再開発による閉店 そば屋女将思い
ねぎま鍋はねぎなどの野菜と脂ののったまぐろの鍋です。 江戸時代後期にまぐろがとれた時に、保存や輸送の方法に限りがある中で、脂が多く傷みやすいトロの部分を、いかに食べるかという工夫から、この界隈で始まったと言われています。 江戸城のすぐそば、人も多く、堀などの船での輸送が充実した人形町界隈ならではの「ねぎま」。 元は一杯ずつ売られるねぎま汁から始まり、みんなで楽しめる鍋にもなっていった江戸名物です。 かつて池波正太郎氏も対談集の中でご自身の「ねぎま鍋」の思い出を語っておられました。 そんな「ねぎま鍋」を、よし梅では素材重視の出汁で贅沢に召し上がっていただきます。 ふつふつと出汁が沸き、野菜が煮えたところでサッとまぐろを一切れ……江戸の味をぜひ。
「立喰そば・うどんファミリー」の創業は昭和60(1985)年。プロレス好きなご主人と一緒に始めた店である。家族でやっていくからということで店名が決まったという。なかなか素敵な名前である。
貴重な経験をさせていただいた3年間の修行期間を終え、ついに開業できました。 資金ゼロ(むしろマイナス)からのスタートでしたが、それでも来ていただけるお客様をおもてなししたいという気持ちは人一倍ありました。 秋になると、店に行くまでにある公園で、綺麗に紅葉している落葉を毎日拾って飾り棚にあしらいました。30代半ばの男が毎日公園で何かを探しているという姿は行き交う人々には奇異なものに映ったかもしれません。ですが、その時の気待ちが風来蕎のおもてなしの原点だと思い忘れないようにしています。地域のお客様は「若い夫婦が頑張っているから」と応援してくださる方が多く、和服で接客する女将に「私はもう着ないのであなたに着てほしい」とおっしゃって上質な着物や帯などをたくさんいただきました。 また、当店の中庭に飾ってある自然石を使った素晴らしい盆栽はご近所のおじいちゃんの作品で「皆さんにみていただけるなら」ということで、季節ごとに状態の良いものをご厚意で持って来てくださいます。 ご自身が飲食店をやってらっしゃった頃の大切なファイルを「何かの参考になれば」と下さったおしゃれな老紳士の方。お父様がホテルでフレンチシェフをやっていたのでとおっしゃって立派なフランス料理事典の全集を下さった方。 いつも旅行先での品のいいお土産を「僕はこういうの、美味しいと思うんだけど…」と言って持っていらしてくれるお客様もいらっしゃいました。 まだまだ一品料理のレパートリーも少なかった頃なので、その上品な味付けはとても勉強になりました。 珍しい山野草を届けてくれる年配のお客様はその強面の容姿とは裏腹にとても繊細な方でした。「庭を見に来い!」とのお言葉に甘えて庭師さんと何年もかけてつくられた山野草だけの夢のような庭で二人で酒を飲みました…。 何かを引き継ぎたいという気持ちが人には皆あるとするなら、引き継がれるものの一人に選んでいただけることは本当に幸運なことです。そんな思い出深いお客様の中には残念ながらお亡くなりになられた方もいらっしゃいます。「最後にいらしたときの蕎麦はご満足いただけただろうか?」その日その日の状況で変わりやすい手打ちそばを油断せずに打たなければと思わされる事の一つです。 応援していただいた方のためにも少しずつでも良い店にと思っております。 アルバイトの方々との出逢いもとても有意義でした。 「最近の若モンは…」などと言えないしっかりした人が多い事に驚きます。お客様からもそういう声をいただくことが多く嬉しいです。先日バイトの卒業生がお母さんと2人で食べに来てくれました。その際お母さんからこっそりとお手紙をいただきました。 「娘は第一希望だった東京都の公務員に合格できました。一次テストの筆記はあの娘の力だと思いますが、二次の面接で受かったのはこちらでアルバイトさせていただいたお陰です。」と書いてあり、とても光栄でした。 