
執筆:外為どっとコム総合研究所 為替アナリスト 中村 勉
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今週の振り返り
今週の豪ドル/円は97.02円前後で、ニュージーランド(NZ)ドル/円は88.83円前後で週初を迎えました。
週末に米国と欧州連合(EU)の間で通商協議が合意に至ったことで、前週末終値からややリスクオン気味で取引を開始しました。ただ、米国の関税政策を巡る米経済の不透明感が和らいだことで、これまで売られてきた米ドル買いが優勢となりました。豪ドルやNZドルは対米ドルでの下落幅が大きかったため、豪ドル/円やNZドル/円は下落しました。30日には豪4-6月期消費者物価指数(CPI)の結果を受けて豪ドル売りが強まりました。30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)や31日の日銀金融政策決定会合の結果を受けて、米ドル買い、円買いが強まった場面では、豪ドル/円は95.86円前後、NZドル/円は87.86円前後まで下値を拡大する場面も見られました。ただ、その後の植田日銀総裁の会見で日銀が追加利上げに消極的との見方が広がると、豪ドル/円は96.99円前後、NZドル/円は88.89円前後まで急反発しました(執筆時)。
RBNZに追加利下げ観測!
NZ準備銀行(RBNZ)は7月9日の金融政策会合で政策金利を3.25%に据え置きました。ただ、RBNZは声明で25bp(0.25%ポイント)を引き下げることが議論されたことを明らかにしています。その中で、金利を据え置いた理由として「短期的なインフレリスクを踏まえると8月まで待つことのメリットが強調された」との見解を示しました。その後、7月21日に発表されたNZ4-6月期CPIは前年比+2.7%と前期(+2.5%)からインフレは加速したものの、市場予想(+2.8%)ほどの伸びではありませんでした。来週は7日にRBNZが調査する7-9月期のインフレ調査が発表されます。市場予想はありませんが、前期(+2.29%)からインフレ予想の伸びが急激に高まっていなければ、8月20日のRBNZ会合での追加利下げ期待が高まることになりそうです。
豪ドルに関しては、来週は豪州にて豪ドル相場に大きな影響を与えそうな経済指標の発表は予定されていません。株価動向や米ドルの動向をに左右されそうです。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は、日足一目均衡表の基準線や200日移動平均線(MA)がサポートとなりそうです。一方上値では、1月7日高値の99.16円前後が目先の上値目途となりそうです。ここを上抜けると、心理的節目となる100.00円前後が意識されそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表と200MA】

予想レンジ:AUD/JPY:94.00-99.00、NZD/JPY:87.00-90.00
8/4週のイベント:
08/05 (火) 10:45 中国 7月財新サービス部門購買担当者景気指数(PMI)
08/06 (水) 07:45 NZ 4-6月期四半期就業者数増減
08/06 (水) 07:45 NZ 4-6月期四半期失業率
08/07 (木) 時間未定 中国 7月貿易収支
08/07 (木) 10:30 豪 6月貿易収支
08/07 (木) 12:00 NZ 7-9月期インフレ予想
08/09 (土) 10:45 中国 7月生産者物価指数(PPI)
08/09 (土) 10:45 中国 7月消費者物価指数(CPI)
一言コメント:
今週末の関東地方は台風が接近しています。息子は野球の合宿です。さてどうなることやら…
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外為どっとコム総合研究所 情報企画部 為替アナリスト
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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来週の為替予想 豪ドル 円
