
本日のロンドンタイムではユーロ圏と主要国の7月製造業・サービス部門購買担当者景気指数(PMI)速報値や欧州中央銀行(ECB)理事会に注目する展開となる。
独・ユーロ圏の7月製造業・サービス部門PMI速報値は6月からやや上昇の見込みとなっている。先週に発表された7月独ZEW景気指数は52.7と2022年2月以来の高い水準となった。米政権と欧州連合(EU)の通商交渉の早期妥結を楽観視していることや、独政府の投資計画による景気への期待感が要因となった。7月独製造業・サービス部門PMIは景気判断の分岐点とされる50を上回るかどうかが注目される。製造業が6月の49.7から50.0に、サービスが6月の49.0から49.5に上昇すると予想されている。
本日のECB理事会では政策金利の据え置きが見込まれている。据え置きとなれば、昨年7月以来となる。米・EUの通商交渉が正念場を迎えており、ECBも交渉結果に注目している。ラガルドECB総裁の会見も予定されており、関税の景気・物価への影響や足元のユーロ高などについての見解も注目されそうだが、米・EUの交渉を控える中、今回のECB政策イベントは無風通過する可能性が高いか。
なお、米・EU交渉に関しては、米国が輸入する大半のEU製品に15%の関税を課す内容で合意に向けて前進していると伝わった。また、EU加盟国は15%の一律関税を受け入れる用意があり、この関税率が自動車などのセクターに適用されるようにEU当局者は働き掛けているとも報じられている。EU側は合意成立を楽観しているが、最終的な合意にはトランプ米大統領の承認が必要となる。
・想定レンジ上限
ユーロドルは2・3日高値1.1810ドルや1日の年初来高値1.1829ドル。ユーロ円は16日高値173.24円。
・想定レンジ下限
ユーロドルは23日安値1.1711ドルや日足一目・転換線1.1666ドル。ユーロ円は11日安値170.81円。
(金)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
15年には 過剰財政収支是正目標である▲3%を上回る見通しである
9月に閣議決定された14年予算案では14年の財政収支見込は▲5.8%と欧州委員会の勧告に沿った形となっている。12~13年の時限的な措置としていた個人所得税及び固定資産税の引上げ等を14年も継続するものの新たな増税の予定はなく、中小企業を対象にした利益再投資の税額控除等の景気刺激策を盛り込み、景気回復による財政目標達成を見込んでいる。実際、13年7~9月期の実質経済成長率は10四半期ぶりのプラスに転じ、14年の経済成長見通しも0.5%から0.7%に上方修正された。
英国政府は、11年4月に財政責任憲章において、5年間の見通しの期間内で公的部門の構造的経常的財政収支(投資的経費を除く)を均衡化する「主目標」と15年度に公的部門の純債務残高(GDP比)を減少させる「補完的目標」を設定した。
欧州委員会のデータで構造的財政収支の改善幅をGDP比でみると、英国は09年▲9.2%から12年▲6.5%と4年間で2.7%ポイント改善しており、同期間のEU27か国平均の2.5%ポイント改善より若干早いペースで財政再建を進めていることが分かる。しかし、予算責任庁の見通し(13年3月時点)では、構造的財政収支(投資的経費を除く)の均衡化は16年度、純債務残高(GDP比)が減少に転じるのは17年度にずれ込む見込みである(図2)。
12年までのユーロ圏各国の厳しい経済情勢を受けて欧州委員会等が財政再建ペースの緩和に柔軟な態度を示したことにより、ユーロ圏では13年は12年と比べてほとんどの国で財政緊縮による景気の下押し圧力が緩和している(第1-3-34図)。具体的には、スペイン、フランス等では2年、ポルトガル等は1年、財政赤字是正期限を延長することが認められた(第1-3-35表)。こうした動きもあり、これまで厳しい財政緊縮を余儀なくされてきた南欧諸国の13年の成長見通しが改善している(第1-3-36図)。
経済見通しに係るリスクバランスは下方に偏っており、特に欧州政府債務問題が再び深刻化した場合は、世界経済にも重大な影響を及ぼす可能性がある。
