初任給既存社員やる気そぐ恐れ
新卒の初任給を引き上げる際、企業は既存社員の士気を維持しつつ、公平性と透明性を確保することが重要です。次に企業が取るべき対策について見ていきます。
労務行政研究所の「2023年度新入社員の初任給調査」(東証プライム上場企業157社の速報集計)によると、初任給を引き上げた企業は70.7%で、22年度の41.8%から30ポイント近く上昇しました。このことからも、初任給の引き上げに対する企業の意欲はますます強まっていることが伺えます。
住宅・不動産業界でも、大手企業を中心に初任給の賃上げと基本給ベースアップ(ベア)の動きが見られます。
初任給の上昇についてどう思いますか?
実質賃金がなかなか上がらない中、初任給をアップする企業が増えています。
しかし、初任給引き上げは新卒者の獲得競争力を高めるものの、既存社員のモチベーション低下や中堅層の離職リスクを高める恐れがあるのです。本記事では新卒初任給引き上げに伴うリスクと対策について解説します。
初任給を上げたのであれば、その分を既存社員の賃金から取ってこなければなりません。実際、初任給が上がった分、中堅やベテラン層の賃金は据え置き、もしくは実質減少しているはずです。
前項で述べたように、企業の多くは新卒初任給の引き上げに合わせて既存社員のベースアップを実施していますが、全てがそうとは限りません。特に中小企業の一部では、既存社員の待遇改善が後回しになるケースがあります。
企業の正社員1,109人に対し「初任給アップの動きについてどう思うか?」を聞いたところ、一番多い回答は「とても良い」で34.0%でした。 次に多い回答が「若手確保のため仕方ない」の33.5%であり、多くの人が初任給アップの動きを許容していると見て取れます。
ただ、高い初任給に惹かれて入社を決めても、入社後に順調に昇給できるとは言い切れません。前述したとおり、初任給を上げた分は、既存社員の賃金にしわ寄せがいくからです。
初任給の引き上げは、企業にとってメリットがある一方で、いくつかのリスクも伴います。
ここまで述べたように、企業が初任給を引き上げる動きが広がっており、経済全体に影響を及ぼしています。特に中途採用市場では、給与体系の見直しが新たな人材を惹きつけるための重要なステップとなり、既存社員のモチベーション維持にも寄与します。
(※2)一般社団法人労務行政研究所「2023年度 新入社員の初任給調査」
景気の急回復が見込みにくい以上、給与の原資が増えることは考えにくく、新卒採用に注力している企業においては「初任給は上がるのに実質賃金は上がらない」傾向は今後も続くと見られます。
年代別に見ると意外にも意見に差がなく、初任給が上がった当事者である20代も、賃金が上がらない中堅層も意見としてはズレがないようです。
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