
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年8月15日 13時40分
ドル円下方向を模索も底割れは回避か、パウエル議長は柔軟性をアピール?
米ドル/円、147円中心に荒い値動き
米ドル/円は明確な方向性を欠く展開。米7月消費者物価指数(CPI)は食品・エネルギーを除いたコアCPIは前年比3.1%となり、伸びが加速しました。ただ、財のインフレが落ち着いていたことから、市場では9月の利下げに支障はないとの受け止め方が優勢でした。また、ベッセント米財務長官が「0.50%利下げも可能」と語ったほか、日銀に対しては「後手に回っている」と述べ、利上げを促す姿勢を示しました。これにより、日米金利差の縮小が意識されました。これらを受けて、米ドル/円は米CPI発表前に148.515円まで上昇し、その後、146.211円まで下落しました。しかしながら、7月の米卸売物価指数が3年ぶりの大幅な伸びを示すと、インフレも無視できないのではとの見方から米ドル安の流れに調整が入り、米ドル/円は148.00円手前まで反発しました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
FRB議長講演通過でも方向性定まらない可能性も
来週の米ドル/円も荒っぽい値動きとなる可能性があります。8月下旬(今年は21~23日)に開催されるジャクソンホール会合では、FRB議長による講演が恒例となっており、金融政策の次の行動を示唆する場として注目されています。今年は22日23時に講演が予定されています。
5月・6月分のNFP(非農業部門雇用者数)が合計25.8万人下方修正されたことで、雇用市場の鈍化が意識される一方、足元のインフレ指標では企業による価格転嫁の兆しも見られています。こうした新たな経済データを踏まえ、7月30日のFOMC後の会見で示された「インフレリスク対策として現行のスタンスは適切」「雇用市場が最大雇用に近いことを幅広い指標が示唆している」との認識に変化があるかどうかが焦点となります。
9月FOMCの選択肢としては、利下げなし、0.25%利下げ、0.50%利下げの3案が想定されていましたが、直近のインフレ指標を受けて0.50%利下げの可能性は現時点で消滅しています。今後は、市場が0.25%利下げや年内2~3回の利下げを妥当とみなすのか、それともFRBが市場の見方を押し戻すのかによって、米ドル/円の動向も左右されるでしょう。
米ドル/円は、議長講演への思惑を背景に荒い値動きとなる可能性があります。FRBは利下げに対して柔軟な姿勢を示すものの、雇用市場の軟化リスクと物価上昇リスクの双方を注視する姿勢を維持し、データ次第というスタンスは崩さないと見られます。そのため、市場は徐々に月末の個人消費支出(PCE)や、9月5日に発表される次回雇用統計の内容を見極めるムードへと移行していくと考えられます。
また、失業保険関連のデータにも警戒が必要です。特に新規失業保険申請件数は、雇用統計の調査期間と重なる週のデータであり、雇用統計を占う先行指標として注目されやすいです。この指標は毎週発表され、雇用情勢に敏感に反応するため、短期的な為替変動にも影響を与える可能性があります。
上値が抑制された状態が継続か(テクニカル分析)
米ドル/円は、下ヒゲの長いローソク足が出現しており、145.00~146.00円にかけて底堅さが感じられます。ただし、相場の強弱判断に用いられる200日移動平均線との位置関係では、同線を下回った状態が続いており、強気に転じるには材料が不足している状況です。
底堅さを維持しながらも、やや下方向を試す時間帯が長くなるのではないかと考えられます。
【米ドル/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:144.500-149.500
8/18 週のイベント:

一言コメント
毎年、お盆の時期に感じるのは、電車が本当に空いているということです。コロナ禍のときでさえ、もう少し混んでいたのではないかと感じます。来週からはお盆休みが明けて、また人が増えるのでしょうね。
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来週の為替予想 米ドル 円
ドル円が151円台へ上昇すれば、予想レンジの上限151.60レベルのトライを意識したい。この水準は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。筆者の想定を超える円安により予想レンジの上限を突破する場合は152円、153円と1円レンジで上値の水準を見極めることになろう。テクニカルの面では、フィボナッチ・リトレースメント76.4%戻しの水準154.40レベルを視野に上昇幅の拡大を想定したい。