8時50分に公表される日銀・企業短期経済観測調査(短観、9月調査)では、企業の景況感が全体的に悪化すると見込まれている。大企業製造業の業況判断指数(DI)の予想は13で、6月調査13と変わらず、大企業非製造業の業況判断指数(DI)の予想は32で、6月調査の33からの悪化が見込まれている。しかし、堅調な設備投資計画や販売価格引き上げの継続意向が窺える内容になれば、日銀にとっては、追加利上げの根拠となる「経済・物価が見通しに沿った経路を辿っている」との判断を裏付ける材料になる。
14年予算案では、財政収支目標(GDP比▲4.0%)を達成するため、公務員給与削減や年金改革等の歳出削減と自動車税増税等によりGDP比2.3%の財政緊縮の実施を予定しているが、14年の経済成長見通しは0.6%から0.8%に上方修正している。こうした経済情勢の改善等を受けて、一部格付け会社は11月にポルトガルの格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変更した。
先行きについては、13年11月のインフレーションレポートにおいて、経済状況の回復を受け、8月時点から経済成長の見通しを上方修正し、失業率の低下のペースについても前倒ししたものの、失業率が7.0%に達するのは最も早いシナリオでも14年10~12月期となっており66、金融緩和は当面維持されるものと考えられる。ただし、不動産価格の上昇が続いていることに加え、物価上昇率が目標である2.0%を継続的に上回っており、こうした状況には留意する必要がある。
一方で、BOEのフォワード・ガイダンスついては、物価安定のための解除条項を設定したことによりしきい値として失業率の役割が曖昧になったとの指摘や経済の余剰の解消の点から失業率7.0%がしきい値としての適切かどうかを疑問視する指摘等もある。実際、フォワード・ガイダンスを設定した後、英国の失業率は、13年6~8月の7.7%から7~9月には7.6%に低下し(前掲第1-3-30図)、BOEの8月時点の見通しよりも早いペースで低下しており、早期の利上げを見込む市場の動きがみられた。
先行きについてみると、金融市場の緊張の緩和及び財政再建ペースの減速に加え、アメリカ等の域外経済の回復に伴って輸出が増加することによって、南欧諸国等でも持ち直しの動きがみられるようになり、14年以降緩やかに回復するとみられる。国際機関等の見通しをみると、14年はプラス成長が見込まれているが、その達成は前述のとおりアメリカ等の域外経済の動向に依るところが大きいと考えられる(第1-3-48図、第1-3-49表)。
10月に公表された14年予算案では13年の財政収支赤字は▲2.4%と目標(▲4.1%)を上回り、14年も▲2.4%と目標(▲3.3%)を上回る見込みを示した(第1-3-43図)。併せて13年の成長見通しを▲4.5%から▲4.0%に上方修正し、14年は0.6%と7年ぶりのプラス成長を見込んでいる。
財政再建と並行して、マクロ経済の安定、税制改革、規制緩和、インフラ整備の4つの柱から成る成長戦略を実施しているものの、13年2月及び4月には中期的な成長見通しの弱さ等を理由に民間格付け会社が英国債の格付けをトリプルAから一段階引き下げるなど、財政再建と経済成長の両立は容易ではない。
各国の財政再建に向けた取組やECBを中心としたユーロ圏レベルでの様々な対策により、12年10月以降南欧諸国等の国債利回りやソブリンCDSは低下しており、欧州政府債務問題は落ち着いた状態であった。しかし、ギリシャに対する追加支援問題等、先行きに対する懸念は依然存在している。欧州政府債務問題が深刻化した場合は、ヨーロッパ経済全体に対する不確実性が再び高まり、企業や消費者の先行き見通しの悪化等を通じて、景気に対する大きな下押しリスクとなる。
アイルランド経済は、13年4~6月期に4四半期ぶりプラス成長となった。こうした経済の回復を受け、一般政府の財政収支は、12年はGDP比▲7.6%の赤字と目標の同▲8.6%を上回り、13年も目標である同▲7.5%を達成する見込みである(第1-3-45図)。15年には、過剰財政収支是正目標である▲3%を上回る見通しである。


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