
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年8月8日 14時06分
米FRB理事後任はユーロを下支え、ポンドは秋ごろに売りタイミング到来を期待
ユーロ/円・ポンド/円は下げ渋る
ユーロ/円、ポンド/円は小幅に切り返す。米国の労働市場の鈍化を受けた円高の流れが一服して米ドル/円が下げ渋ったことに連動し、ユーロ/円は169.818円から172.165円、ポンド/円は195.011円から198.021円までの戻りを試しました。ポンド/円については、英中銀が5対4の僅差で利下げを判断したことで、中銀の利下げペース加速の期待が後退したことも、サポート材料となりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ポンドは、秋の英予算が次の材料に
米国のクーグラーFRB理事の後任人事を巡る動きとして、大統領経済諮問委員会のミラン委員長が指名されました。トランプ米大統領は、ミラン氏の任期が終了する来年1月までに、クーグラー理事の正式な後任者の選定を継続するとしています。このため、ミラン氏はFRBとトランプ大統領とのパイプ役を担う可能性があると言えるでしょう。
こうした点から、トランプ大統領によるFRBへの影響力が強まることで、中央銀行の独立性が脅かされるとの懸念が広がり、米ドル安が進行する可能性があります。これにより、ユーロを支える展開が期待されます。ただし、多くの投資家や政府関係者が夏季休暇を取得する時期でもあるため、市場の動意は限定的となるかもしれません。
一方、英国ではイングランド銀行(英中銀)によるタカ派的な利下げ姿勢を受けて、11月の利下げ織り込み度は7割程度まで低下しており、目先ではポンドが下げづらくなった印象です。当面は他通貨の動向に左右されながらも、底堅い展開が見込まれそうです。
今後注目されるイベントは、英国政府による秋の予算案提出です。財政健全化に向けて大型増税が実施されれば、英国経済の減速が懸念され、イングランド銀行の成長・インフレ見通しにも変化が生じる可能性があります。その場合、再び利下げペースの加速が市場で意識され、ポンドの上値を抑える展開となることも考えられるでしょう。
秋の予算案発表が近づくタイミングでは、ポンドの売り仕掛けを検討したいところですが、それまでは流れに逆らわず、短期売買を心掛けたいところです。
ユーロ/円、ポンド/円、どちらも両にらみ(テクニカル分析)
ユーロ/円は、173.893円でピークアウトした感はありますが、直近の上昇の起点となった5月23日安値161.083円からの上昇幅の38.2%押し水準となる169.00円レベルで下げ止まっている点で、地合いは大きく悪化していないとも考えられます。目先は、戻りを試す流れが見込まれますが、この場合、8月1日高値の172.383円を突破できるかが着目されます。ここを抜けると短期的なダブルボトム形成から174.00を目指す期待が高まり、168.00円付近を目指す展開が見通せそうです。
一方、ポンド/円は急落後にすぐさま水準を戻したチャート形状から、底堅さが窺えます。低下中の21日線付近に差しかかっていますので、このレベルを無事に通過できるかどうかが、短期的な着目ポイントと考えています。このレジスタンスを突破できれば、200円に向けて下値を切り上げていく一方、同水準でもたつき戻り売りに押されれば、調整圧力から195.00円付近まで押し戻される展開も想定できそうです。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:169.000-175.000
【ポンド/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:195.000-201.000
8/11 週のイベント:

一言コメント
経団連によれば、2025年夏のボーナスの妥結状況の加重平均は97万4000円(前年比3.44%)と、比較可能な1981年以降で過去最高だったとのことです。
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来週の為替予想 ユーロ 円
今週8/7の英中銀政策委員会では、前回6月の会合で示された「賃金上昇の著しい減速予想」「労働市場からディスインフレ圧力の兆候」の方針とともに政策の行方が注目されます。一方、トランプ大統領による労働省統計局長官の解任やパウエル議長への度重なる批判が米国やドルに対する信認低下を招くか市場の反応とともに、日足・転換線(1.3360ドル)を上抜けるか、転換線を上値抵抗線として4/11以来の1.3000ドル割れを目指して一段安となるか注目されます。また、ポンド円は、先週末の米雇用統計を受けたFRBの9月利下げ再開観測や英中銀政策委員会の結果次第では日足・雲の上限(196円07銭)を上値抵抗線として6/19の安値(194円02銭)を目指して下げ足を加速するか注目されます。
2028年4月のユーロ円見通し。当月始値 204.66、最低 202.87、当月最高 209.05。平均 205.64。月末 205.96。変更 0.6%。
2028年11月のユーロ円予想。当月始値 204.68、最低 204.68、当月最高 213.98。平均 208.54。月末 210.82。変更 3.0%。
2027年10月のユーロ円見通し。当月始値 192.00、最低 187.99、当月最高 193.71。平均 191.14。月末 190.85。変更 -0.6%。
