
執筆:外為どっとコム総合研究所 為替アナリスト 中村 勉
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今週の振り返り
今週の豪ドル/円は95.12円前後で、ニュージーランド(NZ)ドル/円は86.99円前後で週初を迎えました。
前週末に発表された米7月雇用統計の結果を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利下げ観測が高まり、週明けも米ドルが売られやすい地合いとなりました。米ドル/円が下落した影響もあり、豪ドル/円は94.91円前後、NZドル/円は86.67円前後まで下落する場面も見られました。その後は対円でのドル売りが一服したことで豪ドル/円やNZドル/円は上昇に転じました。また、7日に発表された豪州の6月貿易収支が市場予想や前月を大幅に上回ったことも豪ドル/円の支えとなりました(執筆時)。
RBAは今度こそ利下げ?
来週は12日に豪準備銀行(RBA)が金融政策会合を開催し政策金利を発表します。RBAは前回の会合(7月7-8日開催)で、市場が25bp(0.25%ポイント)利下げ予想する中で、政策金利を3.85%に据え置きました。声明では消費者物価(CPI)が持続的に2.5%(RBAのインフレ目標である2~3%の中央値)に向かうことを確認するために、もう少し情報を待つことが有益である」との認識を示しました。前回会合時の最新のCPIは5月の月次CPIで前年比+2.1%まで低下していました。ただ、ブロックRBA総裁は「月次CPIは変動が大きい」「第2四半期のCPIがわれわれの考える通りになり、低下し続けるならば、われわれの道筋の正しさを証明するものとなる」と語り従来通り四半期CPIを重視する姿勢を示しました。7月30日に発表された豪4-6月期CPIは前年比+2.1%、CPIトリム平均は2.7%へとともに1-3月期(+2.4%、+2.9%)からインフレの勢いは鈍化を示しています。RBAの6月時点でのインフレ予測はCPIが+2.1%、CPIトリム平均は+2.6%でした(5月金融政策報告)。CPIトリム平均は予想を若干上回っていますが、RBAの示す2.5%に向けて持続的に向かっていることを示しています。市場は今度こそRBAは25bpの利下げを実施することを完全に織り込んでいます。予想通りの利下げとなれば、注目は次回利下げへの距離感となります。RBAの声明や投票結果(政策支持に相違が出た場合)、そしてブロックRBA総裁の発言から次の利下げ時期に対するヒントを探すことになるでしょう。また、今回の会合では最新の金融政策報告が公表されます。
また、豪州では13日に4-6月期賃金指数(WPI)が発表されます。豪4-6月期賃金指数の市場予想は前年比+3.3%でRBAの金融政策報告での予測通り1-3月期の+3.4%から僅かに低下となっています。予想以上に低下していた場合にはRBAの9月利下げ観測が高まることになりそうです。14日発表の豪7月雇用統計も同様です。過去2カ月の豪雇用統計を見ると、雇用者増加の勢いは減速し、失業率は2021年11月以来となる4.3%に悪化しています。労働市場の減速を示す結果となるか注目です。
豪ドル/円のテクニカル分析
豪ドル/円は来週早々にも日足一目均衡表の転換線が基準線を上から下へ抜けそうです。ローソク足が雲の上で推移しているため、強いシグナルにはならない可能性もありますが、モメンタムはやや弱気に傾きそうです。目先の下値目途は今週4日安値(94.91円前後)となりそうです。その下の水準では雲上限が意識されそうです。一方上値では、7月15日高値の97.44円前後が目先の上値目途となりそうです。ここを上抜けると、次の上値目途として1月24日高値の98.76円前後が意識されそうです。
【豪ドル/円 日足・一目均衡表と200MA】

予想レンジ:AUD/JPY:94.50-98.50、NZD/JPY:86.50-89.50
8/11週のイベント:
08/12 (火) 10:30 豪 7月NAB企業景況感指数
08/12 (火) 13:30 豪 準備銀行(RBA)、政策金利発表
08/13 (水) 10:30 豪 4-6月期四半期賃金指数
08/14 (木) 10:30 豪 7月新規雇用者数
08/14 (木) 10:30 豪 7月失業率
08/15 (金) 11:00 中国 7月小売売上高
08/15 (金) 11:00 中国 7月鉱工業生産
一言コメント:
