路線バス減便 廃止 都内で深刻化
ドイツの都市部では地下鉄や路面電車、路線バスではゾーン制運賃が導入されているようだが、多くの国の大都市では均一運賃が主流となっている。しかし、ロンドンでは約320円、ニューヨーク市やロサンゼルス市では約435円となっており、日本より運賃設定は高い。今年9月にラスベガスを訪れた際、ダウンタウンとストリップ地区を結ぶバスに乗った際には運賃として4ドル(約600円)を支払った。
地方は利用者が減っているだけでなく、運転手の人手不足も深刻だ。21年度に乗り合いバスの運転手は2年前に比べて1割減った。今年4月には、残業規制の強化が運転手にも適用され、減便や廃止に拍車がかかっている。
池袋駅の高速バス乗り場の時刻表を見ると、一部の路線に「運休中」の文字が。富山線は半分、上越線はすべての便が運休中だ運転士不足の直接的な要因は、いわゆる「2024年問題」といわれているものだ。働き方改革の一環で法改正された労働基準法によって、トラックやバスなど、車を運転する業務に就く人の残業時間に上限が設けられ、休息時間が増えた。
タワーマンションが立ち並ぶ都内の湾岸エリアには連節バスが走る。オリンピックのために整備された新しい道を走るので、長大な車両でも運行はスムーズだ運転士不足に対して、バス会社、そして地域ではどのような対策を取っているのか。
筆者の経験では、都市部のバスで起点から終点停留所まで40分以上かかるような路線もあるが、それでも運賃が200円前後で済むのである。もちろん、地方部と都市部では交通環境が異なるので、同じ40分でも移動距離に差があるため、同じ40分の移動で運賃に大差が出るのはやむを得ないことなのかもしれないが、その開きがあまりに大きいのも間違いない。
それでも、路線を維持するのに十分な運転手数ではない。担当者は「人の命を預かる重要な仕事だが、負う責任の割に給与が低い。日ごとに仕事が完結するなど他の仕事にないメリットも多いので、運転手がやりがいを持って継続的に働けるよう、給与アップにつながる支援策を行政に期待したい」と話した。
そのようなことを考えていると、最近の減便や路線廃止のニュースとともに、運賃値上げのニュースも相次いでいる。事情通は「乗車時に支払う均一料金というものは改める必要があるのではないか」との話も出ているとしている。前扉乗車で均一運賃の路線を中扉乗車で区間制に切り替える動きがなかったわけではないが、都市部でも区間制の積極導入を進める時期にきているようだと筆者は考える。
日本バス協会 清水一郎会長「コロナ禍でもバスは走り続けましたが、協力金はありませんでした。令和2・3年度の2年間で、全国の路線バスは4000億円の赤字が積み上がりました。乗客数はコロナ禍前には戻っていませんし、この大赤字は10年や20年では取り戻せません。海外だと、公共交通を担うのは国や自治体、公的機関が中心ですが、日本は民間企業が中心です。もし国内の公共交通を公営化したら、もっとばく大な金額の税金を使って運営することになります。民間が踏ん張っているので、もう少し国や自治体の支援をいただきたい」
「バスがない」 俳優の太川陽介さんとタレントの蛭子能収さんが、バスを乗り継いでゴールを目指すテレビ東京の人気番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」が終了して7年たった。番組のルールで鉄道はもちろん、高速バスも使えず、路線が途絶えると歩くしかない。遠回りも余儀なくされ、見ていてハラハラした。
働く側にとってはありがたいものだが、バス会社ではこの法改正で運転士不足が発生。修学旅行シーズンなど観光バス需要が高まる季節に路線バスを運休させたり、運転士を工面できず、旅行会社からの依頼を断らざるをえない事態となったのだ。
自治体が運行するコミュニティバスはバス会社に運行を委託するケースが多い。路線バス維持のために廃止される可能性も?長期的に考えると、このようなことも。
人手不足に苦しむのは同社だけではない。ビィー・トランセグループの平和交通(稲毛区)も11月から、運転手不足から花見川区のにれの木台中央と美浜区のJR稲毛海岸駅を結ぶ路線を当面運休することを決めた。20年以上にわたり1時間に1本、住宅街と同駅間を運行してきた同路線。運転手不足が解消すれば、すぐに再開したい考えだが見込みは立っていない。
このバス運転士不足の影響は修学旅行のバスだけではない。すでに一般の路線バスにも影響を及ぼしているのだ。例えば北海道の北海道中央バスでは昨年12月に札幌市内の路線を中心に590便を減便・廃止、今年4月からさらに約230便も減らした。新潟県の新潟交通では3月に5~6%の減便を実施した。
「外国人労働者に運転士になってもらおうというプランも出ています。ですが、先ほどお話ししたとおり、日本の路線バスは運転業務以外の作業が多く、日本のバスの運転に適応できるのかという問題があります。
数値は路線バス、観光バスなどすべてのバス運転をする人の合計。コロナ前の2019年と2021年を比べると運転者の数は2年で12%以上減少した。2022年と同程度のバスの運行本数を維持したい場合12万9000人が必要となるが、今年は(推計値)10万8000人だかつては高給取りといわれていたバス運転士。だが、20年以降は給与が減ったことで退社する運転士がいる一方、薄給でも長時間残業すれば残業手当で収入が維持できるといった考えの運転士がいたことで、運行本数を維持できたのだろう。それが今年の法規制によりいよいよ不可能となってしまった。
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