、悲観的な論調が多いのかという問いに対しては、①収益性の低さと、②ゴルファーの減少トレンドと高齢化が原因と推測できます。
極めて実現性の高い「人口減少」という潮流の中で、約10年後の2035年に向けて、今後日本のゴルフ場がどうなっていくのかを予測しながら、ゴルフ産業にもたらす課題を整理し、解決のヒントをまとめてみました。これらの問題はゴルフ産業に関わらず、多くの国内産業にとって同じ意味を持つと思いますが、ゴルフという余暇産業、あるいは地方産業という視点をもつことで得られるビジョンを皆様と共有できればと思います。事業レイヤーでは先述したマクロ環境を踏まえて「都市型ゴルフ場」「郊外型ゴルフ場」「地方型ゴルフ場」という3つの分類に分けて、それぞれのゴルフ場にとって重要なポイントをキーワードとして考えてみます。
海外の事例では、ゴルフ場としての収益性を念頭に無理にパー72にせず、面白くもメンテナンスフレンドリーなパー68のコースや、ハウスはトレーラーハウス、青空レストランでシャワーもないがコースは素晴らしいといった多様性があり、それがゴルファーのニーズごとに選ばれている状況とかなり異なります。
現在も日本のゴルフ場の80%以上は会員制で占められていますが、逆に米国では80%がパブリックコース(公共やパブリック運営)で、日本とは比率が真逆です。他の先進国では集客の60%がウェブ、30%が電話、10%以上がウォークイン(当日利用)というデータからも排他的な来場システムが集客を阻害しています。
東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。
2021年度の当期利益の合計は、同2,932.3%増の171億3,300万円と30倍増に拡大。プレーフィーなどで収入が増加した大手ゴルフ場を中心に急回復したという。
冬ゴルフはどんなところに気を付ける?
Golf Property Analystsが発行した「2024 Golf Market Summary」によると全米のゴルフ場の平均的な営業利益率は10-15%程度なのに対して、日本のゴルフ場757社の営業利益率(東京商工リサーチによる2021年調査)は全国平均で3.5%と低水準であることがわかります。
最終損益については、2021年度は黒字企業の構成比が82.8%と、前年度の58.7%から24.1ポイント上昇。一方、赤字企業は17.1%と、コロナ前の2019年度から8.5ポイント改善した。同調査によると、「PGMグループやアコーディアグループ、太平洋クラブなど、業界大手が軒並み大幅黒字を計上したほか、中堅クラスでもゴルフ場入場者数が増加し、利益が改善した企業が多かった」という。
また先述したようにピーク時から半減している国内ゴルフ人口において、さらに全利用者9000万人のうち約2150万人(23.8%)が70歳以上の高齢者であり、今後もこの数が減っていくことが予想されていることが、ゴルフ場過剰論やゴルフ場悲観論の原因になっていると予想されます。


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