また別のOBの女の子は就職先の同僚の方と食べに来てくれました。同僚の方が「あの話してないの?」と言うので女将が「あの話って何ですか?」と聞くと、彼女が面接に来た際、うちの店の話をしていたらしく、たまたま社長さんが同じ田園都市線にお住まいだったので食べにいらしたそうです。それで店を気に入っていただき採用になったとのこと。お褒めいただき大変光栄でしたが、何より嬉しかったのは、面接の際、彼女がうちの店のことを語ってくれたことです。しかも「そんなに言うなら行ってみようかな」と相手の方に思わせる程に…。 うちの店は、オシャレなカフェでもないですし、ボーっとつっ立っている暇はありません。常にお客様やほかのスタッフの動きを感じながら、「自分は今どういう動きをすればいいのか?」が問われます。毎回ミーティングもします。ただどうも優秀な学生さん達はその状況を面白がってるような気がします。「サボりたい」も人間の本質に違いないですが、「自分を向上させたい」というのも間違いなく人間の本質なのだと教えられます。 「蕎麦屋の接客」はきっとAI(人口知能)に取って代わられない仕事だろうなあと感じます。 また高校一年生から働いてくれた女の子が社会人になって仕事や恋愛の相談に乗っているときは親の心境に近くもなります。 何年ぶりかで食べに来てくれた男の子が父親になっていたり…。 若い人たちの成長を見ることは楽しいことです。 父の日、母の日、敬老の日、そんなご家族にとって大切な日に、当店をご利用いただけることはとても幸せなことです。 蕎麦はお子様からお年寄まで世代を問わずお好きな方が多いので選んでいただけているようです。 「世代を継ぐこと」は風来蕎の大きな一つのテーマです。 若い方には伝統的なものの良さを感じていただくこと。 年配の方には新しい提案を面白がっていただくこと。 世代を継ぐ交流の場として風来蕎がお役に立てるようにと願っております。
大好評でしたトンビマイタケは終了しました。ただ、もし山奥に少しでもあればとお願いしてあるので、運がよければあと1回くらいスポットで入るかもしれません。これからは天然の舞茸やシモフリシメジが入荷する予定です。秋、冬の限定メニュー、「天然きのこおろしそば(冷)、天然きのこそば(温)」が始まりました。きのこおろしはなめこの食感が楽しいさっぱりしたそばです。あったかいきのこそばは、テーブルまで運ぶとお客様が驚かれるほど薫り高いそばで、店長の私も大好きな温そばです。その他一品料理も秋刀魚、秋鮭など時期のものが増えてきました。ただ、残暑が長引いていますので「ぶっかけそば」はもうしばらく続けます。よろしくお願いします。
店長日記をさぼっている間に、急に冬が近づいてきました。先日木枯らし一号が吹いた日は、帰宅中に急に去年の大晦日の事を思い出してしまい、「そろそろ体調を整えていかねば」などと気の早いことを考えてしまいました。(これってそば屋の習性なのだろうか・・・。)ということでメニューも「冬モード」です。そばでは「牛すじカレー南蛮そば」が始まりました。市場からの仕入れでも冬魚のヒラメや鯖などがどんどん脂がのってきています。真鱈の白子、つぶ貝などもいいです。この時期はどれを使おうか目移りする楽しい季節です。海ものでは唯一、赤崎産の大粒カキが夏の水温の高さが響いて生育が遅れているのが気がかりですが、中途半端なものは使いたくないのでもうしばらく辛抱して待つことにします。あとは海老芋も始まりました。最後に現在50%くらいが「新そば」になりました。来月の中旬には100%になると思います。去年は凶作でしたが今年は今のところ順調です。今度の台風大丈夫かな?となってしまうのもそば屋の習性なのでした。
