年末年始の国内旅行費 最高見通し

年末年始の国内旅行費 最高見通し
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年末年始の国内旅行費 最高見通し

JTBは、「年末年始(12月23日~1月3日)に1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しをまとめました。本レポートは旅行動向アンケート、経済指標、業界動向や予約状況などから推計しています。

当社が実施したアンケート調査において、自身の生活と年末年始の旅行について当てはまる状況を聞いたところ、「昨年よりボーナスが増えそうだ(3.1%)」は前年調査より0.7ポイント増加、「昨年よりボーナスが減りそうだ(13.3%)」は同0.8ポイント減少しており、収入面では良化傾向がみられます。これらの影響もあってか、「先行きがわからないので、今のうちに大きな支出を考えたい(4.8%)」が同0.3ポイント増加、「先行きがわからないので、大きな支出は控えておきたい(18.1%)」は同0.9ポイント減少となり、大きな支出に前向きな兆しがみられます。その一方で、日常の生活費については「特に生活費を節約していない(5.5%)」が0.3ポイント減少、「いつもより生活費を節約している(17.5%)」が0.9ポイント増加しており、支出にはメリハリを利かせたい消費者の心理がうかがえます(図表4)。

旅行に行かない人に理由を聞いたところ、最も多かったのが「年末年始はいつも家でゆっくりしているから(39.3%)」、次いで「年末年始は混雑するから(35.9%)」となりました。また「新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症がまだ心配だから(8.3%)」は、前年から14.1ポイントと大きく減少しました(図表9)。

旅行・観光分野においても、入国制限の撤廃や隔離期間の短縮などの水際対策の緩和、国際航空便の再開が進み、旅行の早期回復に期待がかかります。国連観光機関(UNWTO)が2022年9月に発表した調査によると、地域差はあるものの、国際観光客数は2024年には世界全体で2019年の約8割にまで回復するとされています。一方で、ウクライナ情勢をはじめとする不安定な国際情勢によるエネルギー価格や物価の高騰は、世界中の人々の生活に影響を与えています。日本国内では、2022年10月11日から1日あたりの新規入国者数の上限が撤廃され、陰性証明や隔離期間など入国時の条件の緩和、さらには訪日外国人観光客の個人旅行も解禁となり、日本人の海外旅行と外国人の訪日旅行が容易になりました。国内旅行については、2021年4月より需要喚起策として県民割など域内旅行に限定した「地域観光事業支援」が実施されてきましたが、全国を対象とした「全国旅行支援」が10月11日(東京都は10月20日)から始まったことで、各地で盛況となっています。しかしながら、日本国内も円安やエネルギー高による物価上昇が生活に影響を及ぼしつつあり、また現在、第8波の新型コロナの感染が拡大し、行動制限の要請はなくとも一定程度の人が旅行を控えるとみられます。全国旅行支援が年内は12月27日で終了する予定でもあることから、旅行全体は本格的回復に向かいつつも、年末年始期間は多少の影響があると予想されます。2。旅行やレジャー消費をとりまく経済環境と生活者意識コロナ禍における旅行をとりまく経済環境や生活者意識は、ここにきて大きく変わりつつあります。2020年に新型コロナが世界的に広がってしばらくは、行動制限の要請により外出や飲食に関連する消費が減少、その結果可処分所得が増加となり、それに伴うアフターコロナにおける旅行のリベンジ消費への期待が高まっていました。 しかしながら2022年以降円安ドル高が急速に進み、今年10月22日の外国為替市場では、32年ぶりに一時1ドル150円台を記録しました(図表3)。輸入原価の上昇やエネルギー価格の高騰などによる物価上昇が家計に影響を与えています。主な消費者物価指数を見ると、交通・通信以外の項目で上昇が見られ、特にガソリン価格をはじめとするエネルギー関連や電気代の上昇が著しくなっています(図表2)。日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」の「現在の暮らし向き(ゆとり)」をみると、「ゆとりがなくなってきた」の割合は、2021年9月以降、それまでの横ばいから増加しており、2022年9月には前年同月比14.4ポイント増加の50.7%になりました。生活のゆとり意識は悪化しています(図表4)。JTBが実施したアンケートで、自身の生活と年末年始の旅行について当てはまる状況を聞いたところ、自身の生活では「いつもより生活費を節約している」は16.6%となりました。一方で「趣味や旅行などにかける費用は減らしていない(7.1%)」は2021年度調査から1.2ポイント増加、「先行きがわからないので今のうちに大きな支出を考えたい(4.5%)」は3.0ポイント増加するなど、物価高への対応はする一方でメリハリをつけて欲しいものには消費する層も一定数いると言えそうです。年末年始の旅行については、「昨年より旅行にお金をかけず質素に過ごす予定(14.9%)」は昨年より1.1ポイント増加しました。また「昨年同時期に比べてお出かけや外出する頻度を減らす」が11.0%と「増やす」より多くなりました(図表5)。「今後1年間の旅行の支出に対する意向」を聞いたところ、「支出を増やしたい」と回答した人は12.1%で、2021年度調査において、「コロナ禍(2020年以降)より旅行支出を増やしたい」と回答した17.3%から5.2ポイント減少しました。「支出を減らしたい(44.1%)」は同調査(33.8%)から10.3ポイント増加しました(図表6)。2020年の年末が新型コロナ感染拡大期だったことから、昨年はその反動を受け「旅行日数を増やす」「支出を増やしたい」が大きく増えていましたが、今年は落ち着きを取り戻した結果となりました。

