10個200円台で赤字 店嘆く卵不足
イオンは6月4日、水産大手のマルハニチロや鹿児島県の養魚会社と組んで完全養殖したクロマグロを総合スーパー「イオン」の東京都内の一部店舗で発売した。今後、グループの「ダイエー」や、「マックスバリュ」などを含めた各地の計約2000店に扱いを広げる予定だ。販売は、グループで3500尾分。イオングループのプライベートブランド商品として販売し、商品名は「奄美うまれ生本まぐろ」。価格は例えば刺し身用の中トロが100g当たり1382~1922円。クロマグロは奄美養魚(鹿児島県瀬戸内町)の養殖場で卵から3年以上かけて育てた。
東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国と日本でつくる東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)は8月、「東南アジアにおける熱帯性アンギラ種ウナギの持続的利用と管理体制の強化プロジェクト」を実施する。日本に多く輸出されているビカーラ・ビカーラなどが対象になる。同種は2019年開催予定のワシントン条約(CITES)第18回締結国会議で管理対象種とされる懸念がある。同センターは漁業や養殖の生産実態を明らかにし、管理体制を整備。同種が管理対象種となるのを回避したい考えだ。養殖技術の開発・普及を通じた同種の生存率向上も目指す。事業費は2年間で84万2853米㌦。ASEAN共同体設立や域内格差是正などを目的とする「日ASEAN統合基金」から資金が支出される。プロジェクトの対象となるのは、日本に多く輸出されているビカーラ・ビカーラやビカーラ・パシフィコ、アンギラ・セルベンシスなど熱帯性アンギラ8種。プロジェクトではシラスや成魚の漁獲量を統計データとして収集。養殖生産量も調べる。ASEAN加盟国の関係者を対象としたワークショップや地域会議を開催し、同種の資源管理体制の強化を図る。養殖技術の開発も養殖技術の開発はフィリピンの研究所で行う。「シラスからクロコになるまでに、小規模養殖業者では相当数死んでしまう」(同センター)。向上した養殖技術を普及し、シラスからの生存率を高めたい考え。
日本水産(細見典男社長)は鳥取県境港沖で養殖するギンザケ「境港サーモン」の生食販売を強化する。来年3月末に完成する新工場に生フィレー専用生産ラインを導入。生フィレー製品は1枚ずつ真空包装し、生食可能な状態で全国に届ける。来年の水揚げは1000㌧(ラウンドベース)を予定。うち、6割を生鮮で提供する予定だ。これまでの出荷は下氷状態が中心。今期は一部の関西圏で真空パック出荷のテスト販売を行った。来期からは全ての生フィレーを真空包装し、生食グレードで提供。腹骨やピンボーンは残るものの、素早い加工処理で鮮度の良い刺身を全国に届ける。境港サーモンは日本海の荒波にもまれて育つため、引き締まった歯ごたえの良い身質が特徴。全て活締めで出荷し、死後硬直を遅らせることで弾力があるしっかりした身質のまま消費者まで届く。中国、四国、関西圏には水揚げ翌日に到着。「国産品で高鮮度。身色の良さも好評」と同社。「これまでの養殖ギンザケと比較して身質・身色が優れているとの評価を頂いた」と振り返る。境港サーモン事業は2年のテスト期間を経て今年から事業化。今期生産は水温の低下を受け予定より2割少ない670㌧(同)となった。中国、四国、関西地区に主に寿司や刺身向けとして提供し、販売は好調に推移。「事業化1年目としては成功した」と振り返る。境港サーモンは大山のふもとにある淡水養殖場で稚魚を育成。その後11月末~12月にかけて海面イケスへ移行する。4~5ヵ月間の養殖期間を経て、翌4月頭から水揚げを開始。出荷サイズは1尾1~3㌔となる。今後は2017年までに2000㌧を目指し生産を拡大する見通し。回転寿司を中心にサーモンの生食消費が増える中、「これからは生食対応の供給を拡大していく」と同社。「おいしさと価値を提供していきたい」と話している。