先日、ありがたいことに2件の取材を受けました。そのなかで、「開業されて、6周年だそうですが・・・」という質問を2件ともされたので「いえ、7周年を終えて8年目です。」とお答えしました。おかしいなと思って考えてみると、どうも、きちんとうちのホームページをご覧になってから取材に来ていただいたらしく、店長日記を1年半もサボっていましたので情報が更新されておらず、ご迷惑をおかけしました。スミマセン。 今は、スタッフもヤル気のある方々が揃い、時間的にも少し余裕が出てき始めているので、店長日記を再開せねばと思っております。たぶん大丈夫だと思います。宜しくお願いします。
新しいスタッフが加わりました。台湾から日本語学校へ留学してきた女の子です。「評価の高い日本のサービス業を勉強したくて」というのが志望動機でした。台湾の国立政治大学を卒業し、日本語能力試験も一級を所得しているし、TOEIC英語検定も880点と非常に優秀です。うちの女将も何を隠そう英語科の卒業ですが、実力のほうは「聞かぬが花」ということで、外国のお客さまなど見えられた時は良き助っ人になってくれると思います。仕事へのモチベーションも高く、教えていてやりやすいですし、何より他のスタッフにも良い影響を与えてくれます。気取ったところもないところも彼女のいいところです。「日本での呼び名を自分で決めました。ナツです。」「なんでナツなの?」「はい、夏が好きだからです。」「ふ~ん・・・。」すこし面白いセンスの持ち主です。そば屋には日本人にも難しい専門用語が多いので、最初は大変だろうけどその明るさで頑張ってほしいと思います。こちらとしてもここで働いて勉強になったとあとで思ってもらえるようにしょうと女将と話しています。 余談ですが、いま台湾で人気のある芸能人は「嵐」と「上野樹里」だそうです。日本や韓国のドラマはほぼ同時期に放送されているらしく、一昔前の「その人もう日本では人気ないんだけど」という人があちらで人気ということはもう無くなっていくのでしょう。中国にはまだいろいろ問題があるけれど、韓国、台湾、日本はどんどんボーダレスになっていくんだろうなあ、とあらためて思いました。
千歳烏山駅から南へ歩いて3分のところにある「立喰そば・うどんファミリー」を初めて訪問したのは平成20(2008)年のこと。自転車で駅前通りの一本裏道に迷い込んだ時に偶然発見した。
ミュージシャンの高遠彩子さんのエッセー集「蕎麦こい日記~名店を楽しむ蕎麦屋めぐり~」が出版されました。初めて来店された時からただならぬ蕎麦好きオーラのある方でしたが、こうして一冊の本になるとは・・・。しかもとても面白い。ご本人自体がとてもチャーミングな方なのだが、文体にそれが乗り移っている。数多あるグルメ本とは一線を画し、どっぷりと蕎麦に浸るための今までにないそば本です。「彼女は僕の師匠です!(蕎麦の・・・)」という春風亭昇太さんの帯の文章が目印です。
夏も終わり近づき、ふっと秋を感じる風が吹くと、少し胃が痛みます。 「今年の年越はみなさんの期待に応えられるだろうか…」 蕎麦屋の習慣です。 年越そばは江戸時代に定着しました。由来は諸説ありますが、移り変わりの激しい現代にあっても、50%以上の方が一年の最後に蕎麦を食べているそうです。 一年を振り返り、次の一年を迎える。皆さんの大事な瞬間に立会う蕎麦は「選ばれた食」であるという誇りがあります。だからこそ責任も重いと感じます。 年末が近づくと体調管理にもいつも以上にピリピリし始め子供達にも、手洗い、うがいなどもうるさく言ってきました。自営業の子供は(自分たち夫婦もそうなのですが)何となく親の空気を察する力がつくようで、最近では言われなくても年末に向けて風邪をひかないようです。ちなみに次女は大みそかに生まれました。 これも蕎麦からいただいたご縁です。 「日本人でよかった。」 そう思っていただける店でありたい… そのために毎日蕎麦を打ち、かつお節を削り、だしを取る。お客様が来店された時よりお帰りになるときに少しでも元気になっているような店になること。 その昔、自分が「この先どうすればいいんだろう…。」なんて悩んでいた時に何だかフワっとやさしい気持ちになれたあの「蕎麦屋気分」を皆さんにも味わっていただける店になること。 まだまだ力不足でお叱りを受けることも多いのですが、これからも日々蕎麦が教えてくれる「小さき自分」と向き合っていきたいと思っております。