2029年8月のユーロ円見通し。当月始値 220.04、最低 215.07、当月最高 221.63。平均 218.77。月末 218.35。変更 -0.8%。
2028年1月のユーロ円予想。当月始値 194.95、最低 194.95、当月最高 203.81。平均 198.63。月末 200.80。変更 3.0%。
先週の日米中銀会合では金融政策の方向性の違いが改めて強調されました。しかし、雇用統計を受けて9月利下げ観測が急速に高まるとともに、日米金利差拡大が一服。加えて、トランプ政権下で進められた政府効率化策による人員削減の影響で、労働省統計局のデータ収集能力が低下しているとの指摘もあり、米経済指標全体への信頼性に対し、市場に不安が生じつつあります。さらに、トランプ大統領が再三に渡りパウエル議長を批判し、加えて労働省統計局長官の解任という強硬な姿勢が示されたことを受けて、ドルおよび米国資産への信頼が一時的に低下する可能性とともに株式・債券・為替の「トリプル安」につながる懸念も否定できません。こうした中、8/5の米7月ISM非製造業景気指数や6月貿易収支、そして8/5-7の米3年債・10年債・30年債の入札動向に注目が集まります。そのため、日足・転換線(148円37銭)が上値抵抗線として意識され、基準線(146円78銭)を下抜けるか、今後の下値調整の進行を見極める上での重要なポイントとなります。
2029年5月のユーロ円予想。当月始値 216.79、最低 216.79、当月最高 224.50。平均 219.82。月末 221.18。変更 2.0%。
2028年9月のユーロ円予想。当月始値 205.55、最低 205.55、当月最高 214.18。平均 209.07。月末 211.01。変更 2.7%。
2029年2月のユーロ円見通し。当月始値 213.46、最低 213.46、当月最高 223.16。平均 217.49。月末 219.86。変更 3.0%。
先週発表された米7月雇用統計で、過去2ヵ月分が大幅に悪化しFRBの利下げ観測が急速に強まりました。ユーロドルは、日足・基準線(1.1607ドル)、さらに5/29と7/17の安値(1.1210ドル/1.1557ドル)を結んだラインと交差する1.1689ドルを回復するか注目されます。今週は8/7発表のドイツ6月鉱工業生産のほか、8/5の米7月ISM非製造業景気指数や6月貿易収支や8/5-7の米債入札動向のほか、8/7の英中銀政策委員会に対する対ポンドの反応が焦点となります。また、トランプ大統領による米労働省統計局長官の解任や米経済指標への不信感がドル売り圧力を高めるか注目されます。一方、ユーロ円は、先週末の米雇用統計を受けて米経済の先行きに対する警戒感とともに先週、史上最高値を更新したナスダックやS&Pの上昇が一服。欧米の主要株価指数やアジア株にも株安の連鎖が波及する可能性があり、リスク回避的な円買いが強まるか焦点となります。そのため、日足・転換線や基準線(171銭81銭/171円18銭)を上値抵抗線として50日移動平均線(168円72銭)までの調整が進むか注目されます。
7/28の1.3453ドルを高値にEUと米国との通商合意を受けて、ポンドは対ユーロで下落。さらに、EUが米国との不均衡な合意を嫌気したユーロドルの下落に伴い1.3352ドルへ下落しました。7/29こそ1.33ドル台前半での小幅な動きを続け、7/30発表の米4-6月期GDPが予想以上に改善、加えて、パウエル議長のタカ派寄り会見を含むFOMCでの現状維持を受けて1.3228ドルへ一段安。さらに、7/31発表の米6月PCEコアデフレーターの上昇などを受け、8/1に1.3142ドルへ下落しましたが、米7月雇用統計、5-6月分の大幅な下方修正による米長期金利の低下とともに1.3310ドルへ反発し1.3279ドルで取引を終えました。一方、ポンド円は7/28の199円22銭を高値に、その後のポンドドルの下落に伴い7/31にかけて196円97銭へ下落後、ドル円の150円台後半への反発に伴い199円52銭へ反発。しかし、米7月雇用統計後の円買いとともに195円34銭へ急落し195円73銭で取引を終えました。
7/28のEUと米国との通商合意が好感され、豪ドル円は97円29銭の高値を付けました。しかし、7/30発表の豪4-6月期CPIやFOMCを控え、7/15-16の高値(97円43銭/97円32銭)を前に上値が重くなり、7/29は96円台後半を中心に小幅な値動きにとどまりました。7/30発表のCPIが市場予想を下回ったことで、8/12の豪中銀政策理事会での利下げが確実視され、95円96銭へ下落しました。ただ、その後のFOMCでのタカ派寄りな現状維持、さらに日銀政策会合後の会見で植田総裁が利上げに慎重な姿勢を示したことを受け、ドル円が150円84銭まで上昇。これに連れ、豪ドル円も97円00銭、さらに8月1日には97円07銭まで反発しました。しかし、8/2の米7月雇用統計発表後には円買いが強まり、豪ドル円は95円11銭へ下落し、95円41銭で取引を終えました。
2027年12月のユーロ円見通し。当月始値 196.58、最低 192.03、当月最高 197.87。平均 195.36。月末 194.95。変更 -0.8%。
2028年6月のユーロ円見通し。当月始値 201.24、最低 193.78、当月最高 201.24。平均 198.25。月末 196.73。変更 -2.2%。


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