「サメ肌」にするメリット どんなもの?
日本航空などは機体の表面の一部にサメ肌のような凹凸をつけ、空気抵抗を減らすことで消費燃料を抑える実証実験を行っている。
「サメ肌」にするメリット、どんなもの?
JAL(日本航空)は1月10日、機体の表面を“サメ肌”のような形にする「リブレット形状塗膜」を施した飛行機を、世界で初めて国際線に導入すると発表した。リブレット形状塗膜により、飛行時の空気抵抗を軽減し、燃費を改善できるという。導入は1月中旬を予定。
内田嶺衣奈 キャスター: 今回の”サメ肌加工”にも、日本のモノづくりの技が活かされているのでしょうか?
かつては塗装をしないことが燃費向上になっていたわけですが、今後はサメ肌加工を施した塗装が航空機の燃費向上の役割を果たすということになりそうです。
「サメ肌」を行う塗料は無色透明。その工程はその塗料を「サメ肌」が刻まれた水溶性フィルムに塗りつけたのち、塗料が塗られている側を機体に貼り付け。その後水洗いを行うと、フィルムが溶け、「サメ肌塗装」が完成します。
航空業界の脱炭素へのアクションというと、従来の原油からつくる燃料と比べるとCO2の排出量を大幅に減らせる、バイオ燃料のSAFが注目されていましたが、今後、リブレット(=”サメ肌加工”)は航空業界の流行になるかもしれません。
2021年5月、ルフトハンザグループの子会社Lufthansa Technikとドイツの総合化学メーカーBASFは、サメ肌を模した新フィルム「AeroSHARK」を開発し、ルフトハンザカーゴが2022年より全機に適用すると発表した。機体への新フィルム貼付により、1%程度の燃料削減を見積もっている。 「AeroSHARK」には、リブレットという高さ50μmの微小突起物が何百万個もあり、このフィルムを機体に貼ることで空気抵抗を減らす。ルフトハンザカーゴのボーイング777Fの場合、保有する全10機で約3700トン/年の燃料削減と、1.17万トン/年のCO2排出量の削減が可能である。
JALの「サメ肌塗装機」は今後、2023年度には国内線仕様機に、2024年度に、より燃費効率の向上が期待される国際線仕様機に展開。2025年度以降にはリブレット機の増機を図りたいとのことです。
この「サメ肌塗装」は2機のボーイング737国内線仕様機に施されています。2022年7月からは「JA331J」に、同年10月からは「JA334J」の胴体底部に、7.5cm四方、2か所の塗装があしらわれ、形状を定期的に測定する耐久性飛行試験が、実際のフライトで実施されました。そうして2機でのべ2250時間を超える実証実験を行った結果、いずれも十分な耐久性を有することが確認されたといいます。
他社でも似たような取り組みはあり、例えば日本航空は宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと組んで、機体表面の “サメ肌化” に取り組んでいる。ただしアプローチが異なり、こちらは機体の表面に施す塗装の塗膜そのものを凸凹にしようとしている。2023年から実証実験を始めている。
「フィルムではなく塗装でリブレット外装を実施するのは、作業に手間を要する一方で、耐久性も高く、さらに飛行中に落下する心配もないというのがメリットです」(JAXAの担当者)。国内線仕様機は、羽田空港を始め市街地の上空を飛ぶケースが多いことから、とくにJAL側が「落下物」に気を払った結果、今回の「サメ肌塗装」が実現したといえそうです。
そのような「サメ肌塗装」ですが、なぜあえてフィルムではなく「直塗り」なのでしょうか。JAXAの担当者は次のように話します。
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