先週末、衆議院選挙が行われました。結果は与党の過半数割れとなり、今後政局が流動化することが予想されます。しかし、これで、日銀は益々動きづらくなったとマーケットは受け取ったようで、株価も堅調で円安傾向になっています。ただ、こうした影響は短期的に終わることが多いということと、直近のIMMのポジションを見ると、ほぼ、円買いポジションが解消してきていますので、ここからはあまり伸びないとみています。
また、ユーロドルのポジションはロングからショートに転換していますので、そろそろ相場も反転するのではないかと思っています。
今週は、週末の米雇用統計に注目です。前回、失業率、非農業部門就業者数、平均時給すべて予想を上回り、その後のドル高の流れを作りましたので、今回の結果は更に注目度が高くなっています。
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株式会社マットキャピタルマネージメント 代表取締役
今井雅人 氏
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。
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9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸
本日のドル円も引き続き買い場探しとなるだろうが、米国時間に9月消費者物価指数(CPI)が発表されることで、大きなリスクを取りにくい地合いになりそうだ。
先週金曜日に公表されたシカゴIMMの投機筋による円ポジションを見ると、ネットの円ショートは7万3000枚と、過去最大に膨らんでいた7月2日の規模(18万枚)から、急速に縮小したことが分かります。7万枚台というと今年1月下旬の水準で、年初来日米の短期金利差を狙った円キャリー取引により積みあがった円ショートが、これでいったんほぼリセットされました。先週の日米中銀の会合により、日本は利上げ、米国は利下げと、金融政策の方向性自体は明確になったものの、今後の政策変更のペースはあくまで「データー次第」ですから、不透明感が残るうちはボラティリティーは高水準で推移し、ドル円は当面上値重く推移しそうです。
ドル円は200日移動平均線(151円38銭)を上抜けたことにより、これまでの円買い・ドル売りポジションの調整局面が一巡するまでは、ドル高・円安トレンドが続く公算です。ただこれを16年の「トランプラリー」再来とみるのは、やや気が早いように思います。トランプ氏は総ての輸入品に10-20%の関税、対中関税は60%に引き上げるとしています。もしそれが実現すれば、物価上昇という形で国民の負担となり、景気悪化とインフレが同時進行するスタグフレーション懸念からリスクオフとなる可能性もあります。景気にとってポジティブなことばかりでなく、負の側面に注目が集まる可能性もありますから注意したいところです。
ユーロ円は続伸。終値は163.31円と前営業日NY終値(162.72円)と比べて59銭程度のユーロ高水準。ドル円の上昇につれた買いが入ったほか、米国株高を背景にリスク・オンの円売り・ユーロ買いが出た。1時前には163.46円と日通し高値を更新した。
6月の米CPI後のドル円の下落が急激だったため、22年の「逆CPIショック」を思い出しました。今回市場ではCPI発表前に、既に年内2回の利下げは織り込まれていたものの、やはり6月のFOMCで示されたドットチャートが、年内利下げ2回→1回に修正の後だっただけに、CPI直後に米長期金利が急低下するなど、それなりに市場の反応は大きかったのだと思います。日本では出口の議論が活発化するなかで、長期金利が上昇傾向にあるものの、期待インフレ率を除いた10年の実質金利は依然として大幅にマイナスのままで、緩和的な政策が続いているため、結局は米インフレと金融政策の動向がドル円には大きなインパクトを及ぼします。
9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は続伸。終値は149.31円と前営業日NY終値(148.20円)と比べて1円11銭程度のドル高水準だった。米利下げペースが緩やかになるとの見方が広がる中、米長期金利の指標となる10年債利回りが一時4.0765%前後と7月31日以来の高水準を記録すると円売り・ドル買いが先行。中国の財政政策に対する期待感や米国株高を背景に投資家のリスク志向が改善すると円売り・ドル買いが活発化し、7日の高値149.13円を上抜けて149.36円と8月15日以来の高値を更新した。