2013年の漁業・養殖生産量は前年比1.5%(7万3000トン)減の479万1000トンだった。海面漁業、海面養殖業、内水面漁業・養殖業のいずれも前年を下回った。農水省が24日公表した。海面漁業の漁獲量は前年比0.8%(3万900トン)減の372万7000トン。マイワシやホタテガイが増えたが、サバ類、サンマなどの減少が響いた。海面養殖業の収穫量は3.6%(3万7300トン)減の100万2200トン。ホタテガイやノリなどの収穫が減った。内水面漁業・養殖業の生産量は8%(5346トン)減の6万1556トン。うち漁業生産は5.1%(1681トン)減の3万1264トン。シジミなどが増えた半面、サケマス類が低迷した。養殖収獲量はウナギの減少が響き、10.8%(3665トン)減の3万292トンにとどまった。被災地養殖業回復に遅れ東日本大震災の被災地の海面生産は、漁業に比べ養殖業の回復が遅れている。海面漁業の漁獲量は岩手が7.4%(7600トン)増の11万900トン、宮城が12.8%(1万9500トン)増の17万2300トンと増えた。福島は6.8%(2900トン)増の4万5300トン。同県沖以外の海域で操業する巻網船などの漁獲が増えた。震災前(10年)と比べた場合、生産の回復率は岩手が81.3%、宮城が76.7%、福島は57.4%にとどまった。被災地の海面養殖業の収獲量は、岩手が38.3%(9000トン)増の3万2500トン、宮城が45.7%(1万9700トン)増の6万2800トン増えた。震災前水準と比べると生産回復率は岩手が63.2%、宮城が50.9%で漁業に比べ遅れている。
加工ウナギ(無頭背開)卸値は現在、中国産が10㌔版70~80尾キロ4000円前後、60尾が3800円前後、50尾が3600円前後、40尾が3500~3300円前後。国産が80尾8700円以上、60~70尾が8500円以上、50尾が8400円となっており、中国産、国産ともほぼ前月並みの水準で推移している。ただ、国産はフリー玉のない「ないもの相場」が続く。大手量販店・スーパーなど「早めの対応」(卸筋)で数量確保に動いた末端は別として、前年のシラス漁復調による先安観などで手当てが遅れ、確保に苦戦する中小もある。「6、7、8月に集中する商戦」に明暗が分かれそうだ。24日の土用の丑(うし)の日に向けて、国産新仔にも期待したいところだが、前年に比べ5日早いことと天候不順による餌食いの悪さなどの影響で「今年は成長が遅れている」とし、「(加工ウナギ)60尾で9000円台」との見方。加えて、今期の池入れが低調だったこともあり「慌てて池揚げはしないだろう」。
加工ウナギ(無頭背開)卸値は現在、中国産が10㌔版70~80尾がキロ3500円前後、50尾が3500~3300円、40尾も3300円前後。国産が70~80尾がキロ8200円前後、60尾が7700円前後、50尾が7400円で、前月比で中国産の下値が若干上昇した他、国産は軒並みキロ200円程度上昇した。ただ、国産は「フリー玉がなく、ないもの相場」(卸筋)の様相を呈している。追加生産分を確保するため、「値上げ傾向が続いている」と説明する。気温も高くなり、販促につなげていきたいところだが、「まずは既存の販売先に対して供給を埋めていく」動きが、先高観を生んでいるようだ。国産と比較し、中国産の販売は依然として低空飛行が続く。円安の他、「シラス漁が低調に終わった」ことなどから相場の高値基調は変わらず、それがさらに販売不振を招いている。売り場を見ると国産中心。嗜好品として、「高値であれば国産を選ぶ」傾向は変わっていないようだ。先行きの不透明感が増している。
静岡県は12月16日までに、産卵期を控えたニホンウナギの成魚を保護するため、漁業権を持つ県内の漁業協同組合に対し、親ウナギが川を下る10月から翌年2月までを禁漁期間とするよう要請した。2015年度からの実施を目指す。県によると、県内15の内水面漁業協同組合のうち、既に同時期の禁漁を実施している1組合を除く14組合に対し要請した。現時点で、半数近くの組合が要請に応じる方針を示しているという。
人工種苗の安定生産へ第一歩・・・水産総合研究センターが、水温や日長など環境条件を制御できる陸上水槽でクロマグロの採卵に世界で初めて成功した。今後、環境条件を変えて産卵数を更に増やしながら、DNA解析も行い、安定した採卵技術の開発につなげる。同センターが23日発表した。研究は長崎県の同センター西海区水産研究所長崎庁舎のまぐろ飼育研究施設で行われている。今回産卵したのは人口種苗から育てた3歳魚(28㌔)。大型陸上円形水槽2基(各63尾)で環境条件を制御しながら育てていた。16日午後5時50分ごろに産卵を確認。17日朝までに1万5400粒を採卵したところ、受精卵はうち9600粒だった。18日午前中には7840尾がふ化した。