シカゴIMM通貨先物ポジションの推移から為替市場の全体的な状況と投資マインドを読み解きます。
執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部 中村勉
目次
ドル/円
IMMポジション ドル/円
ポイント
【円ネットショートに転じる】
10月29日時点で円のポジションは、ドルに対して約2.5万枚の売り越し越し(ネットショート)。
ロングが取り崩され、ショートが大幅に積み増されたことから、8月上旬以来となるネットショートに転じた。
期間中のドル/円相場は、151円付近から一時7月末以来となる153円台へ上伸した。
衆院選では与党(自民・公明)が過半数議席を獲得できず、政局の先行き不透明感から日銀が金融政策の正常化に向けて動きづらくなったとの見方が出た。また、米大統領選では共和党のトランプ候補が優勢との見方から米長期金利が上昇し米ドルが買われた。そうした中で、投機筋の相場観は円強気から円弱気に転換したようだ。
ユーロ/ドル
IMMポジション ユーロ/ドル
ポイント
【ユーロネットショート増加】
10月29日時点でユーロのポジションは、ドルに対して約5.0万枚の売り越し(ネットショート)。
ロングは積み増されたものの、ショートが大幅に積み増されたことで、ネットショートは約2.2万枚増加。
期間中のユーロ/ドル相場は、ドイツやユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI)が改善をしめしたことなどで上昇する場面も見られたが、米大統領選に絡む米ドル買いもあり、1.07ドル台後半~1.08ドル台前半で上値の重い展開となった。
欧州中銀(ECB)の連続利下げの甲斐もあり、ユーロ圏の経済指標に回復を示す結果みられるようになってきた。ただ、短期金利市場ではECBの追加利下げが今後も続くとの見方が強いことから、投機筋はユーロ売りの比率を大きくしたようだ。
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IMMポジション
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外為どっとコム総合研究所 調査部 研究員
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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大口投資家の動向は ドル円153円台後半まで上伸 円ネットショートに転じる
冒頭でも指摘しましたが、今年の円相場は7月上旬にかけて大幅に円安・ドル高が進みましたが、その動きを主導していたのが投機筋による円売りと言われています。実際、円相場のポジションは年初から円売りが増加し、ネット・ポジションは4/23時点で約17年ぶりの高水準に達しました。
図表2は円相場(ドル円相場)のネット・ポジション(円買いポジション-円売りポジション)の推移を見たグラフです。円売りポジションが相対的に増加(グラフの緑棒が上昇)しているときは、円相場で円安・ドル高が進んでいます。
このとき、投機筋は米国と日本の金利差が拡大する、との見通しのから、高金利通貨のドルを買い、低金利通貨の円を売る動きが活発化。あるいは、米国と日本の金利差が今後、拡大してくのでは?との思惑から、先回り的な円売り・ドル買いの動きが強まったと見られます。
財・サービス収支は、2021年以降、赤字基調が続いています(図表1)。2020年に発生した新型コロナで世界経済が封鎖された影響で日本の輸出が落ち込んだことや、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の影響で原油や天然ガスなどエネルギー価格が高騰し、輸入金額が増大したことが主な要因です。財・サービス収支赤字の拡大基調が2023年初め頃まで続くなか、その後を追って円相場は円安・ドル高傾向となりました。実需筋が貿易などを通じ、恒常的に円売りを進めたことが一因だったと思われます。
現状(7/29)の円相場は1ドル=153円台と7月上旬に比べると円高・ドル安に揺り戻されています。投機筋や実需筋の動向を踏まえると、歴史的な円安は既にピークに達した可能性が考えられます。
しかし、市場の円先安観が強まる中、4月下旬から5月初旬にかけて行われたのが、日本政府による大規模な円買い、ドル売り介入でした。これにより円相場は一旦、円高・ドル安への揺り戻され、投機筋の円売りポジションについても縮小しました。しかし、それでも円の先安観測は根強く、5月下旬からは再び円売りポジションの増加と共に円安が進みました。
また、輸出入以外でも、日本人が海外(米国)に旅行する際、旅行者は円を売ってドルに交換します(円安・ドル高要因)。海外から日本へ来る旅行者はドルを売って円に交換します(円高・ドル安要因)。こうした動きも実需筋による売買となります。要は実需筋とは円相場の相場観などにあまり左右されることなく、必要に応じて為替取引を行うプレイヤーということになります。
例えば、輸出企業は国内で製造した製品を米国に輸出する際に、買い手となる米国企業が代金をドルで支払いをします。その場合、輸出企業は最終的に受け取った代金(ドル)を円に交換することになり、その際に為替の取引が行われます。逆に輸入企業が米国から製品をドル建てで購入する際、決済のために円をドルに交換します。つまり、輸出が増えると円買いが増加し円高・ドル安が進行し易く、輸入が増えると円売りが増加し円安・ドル高が進行し易くなります。
オープンポジションの価格分布をみると現在の水準(153.40円)を中心として152.80円から円安方向はドルロング/円ショート(赤色のバー)が、ドルショート/円ロング(青色バー)に比べて多くなっている。
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