焦点は、スタグフレーションの懸念をさらに強める内容となるのかどうか?この点にある。消費者マインドの低下と期待インフレ率の上昇が確認される場合はスタグフレーションの懸念がさらに強まることで、米国市場はリスク回避の相場が予想される。CPIとPPIの結果次第では、米ドル安と円高が同時に進行しよう。このケースでは、ドル円(USD/JPY)の急落を警戒したい。
一方、インフレ指標が予想以上に下振れる場合は、米ドル安の要因となろう。このケースでは、日米利回り格差の縮小とドル円の下値トライを意識したい。
一方、予想変動率は上昇している。1週間のそれは、米大統領選挙が行われた昨年11月の水準まで上昇している(4日時点で16%台)。来週もドル円(USD/JPY)は下値を意識する状況が続こう。
弱気地合いでの「急反発」を警戒、まずは148円の攻防、上振れすれば149円が視野に 現在のドル円(USD/JPY)は、下値を意識する状況にある。しかし、週足のローソク足では長い下ヒゲが表れ、下落相場が一服するサインが点灯している。一時的にせよ今週の米経済指標が米ドルの買い戻し要因となれば、ドル円は弱気地合いのなかの「急反発」を警戒したい。
3月のインフレ指標-CPIとPPI トランプ関税リスクが米ドル安と円高の要因になりつつある以上、来週のドル円(USD/JPY)も下値トライを意識する状況が続くだろう。トレンドは米経済指標に左右されるだろう。注目の指標は、10日の3月消費者物価指数(CPI)と11日の3月生産者物価指数(PPI)、4月のミシガン大学消費者態度指数および期待インフレ率(速報値)である。
最初の焦点は、先週ドル円の上昇を止めた1月の高値と4月安値の半値戻しの水準149.38レベルの突破となろう。だが、参院選で自公大敗(シナリオ①)となれば、このテクニカルラインと心理的節目のライン150.00レベルを突破し、一気に151.00のラインを目指す可能性がある。
金融政策面では、急激な円安進行時に日銀が利上げし、住宅ローン金利の上昇など家計の負担増加につながる可能性がある。また、米中対立の激化は日本企業のサプライチェーンに混乱をもたらすおそれがあり、特に中国に生産拠点や市場をもつ企業では、事業戦略の見直しを迫られるのではないか。地域経済への影響も無視できず、輸出産業が集積する地域では雇用・所得の改善が期待される一方、内需依存型の地域では物価上昇による消費低迷が懸念される。
円安の進行は輸出関連企業の収益改善につながり、特に自動車・電機・機械などの製造業では円換算での売上増加が期待される。一方で、輸入原材料に依存する製造業では、円安によるコスト上昇が収益を圧迫する可能性が高い。
本レポートでは、最新のAI技術を活用し、トランプ政権下でのドル円相場の行方を分析する。具体的には、経済指標、金融政策、地政学的リスクなど、様々な要因を考慮しながら、複数のシナリオにもとづきドル円相場を予測する。そしてこの分析を通じて、今後の為替動向に対する新たな知見を得ることを試みる。
なお、日本円以上に選好されているのがスイスフランである。月初来で日本円はスイスフランで下落している。4日時点でスイスフランがG10通貨のなかで最も選好されている。
転換線と基準線を上方ブレイクし、ドル円が148円台へしっかりと上昇する場合は、フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準148.21レベルの突破が焦点となろう。
ブルームバーグがまとめた市場予想によれば、3月CPIは前月比のコアを除きインフレが鈍化の予想にある。問題はPPIである。3月は前月比と前年同月比でともにインフレの粘着性が示される可能性がある。インフレの再燃は米金利の上昇要因だが、現在は景気不安の方が強く意識されている。3月のインフレ指標が上振れて「米金利の反発→米ドルの買い戻し」となっても、一過性の動きで終わる展開を想定したい。米ドルの買い戻し局面では、戻り高値の水準を見極めることがドル円の焦点となろう。
来週も下値トライを警戒、予想レンジの下限は142.00レベル 通貨オプション市場では、対円のリスクリバーサルがドルプットへ急速に傾いている。特に1週間のそれは、昨夏のリスク回避相場の回復途上にある水準までドルプットが進行している(4日時点で-2.575)。
この政治的転換を受けて、為替市場は早くも反応を示している。東京外国為替市場では、トランプ氏の勝利を受けて急激な円安ドル高が進行し、11月6日には1ドル151円台から一時154円台前半まで上昇、約3カ月ぶりの円安水準を記録した。新たなトランプ政権に市場は敏感に反応している。



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