氷河期支援 やるせなさ抱く46歳
つまり、かつては、10人の現役世代が4人の子ども・高齢者を支えていたが、それがいまは、10人の現役世代で7人の子ども・高齢者を支えなければならない状況に変わったということだ。そして、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」などを基に先行きを見通すと、就職氷河期世代の年長者である団塊ジュニア世代の、65歳の老年人口入りが迫る2030年代半ば頃から、従属人口指数は上昇ペースが加速し、2050年代にかけてピークを迎えると見込まれている。その間、就職氷河期世代が自身の高齢化により生じる問題などもあって、社会保障費歳出の膨張圧力や、財政の悪化圧力は高まる恐れがある。
団塊ジュニア以降の世代の人口が細る状況下、一方高齢の就職氷河期世代を支えることに関して、よりマクロの視点からみてみよう。就職氷河期世代を支える足許の現役世代の人口は少なく、将来世代も人口ボリュームがますます細っていく。この点から考えても問題はより深刻である。
この就職氷河期世代を対象とした支援プログラムが、3年間の限定付きではあるが厚生労働省の集中支援プログラムとしてスタートしている。支援対象は多岐にわたり、少なくとも150万人程度が対象者。3年間の取り組みによって、同世代の正規雇用者を30万人増やすことを目指している。
27日投開票の衆院選では、各党とも現在40代半ばから50代半ばとなった「就職氷河期世代」を含む現役世代への支援を公約でうたう。働き盛りの年代にもかかわらず多くの困難を抱え、正規の職に就けなかったり、家庭を持ち得なかったりした世代だ。「自分以上に若者が苦しむ社会であってほしくない」。北信地方に住む当事者の介護職男性(46)は、やるせなさを抱きつつ、せめてもの希望を見いだせないかと論戦を見つめる。
できる範囲で家族を助けていくことは、一つの手ではあるだろう。しかし、より重要なのは、就職氷河期世代への支援を通じて彼ら/彼女らの経済的・社会的自立を進めることで、同世代本人が身を置く厳しい状況ときょうだいなどへの困難の連鎖のいずれも解消していくことである。
14.エビと日本人? 村井吉敬 岩波新書 バブル華やかなりし頃、日本人がエビを買い漁り、エビ養殖池のために東南アジアのマングローブ林が伐採され、現地の人々の低賃金の過酷な労働で日本のグルメが支えられていることを告発した前著から20年が過ぎ、その後のエビ事情をレポートした本。エビ飽食とマングローブ木炭のためにマングローブの伐採が進み、海岸線を守るマングローブがなくなったところへスマトラ島沖地震津波が襲い被害を大幅に拡大したことを語る書き出しは、迫力を感じますし考えさせられます。ただその後はどうも歯切れが悪い。この20年間に日本人のエビ消費量は減少し、エビ輸入No.1はアメリカになっているし、マングローブ林の伐採も、南アメリカの方がさらに酷くなっているとか。著者も、日本がエビ輸入No.1から転落したことを寂しく思っているようですし。エビ養殖についても悪いと言っているわけでもなくてきちんと考えてやる業者はむしろ持ち上げていますし、安全性についても、危険とも安全とも断言できないって言ってますし。むしろ著者の立場は、スッキリとした論旨で割り切るのではなくて、日本人が食べているエビの背景には東南アジアの人々の低賃金労働やマングローブ林伐採など多くの問題があることを自分で考えてみなさいね、それは簡単には結論が出ませんよということと見えます。
就職氷河期世代とはいったい何だったのか。いまなお、同世代1689万人(2018年)のうち約371万人が現在も正規就労できずに、フリーターやパートの人がいると言われる。推定で61万人いると言われる40~64歳の「中高年ひきこもり」も、この世代の割合が突出しているとされる。
もっとも、わずか3年の支援プログラムで就職氷河期世代が背負った「負のスパイラル」が断ち切れるとは到底思えない。もっと継続的で長期のスパンに立った構造的改革を実施すべきだ……、という意見も数多い。
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