中東に位置するトルコの通貨リラを取り巻く環境を分析し、トルコリラの今後の値動きを予想した。
執筆:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也 X(Twitter)
利下げへの慎重姿勢はいくぶん後退の模様
トルコ中銀は23日、政策金利を250bp(2.50%ポイント)引き下げて45.00%にすると発表した。利下げは2会合連続で、利下げ幅は市場の予想通りだった。中銀は声明で「インフレ期待と値上げの動きは抑制傾向にあるが、依然としてディスインフレ(物価鈍化)の過程に対するリスクとなっている」とした上で、「インフレ率の持続的な鈍化により物価安定が達成されるまで引き締めスタンスを維持する」と表明。利下げを慎重に進める考えをあらためて示した。ただ、前回の声明では、引き締めスタンスについて「毎月のインフレ率の基調が大幅かつ持続的に低下し、インフレ期待が予測された予測範囲になるまで」維持するとしていたことを考えると、利下げに対する慎重姿勢はいくぶん後退した印象だ。なお、市場ではトルコ中銀が年末までに政策金利を30.00%前後まで引き下げるとの見方が多い。次の金融政策決定会合は3月6日に行われる。その前の2月7日にはカラハン総裁が四半期に一度のインフレ報告を行ない、最新のインフレ予測を発表する予定。
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株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
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トルコリラの焦点 2会合連続利下げ慎重姿勢はやや薄れた印象も FX予想
中央銀行への圧力を強めるトルコのエルドアン大統領の姿勢に対し、格付け大手フィッチ・レーティングスは22日、「金融政策の独立性が一段と損なわれ、トルコの国家としての信用力にさらに圧力がかかる」と警告した。同日の外為市場でトルコリラは急落。対ドルでは一時1ドル=4.68リラ台までリラ安が進み、最安値を更新した。
結論:トルコリラは、実質金利のプラス転換や下落率の低下により、長期投資の対象として魅力が増している。特にスワップポイント収入を目的とした投資において、リスク・リターンのバランスが改善。ただし、政治リスクや外部環境の変化には注意が必要。
トルコリラ建て公募債の為替差損も膨らんでいる。下のグラフは、現存するリラ建て公募債約3300億円のうち、為替差損が20%以上発生しているものが、ざっと2500億円レベルに膨らんでいることを示している。
米長期金利と米ドルの上昇を背景に、トルコやアルゼンチンなど一部の新興国の通貨が下落している。この傾向が続いた場合、新興国にどのような影響をもたらすか、21日に発表したQUICK月次調査<外為>で聞いたところ、「資金流出や通貨下落は一部の新興国に限定される」が7割を占め、「資金流出や通貨下落が新興国全体に広がる」が23%となった。
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