産卵時の水温は20.2度。日長時間は自然と同じ条件に設定した。現在、クロマグロの人口種苗は海面イケスで育てた親魚から採卵しているが、環境条件が変化しやすく、親魚の成熟や産卵が不安定だった。人工的な飼育環境下で安定した採卵ができれば、資源が悪化する天然ヨコワの利用を抑えられる。「将来は植物工場のように日長を変えて産卵時期を調整できるようにもなる」。23日、水産庁で会見した西海区水産研究所の虫明敬一まぐろ増養殖研究センター長は今後の研究の可能性を強調。研究で得られる生物学的データはクロマグロ資源評価の精度向上にも役立てられる。研究は農林水産技術会議委託プロジェクト研究「天然資源に依存しない持続的な養殖生産技術の開発」(2012~16年)の一環。年間10万尾の養殖原魚を安定生産する技術の開発に取り組んでいる。
7月29日の土用の丑(うし)に向けてウナギ商戦はヤマ場を迎える。昨鰻年度まで4年続いたジャポニカ種シラスの不漁で、今シーズンの供給は国産および輸入物とも少ない。ただ、今シーズンのシラスが5年ぶりにまとまったひとで秋以降、来鰻年度の供給増が確定。先安観が先行し、8月までの供給が少ないにもかかわらずかば焼き、活鰻とも流通価格が下がった。価格は底を打ち、数量の不足感から再び値を上げているが、昨年に比べると価格は安く、来季に向け末端の消費も弾みがつくとみられる。昨年までの4年続きのシラス不漁の影響で今鰻年度の製品輸入は9000㌧前後の見通し。かば焼きなど製品輸入は2007年の米国・FDA騒動、08年年初の中国冷凍食品事件で需要が急減。09年に不良在庫を一掃し、10年に輸入量が3年ぶりに増加した。しかし10年から続くジャポニカ種シラス不漁で11年以降再び輸入量は減少。最盛期7万㌧あった輸入量は昨鰻年度、1万㌧を切って7640㌧にとどまる一方、ジャポニカ種が減少した。今鰻年度も製品輸入は低調。特にジャポニカ種の輸入量は昨年にも増して減少している。昨年9月から今年5月現在の累計輸入量は6659㌧。前鰻年度同期を21%上回るが、全輸入量の中でジャポニカ種の占める割合は10%余りの状態。大半が仏種(アンギラアンギラ)ロストラータ種などが占めている。6~9月も数量は限られており、最終的には9000㌧前後にとどまるとみられている。国内の輸入かば焼き価格は1月まで高値で推移してきたが、シラス好漁から先安観が出て、3月以降下げに入った。無頭背開き70尾でキロ4300円だった相場は3月に3700円、4月も下げ、5月3100円と3ヵ月で3割近くダウン。ただ、3月以降、一気に下げたもののその後、不足感が出て持ち直している。当面、堅調推移が予想されている。
【釜石】 岩手県水産技術センターはこのほど、今年度の同県秋サケ回帰予報を発表した。来遊尾数(範囲)は、230万~607万尾(前年度実績529万尾)、7006~1万9925㌧(同1万5837㌧)と予測。同センターは「今年度は震災年級の2010年級が主群(4歳魚)で回帰する年。震災時、津波で甚大な被害を受けたふ化場が多かったことを考慮すると、回帰数量は予測の下限値に近づく可能性が大きくなり、昨年実績を下回る見込み」とみる。岩手の秋サケ漁は震災後、来遊資源量が少なく低漁況が続いていたが、昨年3年ぶりに1万㌧を超え、明るい話題をもたらした。しかし、今年は震災のあった11年に放流予定だった稚魚が回帰する年で、例年以上に回帰尾数が少ないことが予想されるという。また、4歳魚が前年よりも大幅に減少するため、5歳魚が4歳魚を上回る見通しだ。来遊の最盛期は例年並みの11月下旬になるとみられるが、「漁期中盤から後半を中心に回帰する4歳魚が津波で大きな影響を受けており、回帰のピークが早くなる可能性や、回帰量がピーク後に急激に減少する可能性がある」(同センター)。震災の影響を大きく受ける今年、来年は産地関係者にとって厳しい漁況となりそうだ。