昨年に引き続き、日ごろお世話になっているギャラリーのオープン4周年記念イベントとして「そばがき教室」を行いました。昼夜2回で計12名の方にご参加いただきました。昨年のワークショップが最初で最後のつもりでしたが、誘い上手なギャラリー店主に乗せられて、まさかのパート2となりました。とはいうものの始まってみれば、大変たのしいイベントとなりました。まず今回の方々は覚えが早く非常に優秀な生徒さんばかりでした。レッスンの途中からは皆さんの真剣な眼差しに、こちらも失敗のないよう緊張させられるほどでした。内容としては、まず1)定番のそばがきをつくり、2)それを椀種にしたり、3)デザートをつくりました。あとは焼いて4)田楽にし、さいごは揚げて5)ビールのつまみを作りました。そのほかにも洋風のメニューなどアイデアをたくさんだして「そばがきってなんでもありなんだ。」と思っていただけたのではないかと思います。とくにこのワークショップは「家庭でできる」がテーマなのでとにかく楽しんでいただきたいのです。最後にそばがき用の鍋をほとんどの皆さんが注文していただいたので、きっとご自宅でいろいろ作品をつくられるのだと思います。もし、ヒット作が生まれましたら教えてください。どうぞよろしく。
皆さんはもう新蕎麦を召し上がりましたか?ご存知の方も多いとは思いますが今年国内産の蕎麦の収穫量は前年比50%を割りました。夏の日照不足と収穫直前の台風が主な原因です。農家さんたちにとって去年の半分しか収穫がない以上、値上げしなければ即、死活問題になるのは当然として、我々はいかに工夫してこの不況の中、値上げせずにお客様に美味しいそばを召し上がっていただくのか頭を悩ます一年になりそうです。輸入物を使うコンビニの蕎麦や、立ち食い蕎麦屋さんは別ですが。ただ救いは今年の新そば、美味しいのです!厳しい状況下でも結実させた生命力を感じます。見習わせていただきます。
手打そば風來蕎では、和洋折衷の創作料理を提供しております。お料理を盛る器にもこだわり、旬素材で季節を感じられる一品をお客様にお出ししています。ご利用される際は、お気軽にお問い合わせくださいませ。
もともと食いしんぼうでしたので、フレンチレストランのアルバイトしたり、いろいろなジャンルの料理の食べ歩きをしていました。 そして丁度この頃、蕎麦屋に惹かれ始めました。 老若男女それぞれが自分なりに自由な蕎麦屋の楽しみ方をされている。 サラリーマンの方も、ご家族連れも、ご近所の老夫婦も…。 それが違和感なく1つの空間に共存している。 自分もそこに交じって、そばがきやだし巻き卵をアテに日本酒を一合飲んで蕎麦で〆る。何だかちょっと粋な大人の仲間入りをしたような気になりました。そしてのれんをくぐって、外にでると、ほっこりとした温かみを感じる。 「‘蕎麦屋のシアワセ‘ってあるなあ。」 豪華絢燗なものではない、だけど他にはない、着心地のいい服や座り心地のいい椅子を見つけた時のようなシアワセ…。 「蕎麦屋っていいなあ…。」
一旦店を離れ、タワーマンションができる予定の地区をみにいってみた。しばらく南下すると「鰻割烹あら井」があった。 その先にはコロッケやメンチがうまい「堀田牛肉店」。こうした店も再開発で移転などを余儀なくされているのだろう。なんとなく悲しい気分だ。 再開発地区をぐるっと一周すると、すでに道路予定地は更地になっていた。 デベロッパーの意気込みが感じ取れる。


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