従業員退職で倒産 前年比16倍に
2025年上半期(1-6月)の「円安」関連倒産は33件(前年同期比3.1%増)で、上半期では2023年同期から3年連続で増加した。 負債総額は889億9,600万円(同696.3%増)で、前年同期の約8倍に急増した。2月に洋紙製造の丸住製紙(株)(愛媛、負債590億円、民事再生法)、5月にスポーツ・カジュアル靴・雑貨類販売の(株)ロイヤル(愛知、負債83億3,000万円、民事再生法)など、前年同期は2件だった負債10億円以上が9件と大幅に増え、負債が膨らんだ。
ただ、深刻な働き手不足を背景に人材流動性が高まるなか、満足に賃上げされないことや、待遇改善に消極的な経営に嫌気がさした役員や従業員が退職するなど、「待遇改善をしないことへのリスク」が中小企業を中心に高まっている。転職市場を通じて、賃上げによって良い人材を高給で囲う動きが広がるなか、満足に賃上げされないことを理由に従業員が辞めることで経営が行き詰まる「賃上げ難倒産」が、2025年に増加する可能性が高まっている。
2024年度(4-3月)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が1万144件(前年度比12.0%増)、負債総額は2兆3,738億7,900万円(同3.6%減)だった。 件数は、3年連続の増加で、2013年度(1万536件)以来、11年ぶりに1万件を上回った。 負債総額は、2022年度より3年連続で2兆円台で推移した。
足元では、長期化する物価上昇に苦慮する従業員から賃上げを求める声が強まっている。こうした流れを受け、継続的な賃上げを検討する動きが大企業から中堅・中小企業にも広がってきた。他方、賃上げしたくても収益力が乏しく「無い袖は振れない」中小企業も多く、賃上げに対する対応の二極化が進んでいる。
2024年度の地区別件数は、2年連続で9地区すべてで前年度を上回った。 北海道271件(前年度比0.7%増)と東北567件(同15.9%増)、関東3,661件(同8.5%増)、中部1,230件(同14.1%増)、近畿2,645件(同13.9%増)、中国445件(同7.7%増)、九州908件(同19.6%増)が、それぞれ3年連続で前年度を上回った。 このほか、北陸204件(同20.0%増)と四国213件(同17.6%増)が、それぞれ2年連続で前年度を上回った。 増加率が最も大きい北陸は、サービス業他74件(同57.4%増)、建設業44件(同25.7%増)、製造業37件(同105.5%増)など4産業で前年度を上回った。また、九州ではサービス業他296件(同12.9%増)、建設業172件(同5.5%増)、小売業127件(同58.7%増)など8産業、四国では建設業48件(同37.1%増)、サービス業他47件(同2.1%増)、製造業41件(同51.8%増)など8産業で、それぞれ前年度を上回った。


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