JTBの担当者は「訪日外国人客(インバウンド)はかなり早めに手ごろな宿を押さえるため、国内客は割高な商品から選ばざるをえなくなっている側面もある」と指摘する。実際、大阪や京都のホテルでは訪日客の回復で需要が高まり、年末年始の客室単価は軒並み上昇。ホテルグランヴィア大阪(大阪市北区)は前年同期比で37・5%増、令和元年度比で44・7%増を見込む。京都市内の五つ星ホテルでは年末に1泊300万円を提示するホテルもある。

ただ、新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行して初めての年末年始とあって、国内旅行では遠方への旅が増えそうだ。多くの人出でにぎわうテーマパークなどへ足を延ばす意欲が高まり、予定する旅行先としては、東京ディズニーリゾート(TDR)のある関東が24・7%を占め、前年度から2・1ポイント上昇と最も高い伸びを示した。

7。今年の年末年始で気になるところは、「季節ならではの買い物が楽しめる場所」「自然が楽しめる場所」「東京ディズニーリゾート®」今年の年末年始に旅行や日帰りで出かける場所として、どのような所が気になっているか聞いてみました。「季節ならではの買い物が楽しめる場所(14.3%) 」が最も高く、次いで「自然が楽しめる場所(国立公園や花畑など景観を楽しむ)(12.8%)」、「東京ディズニーリゾート(10.1%)」となりました(図表23)。JTBの宿泊・企画商品の予約状況を見ると前年比115%(12月1日付)となりました。東京ディズニーリゾート®を含む関東、3年ぶりにカウントダウンイベントが開催されるユニバーサル・スタジオ・ジャパンを含む関西が好調で、年末年始も全国から高い人気となっています。また北海道や沖縄など遠方の旅行も昨年より増加しています。さらに、全国旅行支援の年内の対象期間延長(12月21日~27日宿泊分・12月28日チェックアウトまで)も発表されたことにより、間際のお申し込みにも期待がかかります。

今年の年末年始のカレンダーを見てみると、12月30日~1月3日の正月を含むお休みに加え、1月6日~8日に3連休があります。そのため、正月三が日を避け、3連休を中心に旅行の予定を組む人が一定数いることが想定されます。なお、1月4日および5日を休みにすれば10連休(12月30日~1月8日)となるため、長期休暇を取る人もいる可能性があります。

6。感染防止に向けた特別な配慮は続くも、意識は徐々に正常化へ新型コロナの日本国内での発生状況は、秋ごろから第8波を迎えています。アンケートでは、新型コロナの現状を踏まえて「年末年始の旅行において特別に考慮すること」と「懸念していること」、そして「新型コロナの感染状況が拡大した場合の対応について」聞きました。「特別に考慮すること」で最も高かったのが「公共交通機関を使わずに、自家用車やレンタカーを使う(24.6%、前年比▲3.2ポイント)」、次いで「家族・親族や親しい友人以外には会わない(24.3%、同▲5.2ポイント)」「少人数の旅行にとどめる(20.4%、同▲3.3ポイント)」で、ほとんどの項目が昨年よりポイントを下げる結果となりました。その中で「人が多数移動する時間を避ける(18.3%)」は昨年から0.5ポイント増加しました。また新たに追加した「外国人観光客の増加などにより、混雑が予想される観光地は避ける」は9.6%となりました。また「コロナ禍の旅行で特別に考慮することはない(22.0%)」は昨年より5.0ポイント増加しました(図表20)。「懸念していること」で最も高かったのが、「日本国内における新型コロナの再拡大(49.5%)」、次いで「物価高の影響(34.3%)」「ガソリン代の燃料費高騰(32.7%)」となりました(図表21)。また「新型コロナの感染状況が第7波(2022年夏ごろ)と同規模に拡大した場合の対応」について聞きました。結果は「予定通り出かける」が64.7%と最も多く、「その旅行は延期または中止する(13.8%)」が続きました。コロナ禍も3年目となり、十分な感染防止策を実施しながら旅行する人の割合が増加しています(図表22)。

