大学部活と企業マッチングに需要
このコロナ禍の中、会津大学では、オンラインとリアルな授業を並行して行うようになり、何をするにも、どこへ行くにも、最低人数でちゃんとログを残すよう示されているそうですが、「行動歴をログ配信に残すことで『出会う機会』を制限せず、『新しい繋がりを探したい』というニーズに応えられる私たちのマッチングサービスは、学生や若者に対して間違いなくアプローチできると、実証実験の結果が物語っています」。アプリリリースに欠かすことのできない重要なミッション、それが実証実験。「助川君が取り組んでいる実証実験の結果が、成功の鍵を握っています」。4月のアプリリリースを前にした実証実験は、マッチングサービスの事前PRもかねているそうで、リリース開始後の利用者増加に効果があるのではないでしょうか。
ブームと言ってもいいこれら大学サークルにおいて注目すべきは、何といっても「価値観でつながっている団体」であること。昨今のマーケティングでは性別、年齢、居住地域などのいわゆるデモグラフィック視点では生活者がつかみづらいといわれています。
橋本さんにアイデアが閃いたのは2021年の10月。プロトタイプのアプリで手応えを感じ、11月には起業を決意し、12月に5名のスタッフで会社設立。メンバーには、気の置けない会津大学の同期や後輩の顔ぶれが揃ったようで、「これは絶対に私がやらなきゃという、やりたい気持ちがリスクより勝り、その勢いでスタッフを巻き込んでしまいました(笑)」。「僕もその一人ですけど(笑)」とはにかみながらで答えてくれたのは、橋本さんの信頼が厚い助川さん。助川さんは現在、会津大学の4年生。「僕自身、会津大学では、いろんなプロジェクトに関わり、研修、プログラム、留学などにも積極的に参加しました。中でもシリコンバレーインターンシップの経験はとてもいい学びになりました」。学べば学ぶほど次のステップへの飽くなき欲求がわいてくる助川さんにとって、新たなチャレンジへの扉を開いたのが、橋本さんから持ちかけられた「起業」という未知なる魅惑のワードでした。「『起業』という、よりリアルな社会体験は、これまでの経験を試す願ってもない好機に思えました」。橋本さんの構想を、助川さんが実質的にサポートをする、現役大学生二人の絶妙なタッグが起業の原動力になっています。
ただ、所属しているコミュニティー数が増える一方でその多様性は失われつつあります。例えば、この12年間の調査によると大学生活で重視することとして「勉強第一」はほぼ横ばいですが、「サークル第一」の割合は増え、その分「豊かな人間関係」は減少しています。
懸命なプレーで汗を流しているのは、埼玉大学・準硬式野球部の部員たち。練習の様子を見守るのは、革靴にスーツ姿の男性です。監督やスタッフではありません。 トータルアセットパートナーズ 薮崎洋介さん 「学業プラスアルファで、スポーツに真剣に取り組まれている皆様に敬意を表します」 男性は、この野球部に資金を提供するスポンサーになるかどうか検討している中小企業の担当者です。 労働市場の人手不足が深刻ななか、スポーツ経験のある優秀な学生と企業をマッチングさせるサービスが人気となっています。 “体育会×企業 マッチングサービス” スポンサーズブースト 西里将志社長 「大学生活で体育会、スポーツに打ち込んでいる“熱中する力”と“自力の考える力”がある。今回、埼玉大学に(声を掛けた)」
では、橋本さんたちが目指すイベント型マッチングサービス「Splannt(スプラント)とは具体的にどんなものなのでしょう。「一般的な『出会い系』」とは一線を画します。私たちが考えているのは『イベント型マッチング』。大学とは、新しいコミュニティに入ることですが、今の大学生はオンライン授業が主で、サークル活動やイベントなどに参加することもなく、そもそも友達を作る機会が失われ、自分の居場所をどうやって探すか、というところから始めなければなりません。そのためには、話が合う、趣味が合うなど、『どういう人と会ってみたいか』をヒアリングし、『何をやりたいか』という目的に合わせ、ユーザーに提案します。これを称して「イベント型マッチング」と名づけました。また、街のお店と協力することで、お互い承認した学生同士が街でリアルに会える場を用意したいと考えています。「学生を街で見ない」という地元の住民の方の声も聞こえてくる中で、スプラントは街と若者が繋がるきっかけを提供し、コロナ禍後も街の活性化に繋がるサービスにもなれると確信しています。現在、SNS上の既存のプラットフォームを使い、『これなら参加したい』といった声を集め、これらをデータ化しアプリ開発に活用したいと考えています」。こうした実証実験から得られたアンケートによると、全体的に、出会いを求める結果が多く見られ、アプリに対する需要の高さを実感しているようです。