石破氏は近著で、日銀による異次元緩和の長期化に触れ、これにより「国家財政と日銀財務が悪化した」としていました。これに対し高市氏は「金利を今、上げるのはあほやと思う」と述べており、両者の政策のコントラストは明確だったため、ドル円相場が直後に3円ほどの「往って来い」と乱高下したのも頷けます。ただ、石破新総裁は、経済政策については「岸田路線を継承し、新しい資本主義を加速する」としており、これまでと大きく変化する可能性は低いです。加えて、日銀の独立性を尊重するとの立場も取っていますから、金融政策についてはあくまで日銀次第となり、円相場や市場の混乱も一過性で徐々に落ち着いていくのではないでしょうか。
ドル買い・円売りの流れが続いているが、この流れを止める可能性があるのは、変節を繰り返す石破首相の言動か。現在のドル円上昇の要因は、米国の経済指標の好結果によるところが一つだが、石破首相が先週「現在は追加利上げをするような環境にはない」と発言したことも発端ではある。
昨日の日銀金融政策決定会合で、実質金利は極めて低い水準であり、経済・物価が見通し通りに進めば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」との考えが示されたことが、タカ派方向のサプライズになったと思います。FOMCもドル安を後押ししたため、ドル円の1カ月物ボラティリティーも11%台に乗せており、円キャリー取引の巻き戻しによる円高はもう少し続きそうです。ドル円は200日移動平均線151.60も割り込んでいますから、テクニカル上は3月安値の146円49銭や大台の145円ちょうどが短期的な下値メドとして浮上しています。
円の急騰により、日本株が急落。タイミング悪く同時に米景気後退懸念が浮上するなど、市場心理が悪化するなかで、VIX指数は昨晩66付近まで急上昇しました。確かに、米景気については今後慎重に見ていく必要はあるものの、ドル円の今回の急落は単なるポジション調整に過ぎないと思っています。日米の短期金利差に着目した円キャリー取引により、過去最大まで膨らんだ円ショートポジションがほぼアンワインドされた今、円高・株安がこのままの勢いで続く可能性は低いのではないでしょうか。ただ、日米金融政策の不透明感から当面ドル円のボラティリティーは下がりにくいことを踏まえれば、ドル円が反発しても上値は限られると思います。
パウエル議長がジャクソンホール・シンポジウムで、利下げの方向性を明確に示した上、同日植田日銀総裁も、出口への意欲を明らかにしたことで、日米金融政策の方向性の違いが浮き彫りになりました。ただ、注意すべきは、それぞれの政策変更のペースはあくまで今後のデータ次第であるということです。足下市場ではFRBの年内1%超の利下げが織り込まれていますが、個人的にはやや織り込み過ぎで、今後そこまで速いペースの利下げにならないとの見方に変わったときに、ドル円が反発する局面もあると思っています。いずれにせよ不透明感は残り、ドル円のボラティリティーは比較的高止まりしそうです。
もちろん、日銀に関する報道が最後のダメ押しになりましたが、もともとドル安・円高の流れは、7月11日に発表された6月の米CPIから始まっていたと思います。22年の「逆CPIショック」と同様に、米インフレの鈍化→9月利下げ観測の高まりでドル安となりました。「ほぼトラ」との見方がひっくり返ったのも、トランプラリー期待のドル高・株高の流れを変化させましたし、ボラティリティーの上昇にもつながったと思います。ドル円のボラティリティーは1カ月物で10%を超えてきました。円キャリー取引の巻き戻しによる円高はしばらく続くかもしれません。
「ほぼトラ」との見方が広がっていたなかで、バイデン氏の撤退表明以降、この数日でハリス氏はトランプ氏を猛追しており、いったんこの見方はリセットせざるを得なくなったと思います。もっともハリス氏の場合は現状の政策が踏襲されると思われるため、ドル円相場に大きな影響はなさそうですが、トランプ氏の場合は、トランプ減税の恒久化など、インフレが加速しやすい政策により米金利やドル高が進みやすい一方で、ドル安志向やFRBに金融緩和を求める姿勢を示すなど、政策にバラツキがあり、ボラティリティーは上昇しやすいと思います。円キャリー取引の巻き戻しで円高が進みやすいのは、どちらかと言えばトランプ氏のほうかもしれません。
ドル円のボラティリティーは1カ月物で13%台と依然高止まりしており、円キャリー取引には不向きな市場環境です。加えて、米雇用統計は1回の結果だけでは判断し辛く、果たして今後連続して改善するのかどうか、暫く推移を確認する必要があると思います。これらを踏まえれば、今週ドル円が先週末のようなペースで上昇し続ける可能性は低く、個人的には200日移動平均線(151.09)の上抜けにはまだ遠いとみています。なお、石破首相は、これまでの発言でも日銀の独立性を重視しているはずで、個々の発言に対する市場の反応はやや過剰ではないでしょうか。総選挙を越えれば徐々に、政策の方向性も明確になってくると思われます。
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