温野菜を抜いたしゃぶ葉 なぜ明暗
そんな苦境の中、図らずもネガティブなイメージを世間に抱かれてしまうこととなった「温野菜」だが、今回のように脂身の多い肉を提供する際に、同じ轍を踏まないようにする方法などはあるのだろうか。
現在ではファミレス業界最大手であるすかいらーくグループが運営する「しゃぶ葉」や、「焼肉きんぐ」で知られる株式会社物語コーポ―レーションが展開する「ゆず庵」などの参入で競争が激化し、かつてに比べるとその存在感が薄くなりつつあることも確かだ。すかいらーくグループを統括する株式会社すかいらーくホールディングスの発表によれば、今年の6月30日時点で「しゃぶ葉」の店舗数は290と「温野菜」を抜いている。
平日ディナータイムの食べ放題コース価格を比較するとで、「しゃぶ葉」で一番安価な「豚バラしゃぶしゃぶ食べ放題コース」は1,979円なのに対し、「温野菜」で最も安い「三元豚コース」は3,498円と、かなりの価格差があった。
2016年にベトナムのハノイ市に初進出を遂げた際には国内388店舗と、しゃぶしゃぶチェーンの中で最大手となっていた「温野菜」だが、現在では216店舗(公式サイトによる)と、半分近くに減少。
ディナーの基本的なコースで大人2人、子ども1人を想定した場合、しゃぶしゃぶ温野菜はソフトドリンクの飲み放題を付けて1万円を少し超える程度、しゃぶ葉は7000円前後である。両者の差は数千円で、物価高が話題になる昨今、この差は大きいのではないか。近年の順位が逆転した要因は、価格差も大きいだろう。
しゃぶしゃぶ温野菜は、質にこだわっているのは確かだが、強みを消費者に訴求できていないのではないか。しゃぶ葉とともに、大衆向けのしゃぶしゃぶ食べ放題というイメージが強く、そう考えるとまだ中途半端な価格設定である。
「『温野菜』には僕もそれなりに行きますが、9割以上脂身というこのような肉は今のところ見たことがありませんね。『イベリコ豚しゃぶ』がかなり脂身の多い肉であることは確かですが、三枚肉のような、脂身は多いけど赤身もそれなりにあるという商品を想像している人がこれを提供されてしまった場合、衝撃を受けるのは否めないでしょう。ただ、個人的な意見を言わせてもらえるなら、ネットの声にもあった通り、イベリコ豚は脂身のおいしさが魅力だと思うので、全然アリ……というか、僕がこれを提供されたらむしろ“当たり”だなと思っちゃうかもしれません。脂身のおいしさを好む人であれば、全然おいしく食べられる範疇だと思います」
阿左美氏によれば、「温野菜」が「しゃぶ葉」の後塵を拝してしまった理由の一つに、「高価格帯のコースのクオリティや、期間限定メニューなどには十分な魅力があるものの、低価格帯のコースが『しゃぶ葉』よりもかなり割高感があり、消費者がそれに相応するだけのバリューが見いだせない部分があるのではないか」とのこと。
「しゃぶしゃぶ温野菜」の不調が続いている。2016年時点で国内に400店舗弱を運営し、しゃぶしゃぶ業界でトップの座についていたが、コロナ禍で店舗数を縮小。11月21日現在では216店舗となっている。
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