円安加速 一時1ドル156円台
日本時間26日に、政府が為替介入を実施しづらくなったとの観測が生じ、円安進行リスクは高まった。ただしこの時点では、決定会合で日本銀行が長期国債の買い入れ減額を実施するとの観測があり、また、会合後の記者会見で植田総裁が、円安をけん制する発言をするとの期待があったことが、円安進行をなんとか食い止めていた面があった。
これに対して植田総裁の説明は、円安進行をきっかけにいずれ基調的物価上昇率が2%に向けて高まり、物価目標達成の確度が高まるため、それに合わせて政策金利を引き上げていく、というものだ。円安を物価目標の達成を助ける「良いもの」と捉えられる説明となっている点が、政府、企業、個人と大きく食い違う点であり、それが金融市場の失望を招いたのである。
政府、企業、個人は、さらなる円安進行による原材料価格上昇、製品価格上昇が経済活動に悪影響を与えることを強く警戒している。つまり円安を「悪いもの」と捉えている。
26日の東京外国為替市場で円相場は1990年5月以来となる1ドル=156円台に下落した。日本銀行の金融政策発表後に円安が加速。米国の利下げ観測が後退する中、日米金利差に着目した円売り・ドル買いに歯止めがかからない。通貨当局による円買い介入への警戒感が一段と高まっている。
さらに、足もとの円安が物価に与える影響は、従来ほどには大きくないとの植田総裁の発言も、金融市場では円安容認と受け止められ、さらに、円安による物価高によって生活が圧迫されるという国民の懸念に配慮していない、との批判を生じさせてしまった。
しかし実際には、決定会合では長期国債の買い入れ方針には変更なく、また先行きの物価見通しも予想通りであった。さらに、記者会見で植田総裁は、円安進行をけん制する発言をしなかったことから、円安の流れが強まってしまった。
外国為替市場で円安が進み、円相場は一時1ドル=156円台まで下落しました。156円台をつけるのは今年7月下旬以来、およそ3か月半ぶりです。
しかし決定会合での記者会見で植田総裁は、円安によって一時的に物価上昇率が高まるだけでは金融政策で対応することはなく、それが賃金の上昇を通じてさらに持続的な物価上昇につながって初めて、政策判断に影響を与えるといった考え方を丁寧に説明した。その結果、円安阻止のために日本銀行が早期に追加利上げを行うとの観測は大きく後退し、円安が加速したのである。
2022年に、政府は米国が難色を示す中でも為替介入を実施したとみられることを踏まえると、今回、イエレン財務長官が日本の為替介入をけん制する姿勢を見せるなかでも、介入に踏み切る可能性はなお十分に考えられる。政府は、円安阻止に向けた対応をしていることを企業や国民にアピールすることが政治的には求められており、その観点からも、いずれ為替介入に踏み切る可能性は引き続き高いだろう。
植田総裁は4月18日のG20会議後の記者会見で、「円安が基調的な物価に無視できない影響を与える場合には、金融政策で対応する可能性がある」との主旨の発言をした。金融市場では、円安進行を受けて日本銀行の追加利上げを前倒しする、あるいはそれを示唆するような発言を総裁が行うことで、円安の流れが食い止められる、との期待が浮上していた。
円安の流れは海外市場でも続き、米国市場の終盤には、1ドル158円台まで円安が進行した。24時間のうちに約3円もの急速な円安となった。1ドル160円台乗せも時間の問題となってきた。
日本時間26日の昼頃に日本銀行が金融政策決定会合の結果を公表するまで、円相場は1ドル=155円台半ばで取引されていた。急速に進む円安への対応に関心が集まるなか、日銀が現状の金融政策の維持を決定すると、外国為替市場では円売り・ドル買いが加速した。
金融政策は為替をターゲットにせず、為替政策は政府の所管である、という建前を重視した結果、円安をけん制するどころか、円安を容認するかのように市場では受け止められてしまった。
その後の植田和男総裁の記者会見でも、円安への強いけん制はなかったとの受け止めが市場では広がった。
4月10日に1ドル152円という2022年、2023年の円安のピークの水準という節目を超えて円安が進んでから、短期間で8円も円安が進んだ。年初の1ドル約140円からは約14%も円安が進んだことになる。それは、消費者物価を1年間で0.2%程度押し上げる効果を持つ(内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)」による)。
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