年末年始の国内旅行にかける費用は過去最高となる見通しです。

なお、出発日のピークは、国内旅行者では12月30日、海外旅行者では12月22日以前となっています(図表11)。海外旅行者の出発日が早めとなっている理由については、人が集中し費用が高くなる年末年始のピークを避けて旅行する人がいることに加え、年をまたいで長期間旅先で過ごす人も一定数いることが推察されます。

JTBが実施したアンケートで、「今年の年末年始の生活」状況を聞いたところ、「昨年より収入が増えた(7.1%)」は前年から増加、「昨年より収入が減った(14.0%)」は減少となっており、収入面ではわずかながら改善傾向がみられます。同様に、「家計に余裕がある(4.6%)」は前年から増加、「家計に余裕はない(25.3%)」は減少となっており、こちらも若干ではあるものの良化がうかがえます。ただ、「趣味や旅行などにかける費用を減らしている(14.6%)」「趣味や旅行などにかける費用は減らしていない(8.9%)」はいずれも前年から増加しており、趣味や旅行への支出を増やす人と減らす人が明確に分かれる結果となりました。このほか、「コロナの影響で我慢を強いられてきたので、好きなものや贅沢品への支出、お出かけや人と会う機会を増やしたい(5.8%)」は前年から減少、「コロナの影響で我慢を強いられてきたが、好きなものや贅沢品への支出、お出かけや人と会う機会を増やしたいとは思わない(14.1%)」は増加となりました。なお、「昨年の年末年始より長い休みが取れそうだ(10.5%)」は増加、「昨年の年末年始より休みが短くなりそうだ(6.4%)」は減少となり、日並びの良さや休みのとりやすさが旅行の後押しとなることが期待されます(図表25)。

2023年4月29日の日本の水際対策終了以降、本格的な回復が見込まれたものの、日本人の海外旅行人数は回復途上にあります。日本発着の国際定期旅客便は急速に戻りつつあり、2023年夏期はコロナ禍前の約7割にまでなったとの調査結果もあります。この年末年始を含めた2023年冬期は、さらなる伸びが期待されます。

8。 期間中の海外旅行人数は15万人(対前年750%、対2019年18.1%)を予測 出入国の規制は緩和されたものの、物価高や資源高、円安の影響が大きい年末年始期間の海外旅行人数は、15万人(対前年750%、対2019年18.1%)、一人当たりの海外旅行費用は260,000円と推計します。費用は2000年以降の当社調査では過去最高となります。 この理由として、ウクライナ情勢による世界的な物価急上昇など経済への影響が大きくなっていることや、円安が進み対米ドルや他の主要通貨に対する大幅な下落が滞在費に影響を与えていることが考えられます。さらに、航空運賃の値上がりに加え、原油高が燃油サーチャージの高騰にもつながっています。今の海外旅行の実施時期についての考え方で最も多かったのが、「国際情勢や感染症がまだ不安なので、今年度は旅行しない(22.3%)」、続いて「円安や物価が上がっているので、今年度は旅行しない(21.8%)」となり、消極的な意見が上位となりました(図表24)。しかしながら、世界の多くの国々では、経済の正常化に向けすでに水際対策が緩和されています。以前は対応が比較的厳しかったアジア・太平洋地区では、オーストラリア・ニュージーランドや東南アジア各国などが日本に先駆け緩和を進め、交流が回復すると同時に、航空座席供給数も回復しつつあります。日本でも、今年のゴールデンウィーク頃から海外旅行商品の販売が再開されたことを機に旅行需要が戻りつつありました。10月から入国時の手続きや規制が大幅に緩和され、海外旅行の本格的回復に期待がかかります。 このような背景から、今年の年末年始の海外旅行は、比較的経済的に余裕がある層や明確な目的を持った層が、新型コロナ対策の緩和が先行している地域に行くことが予測されます。JTBの海外企画商品では、ハワイ、グアム、韓国、タイなどの売れ行きが好調です。

年末年始期間(2023年12月23日~2024年1月3日)の旅行動向については、各種経済指標、業界動向や交通機関各社の動き、宿泊施設の予約状況、各種意識調査などをもとに算出し、総旅行人数(延べ)は2,858万人(対前年105.0%、対2019年95.0%)、総旅行消費額は1兆2,768億円(対前年121.3%、対2019年115.7%)と推計します。

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