今週は群馬県で史上最高気温が観測されるなど、各所で物凄い暑さとなりました。私も、子供のスイミングの送り迎えに自転車で外出して具合が悪くなりました。皆さんも日中の外出時はくれぐれもお気を付けください。
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外為どっとコム総合研究所 情報企画部 為替アナリスト
中村 勉(なかむら・つとむ)
米国の大学で学び、帰国後に上田ハーロー(株)へ入社。 8年間カバーディーラーに従事し、顧客サービス開発にも携わる。 2021年10月から(株)外為どっとコム総合研究所へ入社。 優れた英語力とカバーディーラー時代の経験を活かし、レポート、X(Twitter)を通してFX個人投資家向けの情報発信を担当している。
経済番組専門放送局ストックボイスTV『東京マーケットワイド』、ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。
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来週の為替予想 豪ドル 円
7/28の1.3453ドルを高値にEUと米国との通商合意を受けて、ポンドは対ユーロで下落。さらに、EUが米国との不均衡な合意を嫌気したユーロドルの下落に伴い1.3352ドルへ下落しました。7/29こそ1.33ドル台前半での小幅な動きを続け、7/30発表の米4-6月期GDPが予想以上に改善、加えて、パウエル議長のタカ派寄り会見を含むFOMCでの現状維持を受けて1.3228ドルへ一段安。さらに、7/31発表の米6月PCEコアデフレーターの上昇などを受け、8/1に1.3142ドルへ下落しましたが、米7月雇用統計、5-6月分の大幅な下方修正による米長期金利の低下とともに1.3310ドルへ反発し1.3279ドルで取引を終えました。一方、ポンド円は7/28の199円22銭を高値に、その後のポンドドルの下落に伴い7/31にかけて196円97銭へ下落後、ドル円の150円台後半への反発に伴い199円52銭へ反発。しかし、米7月雇用統計後の円買いとともに195円34銭へ急落し195円73銭で取引を終えました。
今週8/7の英中銀政策委員会では、前回6月の会合で示された「賃金上昇の著しい減速予想」「労働市場からディスインフレ圧力の兆候」の方針とともに政策の行方が注目されます。一方、トランプ大統領による労働省統計局長官の解任やパウエル議長への度重なる批判が米国やドルに対する信認低下を招くか市場の反応とともに、日足・転換線(1.3360ドル)を上抜けるか、転換線を上値抵抗線として4/11以来の1.3000ドル割れを目指して一段安となるか注目されます。また、ポンド円は、先週末の米雇用統計を受けたFRBの9月利下げ再開観測や英中銀政策委員会の結果次第では日足・雲の上限(196円07銭)を上値抵抗線として6/19の安値(194円02銭)を目指して下げ足を加速するか注目されます。
豪ドルは上値の重い動きとなりそうだ。ただ、12月に入り流動性が悪化していることや、RBAの声明文次第でボラタイルに動く可能性があることには注意したい。
8/5発表の7月経済PMIに対する市場の反応に加え、8/7から発動予定の新たな相互関税が、南アに対して従来通り30%の高関税が適用されると見込まれます。また、米国がアフリカ・サブサハラ諸国に対して認めている特恵関税制度「アフリカ成長機会法(AGOA)」の有効期限が9月末に迫っていることも懸念材料となっています。加えて、南ア中銀の緩和政策継続や、ドル円を軸に円買い圧力の再燃といった要因もランド円の下押しにつながりかねず、上値の重い展開が予想されます。一方、先週末の米7月雇用統計で5-6月分が大幅に下方修正され、米経済指標全体への信頼性に対し、市場に不安が生じつつあること、トランプ大統領が労働省統計局長官の解任という強硬な姿勢を示したことを受けて、ドルおよび米国資産への信頼が一時的に低下する可能性も否定できません。こうした中、ランド円は、日足・転換線や基準線(8円27銭/8円23銭)を上値抵抗線として、日足・雲の上限(8円09銭)を下抜け、節目の8円00銭割れを目指す軟調な動きとなるか注目されます。
