
本日のニューヨーク為替市場では、複数の米経済指標で足もとの景気動向を確かめながら、米金利の上下にドル相場はついていくだろう。なお、週引けを控えた時間帯(日本時間16日4時30分頃から)に米露首脳会談が予定されている。
NY序盤に発表される7月米小売売上高(予想:前月比0.5%/自動車を除く前月比0.3%)は、プラス幅が前回からやや縮小見込み。8月ニューヨーク連銀製造業景気指数も前月から下振れ予想だ。7月鉱工業生産が前月比で横ばい予想と、全般的に指標結果への期待感は弱めだ。
昨日はベッセント米財務長官が、13日の発言は米連邦準備理事会(FRB)に利下げを要求したわけではないと述べた。しかしながら財務長官は、中立水準が現行金利より1.5%低いと再び指摘。9月米連邦準備理事会(FRB)で0.5%の引き下げは適切との考えを改めて示した。本日の経済データがさえないようだと、トランプ政権の利下げ圧力は一層高まることが予想される。
現物の米株相場が寄り付いた後、ミシガン大調べの8月消費者態度指数(速報値、予想:62.0)が発表予定。前回から若干の改善見込みだが、こちらは1年先や5-10年先の期待インフレ率にも注目したい。先月の速報値も、それぞれが予想以上に低下していたことがドル売りを誘発した。前回7月の期待インフレ率(確報値)は1年先が4.5%、5-10年先が3.4%だった。
昨日の7月米卸売物価指数(PPI)はトランプ関税の影響が色濃く反映され、市場予想を大幅に上回った。12日の発表直後はドル売りで反応した同月消費者物価指数(CPI)も、「コア前年比」は2カ月連続で上昇し、5カ月ぶりに3%台を回復している。インフレの観点からは今のところ、(市場はほぼ織り込んでいるものの)早期利下げを裏付ける材料に乏しいとも言える。そういったなか本日の期待インフレ率次第では、来週に向けたドル相場の方向性が示されるかもしれない。
想定レンジ上限
・ドル円、昨日高値147.96円
想定レンジ下限
・ドル円、7月10日安値145.76円
(小針)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
日銀は0.25%の利上げを行い 声明でインフレ見通しを引き上げた
しかし、その時期については海外の景気動向、特に米国経済の見通しが重要視される可能性がある。3月のミシガン大学消費者態度指数(速報値)は57.9と、ブルームバーグの市場予想63.0を下回り3ヶ月連続で消費者マインドが低下した。先行景況感も54.2と、インフレ懸念が意識された2022年7月以来の低水準へ落ち込んだ。
そのほか、中国では1月製造業PMIが発表予定。市場予想は前月並みの50.1と、3カ月連続で好不況の分岐点である50を超える見通しとなっている。結果に注目したい。
予想レンジの下限は、昨日相場をサポートした50日線を想定。この移動平均線は現在、146.45レベルにある。ベッセント米財務長官は14日、前日にブルームバーグテレビで述べた自身の利下げ見通しの発言を軌道修正してきた。短期金融市場では12月の政策金利の予想水準が3.7%を割り込む場面が見られたが、現在は3.7%台へ再び上方修正される状況にある。強い7月PPIも重なり利下げ期待が後退している状況を考えるならば、ドル円が下値をトライしても146円台を維持すると予想する。
パウエルFRB議長は7日の講演で、労働市場の底堅さに言及し米国経済は良好な状態にあると指摘した。同時に先行きの不確実性が高まっていることにも触れ、トランプ米政権が推し進める政策が経済にもたらす影響が判明するまで利下げを急がない姿勢を示した。 だが、米国市場では景気懸念が意識されリスク回避ムードが漂う。安全資産のゴールドは初の3,000ドル台へ到達した。FOMC参加者が最新の見通しで経済の成長率を下方修正する場合は市場参加者の景気懸念を高める要因になり得る。米金利の低下と米ドル安を警戒したい。
政策金利の見通し(ドット・プロット)も米金利と米ドルの変動要因となろう。現時点で短期金融市場では、25年末の政策金利の予想水準を3.7%前後とみている。一方、FOMC参加者は昨年12月時点で3.9%と予想している。経済の見通しに加えて、政策金利の見通しも下方修正される場合は、インフレの鈍化だけでなく景気の減速も利下げの理由となる、との思惑が外為市場で強まることが予想される。このケースでは、米ドルの急落を警戒したい。
3月会合では、政策金利の据え置きが予想される。よって今回の焦点は今後の利下げ方針となろう。この点を見極める上で重要な材料となるのが、FOMC参加者による最新の見通しである。
本日は、前週末の日銀の利上げに対する株式市場の動きを確認しながらの展開になるか。日銀は0.25%の利上げを行い、声明でインフレ見通しを引き上げた。一方、植田日銀総裁は会見で「今回の利上げの影響がどのように出てくるかを確かめつつ、今後の進め方を決めたい」などと発言したことで、日銀の早期追加利上げ期待をけん制した格好となっている。
インフレ期待は金融戦略を形成する上で極めて重要であり、そのため今後の報告が注視されることになる。 投資家や経済関係者は、経済の見通しや戦略を適宜調整する必要がある。


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