【松浦】長崎県松浦市は7日、伊万里湾で7月下旬から発生している赤潮で新松浦漁協(志水正司組合長)管内の養殖トラフグや養殖クロマグロなどの養殖魚約27万1800尾がへい死、被害額が数億円に上ると発表した。同市は緊急対策本部を設置し、県と国に養殖魚の再生産へ支援を求める方針。同湾の赤潮は7月27日に確認され、8月7日現在は鷹島海域や星鹿海域に発生海域が移っている。6日午後5時現在の養殖魚被害はフグ約25万5000尾、マグロ約2800尾などで被害額は数億円に上るとみられる。中でも被害が大きい養フグは同市鷹島地域で当歳魚が14万尾、2歳魚1万3000尾がへい死、同市新星鹿地域では当歳10万尾、2歳2000尾がへい死した。新星鹿地域では養マグロ当歳が2000尾、2~5歳800尾がへい死した他、ハマチ2歳1万尾、ヒラス2歳4000尾が死ぬなど被害が大きい。同漁協は8日、緊急の対策理事会を開く他、市は漁協と協力し被害状況を把握、赤潮防除剤の調達と散布などに取り組む。「甚大な被害がでるのは明白。生産者の収入減を補填(ほてん)するよう緊急支援を国や県に強く要望する」と同漁協。
水産政策審議会は27日の第48回企画部会で、2013年度水産白書の第Ⅰ章「特集 養殖業の持続的発展」の1次案を決めた。第4節「養殖業の持続的発展のために」は、業界全体での計画生産の必要性を記述。2月に水産庁が開いた養殖魚需給検討会の内容に触れ、14年漁期のブリ、カンパチを14万トン、マダイを7万2000トンとした生産数量ガイドラインを示した。第3節「養殖水産物と食卓」は、養殖魚の輸出促進に必要な取り組みを掲載。輸出先国の衛星管理基準を満たす、慎重なマーケティングを行うことの重要性などを示した。具体的な取り組み例として、全国養殖魚輸出振興協議会が昨年11月にモスクワで開いた養殖魚セミナー、熊本県のブリミーが10年から手掛ける完全養殖クロマグロの米国輸出などを挙げた。養サケとの比較も第2節「養殖生産をめぐる課題」は、ブリ、マダイとノルウェーサーモンのコスト構造を比較。餌代や増肉係数などサーモン養殖業の優位性を解説した。第Ⅰ節「これまでの養殖業の展開」は日本の養殖生産量推移を記述。12年の生産量は前年比15%増の107万トンだったことを示した。
当センターは学問的な評価で世界一を10年間維持しているが、われわれの目的はそれを産業に生かすこと。例えば、昨年成功した養殖ブリの人口種苗の早期生産。早期採卵の技術は数年前からできていたが、現場では全く使われていなかった。種苗生産施設の種苗は体長3~4センチだが、実際に養殖業者が求める種苗は体長12~13センチ。われわれの種苗と養殖業者が求める種苗のサイズが全く違っていた。そこで中間育種を行う業者にお願いしながら普及ささせた。このような努力をしなければ、現場に技術を落とし込めない。他にもそのような例がたくさんある。分野別では世界的に資源が減少しているクロマグロ、ニホンウナギの研究に力を入れる。クロマグロは国内唯一のマグロ親魚の陸上飼育施設である西海区水産研究所の「まぐろ飼育研究施設」で昨年7月から順調に飼育を進めている。環境条件を制御し、養成親魚からの計画的な採卵技術の開発を行い、4年後に10万尾の種苗を生産することを目標にしている。ウナギは回遊生態の解明など天然資源に関する生物学的研究にも取り組まなければいけない。ただ、まだ少数の卵や仔魚が採集されただけで、シラスウナギの来遊につながる具体的な知見は薄い。引き続き、卵稚仔魚調査航海や関係国との研究交流を進め、適切な資源管理の策定に役立つよう努める。
マルエツは25~29日に販売するウナギ製品1点につき10円を「鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会」へ寄付する。今年6月に国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギを絶滅危惧種(ⅠB類・近い将来野生での絶滅の危機が高い種)に指定。日本の伝統的な食文化であるウナギを継承するために実施する。リーフレットの配布による啓発活動も行う。同協議会は漁業者、生産者、学識経験者らで構成。ウナギの採捕期間制限、生育の調査や研究を行っている。寄付日は29日の予定だ。
卵の価格は右肩上がりでスーパーでは売り切れが目立つほか、飲食店のメニューや地方の名産品にも影響が出ている。卵の供給が正常化するのには、半年以上かかるとの見方も出ている。 東京都江東区のスーパー「たつみチェーン豊洲店」。以前は毎日100パックほど仕入れていた10個入りの卵が、今は20パックしか入ってこない。L玉10個入りの価格は税込み298円と昨年の約1・5倍だが、昼すぎには売り切れるという。毎週火曜日の特売は今年に入って休止している。再開を望む声は根強いが難しい状況だという。
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