7/28のEUと米国との通商合意が好感され、豪ドル円は97円29銭の高値を付けました。しかし、7/30発表の豪4-6月期CPIやFOMCを控え、7/15-16の高値(97円43銭/97円32銭)を前に上値が重くなり、7/29は96円台後半を中心に小幅な値動きにとどまりました。7/30発表のCPIが市場予想を下回ったことで、8/12の豪中銀政策理事会での利下げが確実視され、95円96銭へ下落しました。ただ、その後のFOMCでのタカ派寄りな現状維持、さらに日銀政策会合後の会見で植田総裁が利上げに慎重な姿勢を示したことを受け、ドル円が150円84銭まで上昇。これに連れ、豪ドル円も97円00銭、さらに8月1日には97円07銭まで反発しました。しかし、8/2の米7月雇用統計発表後には円買いが強まり、豪ドル円は95円11銭へ下落し、95円41銭で取引を終えました。
7/15-16の高値(97円43銭/97円32銭)や7/28の高値(97円29銭)、さらに昨年7月の高値(109円37銭)から今年4月の安値(86円05銭)までの下落幅の50%戻し水準である97円71銭が、目先の上値抵抗線として意識されています。こうした中、ドル円の上昇が一服し、加えて来週8/12の豪中銀政策理事会での利下げ観測が重石となり、豪ドル円に下押し圧力がかかりやすい一週間になると予想されます。こうした中、日足・転換線および基準線(96円23銭/95円70銭)を回復できない状況が続くようであれば、5/23以降の下値支持線となっている50日移動平均線(94円90銭)を下抜け、日足・雲の上限(93円90銭)に向けて一段の調整が進む可能性に注目が集まります。
南アフリカ・ランド(ZAR)も上値の重い展開が予想される。中国人民元が1年超ぶりの安値を更新するなど、来年から始まる第2次トランプ政権に対する懸念がぬぐえず、この影響が南アにも波及する可能性が高い。米国からの経済制裁だけではなく、米中の関係悪化による中国経済の停滞は、通商パートナーでもある南アにとっては不安要素。ZARの上値を抑えそうだ。また、市場の反応は限られているが、今週発表された7-9月期GDPが非常に弱い結果だったこともZAR売り要因。来週は10日に11月卸売物価指数(PPI)、11日にCPI、12日に南ア経済研究所(BER)の10-12月期インフレ見通しなど、インフレ関連の指標が多く発表される。
今週発表された7-9月期の国内総生産(GDP)は前期比、前年比ともに予想を下回る伸びに留まったことで、豪州の中長期金利が低下。豪ドルも対ドルで約4カ月ぶりの安値を更新した。この結果を受け、市場では9-10日に予定されている豪準備銀行(RBA)理事会で、どのような見解が示されるのか注目している。RBAは物価上昇が緩和していることが確認されるまで政策金利を据え置くとの予想が大半で、11月の理事会でも「政策がより長期間制限的である必要、またはさらに引き締める必要があるシナリオを議論」と、利上げについても議論していた。また、ブロックRBA総裁は「コアインフレが目標を上回っており当面利下げしない」と11月末に述べている。ただ、GDPだけでなく10月の月次消費者物価指数(CPI)や今週発表されたメルボルンインスティテュートの11月インフレ指数が予想から下振れているように、インフレは抑制されつつある。タカ派だった声明文に変化が生じるかを確認することになりそうだ。なお、理事会後の11日にはハウザーRBA副総裁、12日にはジョーンズRBA総裁補佐、13日にはハンターRBA総裁補佐などの講演も予定されている。
ユーロドルは7/28にEUと米国との通商交渉合意を好感し、1.1770ドルへ上昇。しかし、7/24の1.1789ドルを前に伸び悩み、合意内容が欧州経済により大きな打撃をもたらすとの批判を受けたことから、1.1585ドルへ下落。その後、7/29発表の米7月消費者信頼感指数、7/30発表の米4-6月期GDPが予想を上回ったほか、FOMCでタカ派寄りの現状維持を決めたことを受け、6/10以来の1.1402ドルへ下落。ただ、8/1発表の米7月雇用統計で、5-6月分の就業者数の大幅な下方修正を受け、発表前の1.1392ドルから1.1597ドルへ急伸し、1.1586ドルで取引を終えました。一方、ユーロ円は対ドルに伴い7/28の173円90銭を高値に、7/31にかけて7/3以来の169円73銭へ下落。その後、8/1にドル円が150円92銭への上昇に伴い172円39銭へ反発。しかし、米7月雇用統計を受けたドル円の急落に伴い170円29銭へ下落した一方、ユーロドルの上昇に支援され170円78銭で取引を終えました。



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