
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年8月29日 12時45分
仏政局混乱の次の引き金は総選挙か、ポンドはなお方向感欠く展開
ユーロ/円、ポンド/円は方向性が揃わず
ユーロ/円とポンド/円は方向性が揃いませんでした。フランスのバイル首相が9月8日に国民議会で内閣に対する信任投票を実施すると発表したことを受け、フランスでの政治的混乱が嫌気され、ユーロ/円は172.664円から171.119円まで下落しました。
一方、ポンド/円はユーロ/円や米ドル/円の動向に挟まれて方向感が定まらず、198.264円から199.294円と極端に狭いレンジでの推移となりました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
ユーロ、自律反発も仏政局で上値限定
フランスでは、9月8日に大規模な歳出削減計画を巡り信任投票が実施されます。しかし、現状では主要野党3党がこの案を支持しない意向を示しており、すでに政権崩壊の危機に直面しています。
仮に政権が崩壊した場合、マクロン大統領が新たな首相を指名するか、解散総選挙に踏み切るかの選択肢が想定されますが、国民の支持が低下していることから、新たな首相を指名しても政権樹立が果たせるかは不透明です。
目先、市場は政権崩壊のシナリオをかなり織り込んでおり、更なるユーロ売りが進むには、解散総選挙への機運が高まる必要はあるとみられます。それでも、フランス政治の混乱は引き続きユーロの上値を抑える要因になると考えられます。
一方、英国ではインフレが依然として深刻な懸念材料の一つであり、英中銀の利下げペース加速は厳しいとの見方が優勢です。OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)市場では、次回利下げのコンセンサスが12月会合まで後退しています。こうした点はポンドを下支えします。
ただし、秋の予算案によっては財政健全化の遅れが意識され、国債下落(金利上昇)の中でポンド売りが強まるリスクもあります。英中銀が10月から始まる1年間の量的引き締めのペースを、現在の年1000億ポンドから700億ポンドに減速させるとの見方が浮上していますが、これは国債増発に伴う財政運営に対する信頼低下を防ぐ狙いもあると考えられます。
とはいえ、このシナリオが現実化するまでには時間があるため、当面のポンドは明確な手掛かりを欠く中で、方向感の定まりにくい展開が続くとみられます。
ユーロ/円は下目線、ポンド/円の買いは週前半に(テクニカル分析)
ユーロ/円は、日足一目均衡表の雲に下支えされているものの、上値をじりじりと切り下げる形から、上方向の重さが感じられます。直近で支えられた171.00円レベルは支持線として意識されますが、ここを下回る場合は、7月31日安値の169.724円、心理的節目の169.00円、一目均衡表の雲下限が目先推移する167.50円付近へと下値目標が切り下がる展開となりそうです。
一方、上方向は173.00円付近がレジスタンスになるとみられ、戻り売りを中心に取引したいと考えています。
ポンド/円は、8月4日安値195.011円からの上昇幅の38.2%押し水準となる198.263円付近で何とか下支えされており、短期的にはこの水準を基点に戻りを試す可能性があります。
ただし、来週後半以降、日足一目均衡表の雲上限が198.182円付近から197.375円付近へ低下し、サポート力が弱まる懸念があります。買いを検討するなら前半までにとどめ、後半は状況次第で戻り売り目線へ切り替えたいと考えられます。
【ユーロ/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:EUR/JPY:169.000-173.000
【ポンド/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:GBP/JPY:196.500-200.500
9/1 週のイベント:

一言コメント
ユーロ/ポンドは、直近の支持線となる0.85961付近まで下落した後、少し戻していますが、まだ下値警戒の時間帯が続くみられます。また、この水準を下回るようだと、0.8550付近までユーロ安・ポンド高が進む展開もあるかもしれません。
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来週の為替予想 ユーロ 円
2027年6月のユーロ円見通し。当月始値 189.92、最低 188.14、当月最高 193.88。平均 190.74。月末 191.01。変更 0.6%。
最新のユーロ円為替レート 171.78円。日の範囲の 171.78 - 171.78円。前日 171.78円。前日比 0.00%。
2028年12月のユーロ円見通し。当月始値 215.03、最低 211.06、当月最高 217.48。平均 214.46。月末 214.27。変更 -0.4%。
2027年12月のユーロ円見通し。当月始値 200.50、最低 195.86、当月最高 201.82。平均 199.26。月末 198.84。変更 -0.8%。
2028年2月のユーロ円見通し。当月始値 204.81、最低 201.60、当月最高 207.74。平均 204.71。月末 204.67。変更 -0.1%。
2027年7月のユーロ円予想。当月始値 191.01、最低 191.01、当月最高 196.96。平均 193.26。月末 194.05。変更 1.6%。
日本時間24日深夜、ジャクソンホール会議で、植田日銀総裁は「賃金上昇が中小企業にも波及しており、供給側の変化も踏まえて金融政策を運営していく」との意向を表明。こうした発言が、8/28の中川審議委員の会見に影響を及ぼし、利上げに前向きな姿勢が示されるか注目されます。また、8/22のパウエル議長講演について、既に労働市場の悪化データを把握しているとの思惑もあり、来週9/5発表の米8月雇用統計の下振れリスクが意識されるかもしれません。加えて、今週は8/29発表の東京都区部8月CPIや、米7月PCEコアデフレーターの結果も材料視されると見込まれ、積極的なドル買い戻しを躊躇する一因になるか注目。こうした中、日足・転換線(147円37銭)を回復できず、7/3以降の下値支持線である50日移動平均線(146円80銭)を明確に下抜ければ、8/14や7/24の安値(146円21銭/145円86銭)を試す展開も想定されます。ただし、FRBの早期利下げ観測を背景に、NY株式市場を中心に世界的な株高期待がリスク選好の円売り要因となり、ドル円の下値を支える可能性もあり、併せて注目されます。
2029年3月のユーロ円予想。当月始値 224.24、最低 220.44、当月最高 227.16。平均 223.91。月末 223.80。変更 -0.2%。
2029年5月のユーロ円予想。当月始値 221.11、最低 221.11、当月最高 228.97。平均 224.20。月末 225.59。変更 2.0%。
2028年7月のユーロ円予想。当月始値 200.66、最低 200.66、当月最高 209.78。平均 204.45。月末 206.68。変更 3.0%。
9月1日(月曜日)のユーロ円見通し: 為替レート 171.99、 最高 174.57、最低 169.41。 9月2日(火曜日)のユーロ円予想: 為替レート 172.09、 最高 174.67、最低 169.51。 9月3日(水曜日)のユーロ円見通し: 為替レート 172.02、 最高 174.60、最低 169.44。 9月4日(木曜日)のユーロ円予想: 為替レート 171.93、 最高 174.51、最低 169.35。
2027年8月のユーロ円見通し。当月始値 194.05、最低 191.29、当月最高 197.11。平均 194.16。月末 194.20。変更 0.1%。
ドルの代替通貨としての役割や、実際に世界の為替取引の約四分の一がユーロドルということもあり、ドルが上がるとユーロが下がり、ユーロが上がるとドルが下がる傾向にある。 中東・東欧・ロシア・アフリカとの関係が、他の先進国よりもつよく、これらの国で有事が起こった際には売りが出る傾向がある。
2029年6月のユーロ円見通し。当月始値 225.59、最低 216.04、当月最高 225.59。平均 221.64。月末 219.33。変更 -2.8%。
2028年9月のユーロ円予想。当月始値 209.66、最低 209.66、当月最高 218.46。平均 213.25。月末 215.23。変更 2.7%。


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