
今晩は底堅い展開か。12月入りとなった昨日は先週まで主要3指数が5営業日続伸したことや、AI関連投資のリターンへの懸念、ビットコイン価格が大幅に下落したことなどセンチメントが悪化し、リスク回避の流れが優勢だった。ダウ平均が427.09ドル安(-0.90%)、ハイテク株主体のナスダック総合も0.38%安と、ともに6営業日ぶりに反落した。S&P500採用銘柄は363銘柄が下落し、上昇は140銘柄にとどまった。
今晩の取引ではAI株のバリュエーション面の懸念やビットコイン価格の下落を受けたリスクセンチメントの悪化が引き続き相場の重しとなることが予想されるものの、12月9-10日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ見通しや年末株高アノマリー期待などを背景に底堅い展開か。12月はダウ平均とS&P500が1950年以降で3番目に好調な月で、ナスダック総合も1971年以降で3番目の好調月となっている。FOMCではCMEのフェドウォッチ・ツールの利下げ確率が87%と利下げかほぼ確実視されているほか、ブラックフライデーの消費額が前年比9.1%増と、感謝祭ホリデーの消費堅調も伝えられており、利下げ期待や年末ラリーへの期待が相場の支えとなりそうだ。
今晩の米経済指標・イベントは9月建設支出、9月乗用車・トラック総販売台数、ボウマン米連邦準備理事会(FRB)副議長議会証言など。企業決算は引け後にクラウドストライクが発表予定。(執筆:12月2日、14:00)
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
引き続きの注目点はやはり米国の金利動向 金融政策の見通しです
TOPIX構成銘柄のうち、上方修正された銘柄は511社に対し、下方修正銘された銘柄は519社とほぼ拮抗でした。上方修正が1社のみだったエネルギー資源の項目を除くと、電力・ガス、運輸・物流などの内需株の業績見通しが強くなりました。トランプ関税の影響を受けにくく、関税政策に関する急激な動きがあった際も底堅い値動きで、相場全体の下支え役になると考えられます。7月末時点では、4-6月期決算の発表済み企業は全体の4分の1程度ですが、決算発表シーズンの出だしは時価総額の大きい会社が比較的多く、全体の方向を占う上でも有用です。
日米をはじめとする世界景気への過度な不安が和らぎ、金融市場は落ち着きを取り戻しています。足元の企業業績が堅調に推移していることも、そうした不安を退ける背景になっていると考えられます。では、先々の企業業績に対する市場(アナリスト)の見通しがどうなっているかというと、日米欧の中で、もっとも強気に傾いているのは日本です。為替の円高進行や将来的な追加の利上げ観測が存在するにもかかわらずです。その一方で、8月の急落後の日本株の戻りは道半ばの状態にあります。このような企業業績の見通し(期待)が揺るがない限り、業績堅調であるがゆえの自社株買いを伴いながら、日本株は一定の底堅さをもって推移すると想定されます。
●米国株式市場では、AIやデータセンター関連銘柄の選別基準が学習から推論へ、モデルやハードの性能の良し悪しよりもどれくらいユーザーから収益を上げられるかに関心が移っているようです。第4四半期も企業業績は増益見通しですが、政府機関閉鎖の悪影響などで、伸び率は鈍化見込みです。
●円の対ユーロレートでは、もみ合いの展開を予想します。FRBの利下げ観測が高まる中、ECBの利下げは一巡したとみられ、ユーロは米ドルに対し上昇すると見込まれます。円も米ドルに対し緩やかな円高を予想するため、円の対ユーロレートはもみ合いとなる見通しです。
*14:36JST 米国株式市場見通し:利下げ期待継続に加えて、AI関連株の過熱感も和らぐ 12月9-10日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)が引き続き市場の最大の関心事となる。ただ、来週は12月第1週となるものの雇用統計の発表はなく、個人消費支出(PCE)デフレーターも9月の数値となり、なおかつ、ブラックアウト期間入りとなるため、新たな材料は提供されない見通し。金融政策の判断が大きく変化することにはならず、ウィリアムズNY連銀総裁のハト派発言以降、急速に再燃している利下げ期待が継続するとみられる。利下げ織り込みペースの速さには警戒だが、緩やかな上昇基調が継続するものと考える。