ポンドは7/21の1.3402ドルを安値に7/20の参議院選挙での与党過半数割れも想定内に収まったことを受けた対ドルでの円売りポジションの巻き戻しを軸に円全面高/ドル全面安を背景に1.3511ドルへ反発。また、7/22には日足・雲の上限を下値支持線として1.3534ドルへ上昇したほか、7/23にはEUが米国との通商交渉の決裂に備え、報復検討との報道を受けた対ユーロでのポンド買いに1.3584ドル、さらに7/24の早朝に1.3588ドルへ上伸。ただ、英7月サービス業PMIの下振れのほか、タカ派寄りの現状維持としたECB理事会を受けた対ユーロでのポンド売りに加え、7/25の英6月小売売上高が予想比下振れ1.3417ドルへ反落し1.3440ドルで取引を終えました。一方、ポンド円は7/20の参議院選挙を受けた7/21朝方にドル円が148円66銭への上昇とともに199円43銭へ上昇。しかし、ポジション調整の円買いを背景に下落に転じ、7/22発表の英6月財政赤字拡大を受けて197円44銭へ下落。その後の反発も199円08銭までに留まり、7/23に197円76銭へ下落して以降、対ドル、対ユーロでの下落が上値抑制につながり198円48銭で取引を終えました。
今週は8/12の豪中銀政策理事会の利下げ観測を巡り、7/30発表の豪4-6月期消費者物価指数や7/31発表の豪4-6月期小売売上高に注目。7/17発表の豪6月雇用統計では、就業者数が前月比0.2万人増と市場予想を大幅に下回ったことに加え、個人消費を支える役割を担うフルタイム雇用が3.82万人減、(パートタイマーが4.02万人増)と弱い結果となりました。さらに失業率も4.3%と2021年11月以来の水準へ悪化。7/8の豪中銀政策理事会では「インフレが2.5%へ継続的に向かうか否かを確認するため、より多くのデータを検証する時間的な余裕がある」との判断の下、市場予想に反し、政策金利を据え置いただけに、判断が誤りだったことになるか注目されます。そのほか、日米金融政策会合や米7月雇用統計、さらに石破首相の続投/辞任を巡る政局の行方に対する反応も含め、日足・転換線(96円53銭)を下値支持線として7/15の97円43銭を上抜けるか、転換線を上値抵抗線として基準線(95円64銭)へ下落するか注目されます。
今週発表された7-9月期の国内総生産(GDP)は前期比、前年比ともに予想を下回る伸びに留まったことで、豪州の中長期金利が低下。豪ドルも対ドルで約4カ月ぶりの安値を更新した。この結果を受け、市場では9-10日に予定されている豪準備銀行(RBA)理事会で、どのような見解が示されるのか注目している。RBAは物価上昇が緩和していることが確認されるまで政策金利を据え置くとの予想が大半で、11月の理事会でも「政策がより長期間制限的である必要、またはさらに引き締める必要があるシナリオを議論」と、利上げについても議論していた。また、ブロックRBA総裁は「コアインフレが目標を上回っており当面利下げしない」と11月末に述べている。ただ、GDPだけでなく10月の月次消費者物価指数(CPI)や今週発表されたメルボルンインスティテュートの11月インフレ指数が予想から下振れているように、インフレは抑制されつつある。タカ派だった声明文に変化が生じるかを確認することになりそうだ。なお、理事会後の11日にはハウザーRBA副総裁、12日にはジョーンズRBA総裁補佐、13日にはハンターRBA総裁補佐などの講演も予定されている。
7/20の参議院選挙で与党過半数割れの結果を受けた7/21朝方にドル円が148円66銭へ上昇したことに伴い96円76銭へ上昇。ただ、ドル円を軸に円売りポジションの巻き戻しが進む中、NZ4-6月期消費者物価指数が予想比下振れ、10月までの利下げ観測を背景に7/21のNZ円の下落とともに95円63銭へ下落。しかし、7/23朝方の日米通商交渉の合意を好感した日米欧主要株価指数の上昇とともに96円74銭、7/24には豪中銀ブロック総裁が7/17発表の6月雇用統計の下振れは想定済であり、7/30発表の4-6月期CPIは大幅な下振れが回避される見通しとの発言を受け97円04銭へ上昇。さらに、トランプ政権が通商交渉を加速させるとの思惑に加え、貿易戦争への警戒緩和への期待が豪主要産品の鉱物資源への需要増につながるとの期待が豪ドルの下値をサポート。さらに7/24には英FTSE100、ナスダック、S&Pが市場最高値を更新したリスク選好とともに97円14銭へ上昇して以降も堅調な動きを続け97円00銭で取引を終えました。
南アフリカ・ランド(ZAR)も上値の重い展開が予想される。中国人民元が1年超ぶりの安値を更新するなど、来年から始まる第2次トランプ政権に対する懸念がぬぐえず、この影響が南アにも波及する可能性が高い。米国からの経済制裁だけではなく、米中の関係悪化による中国経済の停滞は、通商パートナーでもある南アにとっては不安要素。ZARの上値を抑えそうだ。また、市場の反応は限られているが、今週発表された7-9月期GDPが非常に弱い結果だったこともZAR売り要因。来週は10日に11月卸売物価指数(PPI)、11日にCPI、12日に南ア経済研究所(BER)の10-12月期インフレ見通しなど、インフレ関連の指標が多く発表される。
