ガソリン補助縮小 駆け込み懸念も
ガソリン価格の急騰を抑えるため、政府が2022年1月に石油元売り会社への補助金支給を始めてから2年になる。6兆円を超える予算規模には批判の声が挙がり、価格が高止まりする中、政府は廃止に向けた出口戦略の難しい舵取りを迫られている。
トリガーの発動・停止時には、価格が大きく変動する。値下がりを見越した買い控えや値上がり前の駆け込み需要を招き、販売現場が混乱すると懸念されている。
ただ、実際には200円を超える値段で販売するガソリンスタンドは見かけない。政府が補助金によって価格を抑制しているためだ。
日本はガソリンの原料である原油のほぼ全量を輸入に頼る。その9割超が中東産だ。新型コロナウイルスからの経済回復への期待で、原油価格は2020年秋頃から上昇が続いた。
ガソリン価格、今後の見込みは?
もしトリガー条項が凍結解除されていたら、ガソリン価格はどのように推移していたのだろうか。22年4月1日から発動したと仮定してシミュレーションしてみよう。
まずはガソリン価格を決める要素を一つずつ見ながら、価格高騰の背景を探ってみよう。
ガソリンが消費者のもとに届くまでには、その他にも様々な費用がかかっている。原油を輸入する際の輸送費、ガソリンにするための精製費、タンクローリーによる運搬費、貯蔵費などだ。これらのコストにも原油高や円安は影響する。
トリガー条項は、ガソリンにかかる当分の間税率(1リットルあたり25.1円)を免除する仕組みだ。ガソリン価格が3か月続けて160円を上回ると発動し、同じように3か月連続で130円を下回ると解除される。
政府は9日、ガソリン補助金の延長や住民税非課税世帯への5万円給付などを柱とする物価高騰対策を正式に決めた。支援策の縮小も検討されたガソリン補助金は現行のまま年末まで延長。政府は10月に新たな総合経済対策も策定するが、物価高の痛みを和らげる効果は未知数だ。
ガソリン業界はトリガー条項に反対の立場だ。発動時、廃止時の急激な価格の変化を懸念している。背景には、2008年の苦い経験がある。まだ当分の間税率に「衣替え」される前の暫定税率が、ねじれ国会によって延長されず、約1か月間だけガソリン税が25.1円下がったことがあった。その際、買い控えや駆け込み需要で現場は混乱した。
これら全てが足し合わされてガソリンの販売価格は決まる。資源エネルギー庁のデータでは、22年以降で160円を下回ったことはなく、市場の原理で価格が決められた場合には、同年6月20日時点で215円80銭まで高まったと推計される。
また、総務省統計局によれば、小売物価統計のガソリン価格調査は月に1回。「その月の12日を含む週の水曜日~金曜日のいずれかの曜日」に行われる。価格が激しく変動した場合に適切に市場の動きを捉えられない恐れがある。
来年度の税制改正では、ガソリン税の見直しも議論されている。国民民主党がガソリン税の「トリガー条項」の凍結解除を求めているためだ。税負担を軽減するのが狙いだ。少数与党の石破政権は検討せざるを得なくなっている。
ガソリンの補助金について、政府は今月から段階的に縮小することを決めました。来月には1リットルあたり185円に上昇する可能性があります。
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