【ワカモンプロフィール】 電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中。
なぜ今、大学サークルなのか? このコラムでは変化する若者の価値観と、大学サークルと企業によるビジネスクリエーションの可能性についてお話しします。
学生優位の売り手市場になっている就職活動で、優秀な学生との接点を早期に持てるのが企業側の利点だ。47マーケティングは「興味を持ってくれる大学生が増えれば」と期待する。
会津大学は、学生の「やりたい」を尊重し全力でサポートしてくれる学風が息づいており、それは、研究のみならず、起業においても同様で、「やりたいことが実現できる」土壌があるようです。「知識がなくても、何かをやってみたいと思う学生にはおすすめの学校です。ぜひ、入学の暁には、弊社のアプリ『Splannt(スプラント)』を使い、新しい友達を探して繋がってほしいと思います」と、橋本さんは笑顔で語ってくれました。
「部活メディア」(東京)は今年3月、スポンサー企業と大学の体育会部活をマッチングするサービス「ブカスポ」を開始した。岡山大学の卓球部など、地方大学でも契約成立の実績が出ている。教育大手のZ会グループは、主に中学や高校の部活などが対象のクラウドファンディングサービス「Yellz(エールズ)」を手がける。今夏の高校野球の甲子園大会で8強入りした島根県立大社高が1000万円超を調達した。
ここで課題となるのが資金の調達です。学生間の出会いの場を、「イベント参加型マッチング」として提供することで、売上にどうつなげていくか、という点も、事業として軌道に乗せるためには重要なことです。「仙台・東京のIT企業等の方々や大学の先生方などいろんな方に指導を受けながら、ビジネスモデルを組み立てています。ひとつは、企業向けの学生と交流ができる公式アカウントの使用料です。特に中小企業では大学生との関わりを持ちたいという声がありますが、実際は知り合いがいないとアプローチができない、学生の声を聞く場がないのが現状です。また、学生からも社会人と交流して経験を積みたい、就活の場以外でどのような業界があるか知りたいという声がありました。若者同士・若者と街のお店を繋ぐだけでなく、若者と企業も今までにないSNSの感覚で気軽に繋がれるプラットフォームを構築していきます。もうひとつは、参加した若者や学生から得られる今どきのトレンドや興味など、リアルでさまざまに多様化した志向をデータベース化し、企業のマーケティングなどに役立てることです。」と橋本さん。
2021年の夏、コロナ禍の中、東京2020オリンピックが57年ぶりに国内で開催されました。福島県内でも、野球、ソフトボール競技が福島市で開催され、多くの県民が国内外の選手たちに声援を送り大いに盛り上がりました。しかし、競技場にはリアルな観衆はなく、自宅のテレビやスマホ、タブレットといった画面に映るのは選手たちの躍動だけ。それはオリンピックに限らず、日常生活においても、外出制限や少人数での行動といった自粛要請の影響が大きく、「会津大学でも、オンライン授業が優先されるなど、自宅にこもる時間がみるみる増えていきました」と語りだした株式会社ブランチズム代表の橋本志穂実さん(以後橋本さん)。
株式会社の登記上、事務所は、会津大学にあるUBIC(会津大学産学イノベーションセンター)に構えるそうですが、事業内容がアプリ開発のため、事業を行う場所に捉われることもありません。2月22日には、株式会社ブランチズムが、会津大学発ベンチャーに認定され学内で授与式が行われました。「これまで29社のベンチャー企業が起業し、その中で、在学中に起業し認定されたのはわずかに5社。その1社が当社になります」。橋本さんは、会津大学への入学時を振り返り、「子どもの頃から、人と会うことは好きでしたが、自分の思ったことを伝えられなかったり、まとまった文章にしたりすることが苦手だったので、『思っていることが直接伝わる方法があれば!』と考えていました」。そんなとき、「生体信号」という分野を知る機会を得て、「脳波や心電図などを使い外部に伝えられるものが作れるかもしれない」と直感した橋本さんは、人に関することをITでデータ解析する生体情報工学講座の研究室がある会津大学へ入学しました。「将来的には、制限を感じている人が、自分のチカラを発揮できるようなものを作りたい、そんな研究者になりたいと思っていました。まさか、自分が起業するとは夢にも思っていませんでした、その頃は(笑)」。
大学の部活とスポンサーとなる企業を結び付けるサービスが注目されています。人手不足が深刻ななか、優秀な新卒を確保したい企業から評価を得ています。
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