西武池袋本店 どういう改装をする?
西武池袋本店の2022年度の売上高は、前年比14.8%増の1768億円だった。これは伊勢丹新宿本店、阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)に次ぐ日本3位の規模だ。同店はそごう・西武の売上高の約35%を稼ぎ、利益ではさらに多く貢献する旗艦店である。アパレルでは西武池袋本店が一番店(全国で最も売り上げが大きい店)というブランドは少なくない。にっちもさっちもいかなくなった百貨店が家電量販店を入れるならわかるが、西武池袋本店に関していえば必然性があるとは思えない。
そごう・西武に荒療治が必要なのは間違いないし、西武池袋本店も課題が山積しているのは確かである。だからといって“ヨドバシ百貨店”が最適解なのか。年間7000万人が入店し、現在も日本屈指の売上高を誇る店舗である。それにしては既存の顧客や取引先をないがしろにしている感が否めない。不安を覚える従業員への対話不足に至っては論外だろう。
西武池袋本店、どういう改装をする?
焦点になっている改装案は、単に西武池袋本店に家電量販店が入るというのではなく、立地や面積においてもヨドバシカメラを核にした“ヨドバシ百貨店”への大転換を意味する。労組の寺岡委員長は「世界観が合わないことなどを理由に取引先や顧客が離れる可能性もある」と危機感を強める。西武池袋本店は長年の「のれん」の力によって、上質さを求める顧客に支持されてきた。ヨドバシカメラが悪目立ちしすぎると、店のブランドイメージが毀損し、既存の顧客の離反を招く恐れがある。
西武池袋本店については、そごう・西武、セブン&アイ、フォートレス、ヨドバシに加えて、地権者の西武ホールディングス、さらには都市計画の観点から豊島区が異議を唱えるなど、一小売業の改装という枠組みを超えた社会問題に発展した。複雑な利害を調整すべきセブン&アイは役割を果たしていない。改装案についてセブン&アイ側からそごう・西武従業員への対話がほとんどなかったという。不信感を強めた労組は、ストという伝家の宝刀に手をかけるに至った。
百貨店業界は長期不振に陥っており、そごう・西武も業績低迷によって売却されるに至った。そのため西武池袋本店の大部分にヨドバシが入る改装案について一般の人は妥当と考えるかもしれない。
もちろん総論として百貨店業界の不振、そごう・西武の業績低迷はその通りである。しかし西武池袋本店という各論を考えた場合、フォートレス・ヨドバシ連合のやり方が正しいかは疑問だ。
西武池袋本店は明治通り沿いに北館・中央館・南館が連なる細長いフロア構成だ。現在、北館の低層部は「ルイ・ヴィトン」「グッチ」「ロエベ」といったラグジュアリーブランドが営業している。しかも1・2階に入る「ルイ・ヴィトン」は22年10月に増床したばかり。改装案では、このラグジュアリーブランドの売り場をごそっと中央・南館側に移転させる。アパレルや服飾雑貨などその他の売り場も大幅な縮小を余儀なくされる。
西武池袋本店は25年夏に本格的なオープンを予定。改装工事中は一部の売り場を休業するが、全面休業はしない。
百貨店のそごう・西武は10日、西武池袋本店(東京都豊島区)の改装を進め、2025年1月以降、段階的にリニューアルオープンすると発表した。業績不振の脱却に向けた構造改革の一環で、売り場面積を半分にしてスリム化を図る。残りの売り場は家電量販店大手ヨドバシホールディングスが運営する方針という。
コロナの影響が残る22年度において、伊勢丹新宿本店、阪急本店、JR名古屋高島屋といった東名阪の一番店が過去最高売上高を達成した。けん引したのは、ラグジュアリーブランド、時計・宝飾品、美術品などの高額品だった。これはどこの百貨店も同じで、西武池袋本店も高額品の販売や富裕層を対象にした外商事業の好調が続く。同店は中長期的なMD戦略として高額品部門の増床を掲げていた。
セブン&アイは昨年11月、そごう・西武を米投資会社フォートレス・インベスメント・グループに約2000億円で売却する契約を結んだ。フォートレスは百貨店再建のパートナーとして家電専門店大手のヨドバシホールディングス(HD)を迎え入れた。しかしフォートレス・ヨドバシ連合が旗艦店の西武池袋本店の大部分にヨドバシカメラを入れる改装案を打ち出すと、百貨店関係者が反発し、条件交渉が暗礁に乗り上げてしまう。今年に入って売却時期は2度も延期され、ついには無期限延期になった。
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