今週発表される主要な英経済指標はない中、?英スターマー首相が29日まで滞在するトランプ大統領との会談で貿易を巡る新たな動きがあるか ?日米金融政策会合のほか、ドイツ/ユーロ圏/米4-6月期GDPやドイツ/ユーロ圏7月消費者物価指数、さらに、米7月雇用統計など主要指標に対する対ドル、対ユーロ、対円での反応が注目されます。こうした中、ポンドは先々の景気減速懸念や財政赤字への警戒感とともに日足・基準線/転換線/雲の上限(1.3576ドル/1.3476ドル/1.3474ドル)を巡る攻防から7/16の安値(1.3365ドル)を目指す下放れに注意が必要です。また、ポンド円は先週続いた日足・転換線(198円07銭)を巡る攻防から7/18の高値(199円97銭)を上値メド、7/22の安値(197円44銭)を下値メドとして上下いずれに放れるか注目されます。
7/20投開票の参議院選挙、昨秋の衆議院選挙に続き与党過半数割れとともに政局不透明感が意識され、7/21朝方に148円66銭へ上伸。ただ、選挙中の焦点になった消費税減税や現金給付などは法案可決の必要があり先々へ先送りされる中、米長期期金利の低下のほか、日経平均株価が44円安に留まったことから147円08銭へ反落。また、7/23午前8時過ぎに日米通商交渉の合意報道を受け、日経平均株価が1,396円高と高騰、147円95銭へ反発。一方、石破茂首相の進退を巡る報道やトランプ大統領によるパウエル議長及びFRBへの批難が繰り返されたことから上値の重さが意識され7/24には145円86銭へ下落。しかし、米新規失業保険申請件数の6週連続の改善やトランプ大統領がパウエル議長の解任を否定したことから再びドル買いが勢いを増し、ナスダック、S&Pが連日で史上最高値を更新したリスク選好とともに7/25に147円94銭へ反発し147円67銭で取引を終えました。
ユーロドルは7/21の1.1615ドルを安値に米長期金利の低下やEUと米国との通商交渉進展への期待とともに1.1717ドルへ反発し、7/22には英財務相が財政規律重視の姿勢を示したことによる対ポンドでの上昇に支えられ1.1760ドルへ上昇。さらに現状維持が見込まれる7/24のECB理事会を控え、1.17ドル台前半から半ばでの堅調を維持する中、英FT紙が米との通商交渉15%関税で合意間近と報じたほか、7/24のECB理事会でラガルド総裁が利下げを急がないとするタカ派寄りの現状維持を受け1.1789ドルへ上伸。ただ、一旦の材料出尽くしから伸び悩み、7/25にトランプ大統領がEUに50%関税の可能性を示唆し、1.1703ドルへ反落した一方、7/27のEU・米首脳会談での通商合意への期待に支えら1.1742ドルで取引を終えました。また、ユーロ円は7/20の参議院選挙で与党過半数割れとなり、ドル円の148円66銭への上昇に伴い7/21に172円84銭、7/22に172円93銭へ上昇。一方、石破政権を巡る政局不透明感が上値を抑制したものの、反落も7/22の171円37銭までに留まり、ECB理事会を経て7/25に173円61銭へ上伸し173円39銭で取引を終えました。
前回5/29の委員会で0.25%の利下げを決めたほか、声明文で成長率とインフレ見通しをともに下方修正し、政策金利のさらなる引き下げを示唆。こうした中、7/31の南ア中銀政策委員会で現状維持か追加利下げか、また、7/23に議会下院で成立した歳出法案を受けて南アの財政悪化懸念が高まるか注目されます。そのほか、日米金融政策会合や米7月雇用統計に対する反応も合わせ、日足・転換線(8円31銭)を下値支持線として7/21の8円39銭、7/18の8円41銭を目指して上昇するか、転換線を上値抵抗線として基準線(8円22銭)に向けて下落するか注目されます。
7/20の参議院選挙結果を受けた朝方のドル円を中心に円安が進行したことを受けた7/21の8円39銭を高値に、その後のポジション調整による円買い戻しとともに反落。また、7/22発表の南ア5月景気先行指数が4月から低下した一方、連立与党内で2番目に勢力を持つ民主同盟が、成立前最後の歳出法案に賛成票を投じると表明した強弱材料を受け8円39銭から8円31銭までの反落に留まる堅調を継続。また、7/23の日米関税交渉が合意し、米政権の関税政策に対する不透明感が後退したものの、7/25にかけて南ア主要輸出品である金相場が3日続落したほか、南ア全株指数も7/25に大幅安と続落したことから8円29銭へ下落し8円32銭で取引を終えました。
豪ドルは上値の重い動きとなりそうだ。ただ、12月に入り流動性が悪化していることや、RBAの声明文次第でボラタイルに動く可能性があることには注意したい。



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