ドラッグストア戦国時代 再編加速
実際に、素材業界である石油化学業界には2014年11月に、板ガラス業界には2015年6月に、事業統合やM&A(合併・買収)を促す「産業競争力強化法第50条」が適用されて、再編の機運が高まっている。
台湾のドラッグストア研究家、鄭(チェン)世彬(スービン)氏。中国や台湾の人はこの人の書く薬のガイド本を片手に訪日することが多い。「爆買い」仕掛け人の一人といえる。「マツキヨはブランド。品ぞろえ豊富で、質のよいPBも人気。自分の本にも載せている」。
地方銀行業界は、人口減少という社会構造的要因を背景としつつ、地方銀行の経営統合を促す金融庁の動きをきっかけとして、一気に再編の火ぶたが切って落とされた感がある。横浜銀行と東日本銀行、肥後銀行と鹿児島銀行などが、相次いで統合を発表している。地域に根付いており展開エリアの拡大が事業拡大に直結する事業特性であるため、しのぎを削っている近隣の地銀同士が、戦国時代の国盗り合戦のごとく、同盟相手を求めて陰に陽に動き始めている。現状、地銀・第二地銀含めると100行を超えており、さらに信用金庫や信用組合は450近くにも上っており、今後再編が加速するのは間違いなさそうである。
なお、筆者は自動車業界に注目している。電気自動車や自動運転などの新たな技術の台頭に伴い競争・ゲームのルールが大きく変わりつつある中、まだ10社以上が存在している完成車メーカーを中心に、部品メーカーやディーラーなどを巻き込んだ再編が起こるのではと考えている。特に部品メーカーは、これまでのすり合わせを中心としたメカニック領域での開発が重視されていたが、これからはエレクトロニクス領域やIT領域での開発が必須となることが想定される。そうした変化を見越し、実際に、自動車部品のミツミとミネベアが経営統合を発表し、またトヨタはグループの部品事業の集約を発表している。
3つ目の論点は、2つの論点とはやや趣を変えて考えてみたい。同じ業界で戦っている企業であれば、取り巻く環境は同等に影響しており、再編の必要性も同様に迫っているはずである。にもかかわらず、先鞭を切って再編に着手する企業と、最後まで取り残される企業とが存在している。あたかもマーケティングのイノベーター理論におけるイノベーターと、フォロワーやラガードのようである。
最後にスーパーマーケット業界を見てみると、ここ数年で大きく潮目が変わってきている。人口減少の影響は同様にあるものの、人口・社会構造変化を背景とした消費者の生活スタイルの変化が、直近の再編に大きく影響を与えている。具体的には高齢化に伴うモビリティ(移動のしやすさ)の低下や販売チャネルの多様化などにより、地方ロードサイドから都心部への揺り戻しや、規模拡大志向だけでない戦略の再構築・軌道修正が求められている。
一方で、こうした流れに乗りきれずに再編に取り残される企業も存在する。石油元売り業界におけるコスモ石油やコンビニエンスストア業界におけるミニストップがそれに当たる。コスモ石油は、ガソリンの国内販売シェアで10.7%にとどまっており、JX・東燃連合の53.1%、昭和シェル・出光連合の31.7%に、大きく水をあけられている。ミニストップも国内店舗数は約2,000店舗であり、セブンイレブンの約19,000店舗、ファミリーマート・ココストア・サークルKサンクスの約18,000店舗、ローソン・スリーエフ・ポプラの約13,000店舗とは5倍以上の差がある。そうした企業は戦略オプションが限定される可能性がある。
「今日、放課後にマツキヨする?」。1990年代、東京・渋谷の女子高生の間でこんなフレーズがはやった。「マツキヨ」こと、マツモトキヨシホールディングスは、その頃の社会現象的な人気を契機にドラッグストア業界のトップに君臨するようになる。
競争が激化しているドラッグストア業界。業界再編の動きが加速する中、各社が特色を打ち出しています。
ドラッグストアの食品販売について、どのように感じますか?
トヨタの系列部品メーカーの再編においても、「重要部品を外部のメガサプライヤーに握られるわけにはいかない。実のところ、今回発表した事業の移管・集約の具体的な方法は、これから詰める。ある意味“生煮え”でも再編の方針を打ち出したのは、持続的成長への布石を打つという強い意志から」と話しており、勢い・思い切りが必要であることが分かる。
石油元売り業界は、2015年に入って、業界2位(出光興産)と5位(昭和シェル石油)、1位(JXホールディングス)と3位(東燃ゼネラル石油)がそれぞれ経営統合を表明した。人口減少を背景とする需要縮小により業界全体として設備過剰になっていることに加えて、シェールガスなどの代替燃料の台頭、原油安といったグローバルでの構造変化も再編を加速させた要因となっている。さらに、石油元売り業界だけにとどまらず、今後自由化されていく電力業界やガス業界を巻き込んだエネルギー業界全体での再編へとつながっていく可能性も秘めている。なお当業界も行政(経済産業省)の意向が働いており、プレイヤー数を減らして過剰設備を解消し、残ったプレイヤーの国際競争力を高めるような要請がされていた。
まず、再編はどのようなペースで起こるのか見てみたい。前述した地方銀行業界では、前頁記載の表の通り、わずか2年強で6つの統合が起きている。 また百貨店業界を振り返ってみても、2007年9月に大丸と松坂屋が統合してJ.フロントリテイリングが発足したのを皮切りに、2009年8月までの2年間に、阪急百貨店と阪神百貨店、三越と伊勢丹、そごうと西武、ミレニアムリテイリングがそれぞれ統合している。
では、他の業界ではどのような動きが見られたのか。ここ2~3年で再編が進んだ主な業界として、地方銀行業界と石油元売り業界、スーパーマーケット業界を取り上げる。
また正確な統計データは持ち合わせていないが、後追いで再編に着手した企業よりも、先行して着手した企業の方が好調なのではないかとの仮説をもっている。再編後の統合プロセスに時間をかけることができ統合効果の追求をしやすいことに加え、自社に合った/相性の良い相手を選択しやすいというメリットもあると思われる。


コメント