年収の壁 時給↑で人手不足が加速

大阪府豊中市のパートの40代女性は、年収の壁の引き上げを求めるが、「フルタイムで壁を越えて働く人は、保険料を払わなくてもいい人が増えることに不満を持つかもしれない」と懸念。その上で「物価高などの社会情勢に合わせて公平感のある制度に変えてほしい」と訴える。

各政党は衆院選の公約で「年収の壁」問題の改善を主張する。自民党は壁を見直し、働き方に関わらない中立な社会保険制度を実現するとした。自民と連立政権を組む公明党も同様に壁の解消を訴える。立憲民主党は公約に「『130万円の壁』等を給付で埋める『就労支援給付制度』を導入」と明記。日本維新の会は壁の撤廃に向け、第3号被保険者制度の廃止などを検討事項に掲げる。共産党は人手不足分野の対策を策定するとした。国民民主党は壁を見直すとし、正社員を増やした中小企業の社会保険料補助を打ち出す。

「年収の壁」に関する議論、関心はありますか？

政府の「年収の壁」支援強化パッケージは、年収が壁を越えることによる可処分所得の落ち込みを雇用保険料を原資に埋めるという奇策だ。岸田文雄前首相は次期年金制度改正で改めるとしたが議論は進んでいない。

一定の年収を超えると社会保険料の負担が生じ、手取り収入が減る「年収の壁」問題が、衆院選で注目されている。「働き損」にならないよう、パートやアルバイトの人が就業時間を抑制。企業の人手不足が深刻化し、女性活躍の妨げにもなっているといわれる。政府は保険料分を補助金で穴埋めする対策を取るが、時限措置であり抜本的な対策が必要だ。

各地の企業が年末にかけて、パート従業員や学生アルバイトの確保に苦心している。賃上げに伴い、所得税や社会保険料の負担が発生したり、親や配偶者の扶養から外れたりする「年収の壁」を超えやすくなり、働くのを控える人が増えているためだ。社員への登用を進めたり、短時間で働ける制度を設けたりして繁忙期に備えている。