一時1ドル155円台に 円安進む
34年ぶり円安はどこまで進むのか、米インフレ長期化だけでない「円安構造要因」
敢えて、円安が修正される材料を探せば、最大の要因は日銀の政策修正になるだろう。4月の決定会合の影の注目点は、植田総裁の反応だ。3月19日にマイナス金利解除をした後、「緩和的な金融環境は維持できる」とした。このアナウンスを修正して、過度の物価上昇リスクにつながる円安を防止するために、政策修正を急ぐという姿勢に金融政策の方向性を改めるかどうかが問われる。
東京外国為替市場では、およそ3か月半ぶりに1ドル=155円台まで円安が進んでいます。トランプ政権が掲げている大規模減税などの政策がアメリカでインフレ圧力につながるとの見方から長期金利が大きく上昇していて、日本との金利差の拡大を意識した円売りドル買いが優勢となっています。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、30年国債入札は順調にこなしたと指摘。「金利が上がってきて割安感がある」ため、平準的に買っていく生命保険会社の目線に合った可能性があるとした。ただ、相場が上がっていく感じはないとして「今週は5年債入札もある。為替の円安が進む中で0.7%が意識されており、基本的に重い展開になりやすい」との見方を示した。
過度な円安が修正される可能性を模索すると、米大統領選挙の行方が一つの材料になる。共和党候補と目されるトランプ氏は、4月23日に34年ぶりのドル高・円安に対して、SNS上で「米国の製造業にとって大惨事だ」とコメントした。米貿易赤字を問題視する立場からの発言だ。トランプ氏は、日本と中国との貿易収支のことを意識している。
今後、11月5日の大統領選挙がもっと近づき、現職バイデン大統領が不利に傾き、かつトランプ氏が優勢になればトランプ氏の意向が為替レートにも反映してくるだろう。政府の為替介入の思惑を巡っては、依然として円安・ドル高をサポートする材料の方が多く、流れを円高に逆転する材料は限定されるのが実情である。
では、為替介入が実施されて、それが高い有効性を発揮するのだろうか。2022年9月22日の介入のときは、1ドル145円を突破して、2.8兆円規模のドル売り介入を行った。円安はそこでは止まらずに、10月に150円まで行く。2度の追加介入(10月21・24日の2回で6.3兆円)を政府が行って、何とか流れを止めた経緯がある。1度の介入で為替レートの流れを変えることは容易ではない。通貨当局は、今回も持久戦を厭わない構えで臨まなくてはいけないだろう。
その一方で、為替介入を待ち構えている人もいる。為替介入が行われたとき、一旦円高に振れたタイミングで、逆に円売り・ドル買いの売買を仕掛けようという人達だ。介入の効果が限定的だという読み筋で、為替が再び円安に振れる可能性に賭ける投機的な思惑である。そうした投機的行動があるときは、自己実現的に為替介入は効きにくくなりそうだ。だから、政府も介入を1回では終わらせず、何度か繰り返さざるを得ない。
達観して考えると、目下、為替が円高に振れるような有力材料は見当たらないことも、円安の流れを生み出している。内外金利差は、米長期金利の上昇で広がっている。貿易収支は、赤字が定着している。対日直接投資のように、日本国内に実物投資をしようという動きも、補助金を当てにしたものに限られる。そもそも日本の経済成長率が高くないことは、潜在的に「日本買い」の動機を乏しくしている。ファンダメンタルズは、円高基調ではなく、むしろ円安基調なのだ。
ドル円相場は一時1ドル154円台となり、34年ぶりの円安が続く。
18日の外国為替市場の円相場で円買い・ドル売りが進み、一時、1ドル=155円台まで円高が進んだ。米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを進めるとの見方が強まったほか、日本銀行が追加利上げに動くとの観測も出ている。日米の金利差縮小が意識され、円を買ってドルを売る動きが強まっている。
外国為替市場では、日本時間の17日、アメリカのトランプ前大統領がドル高・円安を懸念する発言をしたと報じられたことや、河野デジタル大臣が日銀の利上げの必要性に言及したと伝えられたことを受けて、ドルを売って円を買う動きが強まりました。さらに、FRB=連邦準備制度理事会の高官が利下げの時期が近づいてきているという認識を示したことが伝わり、17日のニューヨーク市場でも円を買う動きが広がりました。こうした流れを受けて18日の東京外国為替市場では、円高ドル安が進み、円相場は、一時、1ドル=155円台半ばまで値上がりして、およそ1か月ぶりの円高水準となりました。午後5時時点の円相場は、17日と比べて83銭、円高ドル安の1ドル=156円24銭から26銭でした。また、ユーロに対しては17日と比べて55銭、円高ユーロ安の1ユーロ=170円79銭から83銭でした。ユーロはドルに対して1ユーロ=1.0931から32ドルでした。市場関係者は、「政府・日銀による市場介入への警戒感もあり、投機筋の間でドルを売って円を買い戻す動きが出ていると考えられる」と話しています。
コメント