●米国株式市場は、AI相場の先導役がエヌビディアとオープンAIからグーグルの親会社のアルファベットに代わりました。グーグルの最新AIモデルであるジェミニ3とチップセット(集積回路)のテンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)の評価が急上昇したことが要因です。アップルがグーグルのAIモデルを採用するとの観測記事も先導役交代の一因のようです。7-9月期の業績は金融、ハイテク企業を中心に事前予想を上回った企業が多く、見通しも引き上げ方向が優勢でした。NYダウは前月比+0.32%、S&P500種指数は同+0.13%上昇でしたが、ナスダック100は▲1.64%下落でした。
2024年の米国株式は、もみ合う展開で始まりました。昨年末にかけて、利下げ観測の高まりを背景に米国経済の軟着陸(景気後退を回避しつつ、インフレが沈静化)シナリオが大勢となりました。ただし、市場が年間で1.25~1.5%程度の利下げを織り込む一方、FRBの見通しは0.75%と乖離が大きいこと、足元の景気は底堅いものの、利上げの累積効果やコロナ禍での過剰貯蓄の払底など先行きの消費への懸念もあることなど、「軟着陸」が実現するか不透明感が残ります。景気指標の悪化、物価指標の反発、FRB高官の発言などから、同シナリオが揺らぐ場面もありそうです。
日経平均株価の構成銘柄の約7割が下落し、TOPIXは前日比マイナスとなる一日でした。ただ、外部環境は良好で、堅調な米国株と為替の円高一服が目先の日本株をサポートすると見られます。引き続きの注目点はやはり米国の金利動向、金融政策の見通しです。米国のファンダメンタルズが利下げペースを加速させるほど弱くなく、減速させるほど強くない、程良い状態にあるのか―来週は米小売統計が一つの判断材料となります。日米ともに選挙が近づくにつれて、相場展開は神経質なものになっていく可能性がありますが、一方で米国経済・市場の安定を背景に、短期的には日経平均株価が7月以来の4万円台にトライする場面も見られるかもしれません。
この後の海外市場は日米金融政策にらみ。今晩発表されるISM製造業景況指数が改善しなければ、利下げ観測を背景にドル売り先行の見通し。ただ、週内にはFRB議長の発言やインフレ指標など重要指標を控え、積極的なポジション構築は控えられそうだ。日銀による追加利上げ観測が断続的に意識される一方、日本の景気先行き不透明感が円買いを抑制。ドルは短期的に155円を目指すものの、過度な円買いは抑制され下値の堅さが目立つだろう。
8月13日の大幅高の要因は、市場予想を下回った7月の生産者物価指数(PPI)と解釈されます。改めて、インフレ鈍化を示唆する内容が明らかになり、9月の利下げ見通しを補強する形となりました。そして、米国現地14日には消費者物価指数(CPI)、15日には小売売上高の発表を控えます。PPIの市場予想下振れを好感する流れからすると、CPIでも同様の傾向が示されることが期待されますが、悩ましいのはCPIと小売売上高がある程度、連動する傾向がある点です。CPIが弱めなら、小売売上高も弱めとなり、今度は米景気減速が嫌気される可能性もあります。米経済指標に対して、市場がその都度どのように反応するか、要注目です。
●日本株式市場では、高市政権により、①ガソリン減税、②電力・ガス料金補助の増額、③おこめ券など重点支援地方交付金の拡充、など物価上昇を抑制しつつ、消費を活性化する政策が導入されました。原油安などエネルギーコストの低下、円安の進行により輸出採算の改善も見込まれ、26年度の企業業績は改善に向かう見通しです。自社株買いなどさらなる株主還元強化への期待も、株価の上昇要因です。
米国の景気減速懸念、日銀による利上げ、急激な円高進行、これら複合的な要因で過去最大級の下落を経験した株式市場では、依然として先行きに不透明感があります。過去の経験則から、一度大きく崩れた相場が立ち直るには、相応の時間がかかるとの見方が一般的です。その場合、当初想定した年内の強気の相場見通しを、より慎重に練り直すのも止むを得ないでしょう。ただ、だからといって、年末もしくは年度末に向けての相場の方向性を再考しなければならないような状況には至っていないように思います。7月に付けた過去最高値を、さらに更新するタイミングがやや先送りされたイメージです。長期投資の世界では、常に冷静さが求められます。
●米ファクトセット(FactSet)によれば、日米の企業業績の見通しは堅調です。11月末の米S&P500種指数の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+12.3%、TOPIXの予想EPSは同+9.5%となりました。


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