セブンampアイ 祖業のヨーカ堂売却
この日、セブン&アイは、11日付で中間持ち株会社のヨーク・ホールディングスを設立させると発表した。同社の傘下には、イトーヨーカ堂やヨークベニマルなどSST事業を中心とする31社を収める。中間持ち株会社は25年度中には持ち分法適用会社化する計画で、27年度以降の上場を目指す。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)はコンビニエンスストア事業に集中し、ヨーカ堂をはじめデニーズやロフトといった非コンビニと金融以外の事業を束ねる中間持ち株会社ヨークHDを設立した。その株式の過半を2026年2月までに外部に売却することも明らかにしている。
セブン&アイ・ホールディングスは1日、祖業のスーパー、イトーヨーカ堂を含む約30社を米投資ファンドのベインキャピタルに売却したと発表した。業績低迷が続いたスーパーを切り離し、巨大流通グループの事業再編は完了した。今後はコンビニのセブン―イレブンの経営に専念し、成長を目指す。
併せて、セブン&アイは、来年に社名をセブン-イレブン・コーポレーション(仮)に変更する方針も発表。コンビニエンスストア事業の重視を明確にした。
セブンはカナダのアリマンタシォン・クシュタール(ACT)から買収提案を受けている。買収への対抗策の本命とみられた創業家の伊藤家主導による非公開化案は白紙に戻った。一連の事業戦略を推進し、自社単独路線を株主や株式市場などに理解してもらう考えだ。
また、今回、セブン&アイは中間持ち株会社に今後、戦略的パートナーを招く新たな方針も示した。関係者への取材を基にその狙いに加え、現時点で想定されているパートナー候補ついても明らかにしていく。
金融事業についてはセブン銀行株の保有比率を40%未満に引き下げ、非連結化を進めていくとした。社長人事のほか、30年度までに総額2兆円に上る大規模な自社株買いも成長戦略の一つに盛り込んだ。
発表資料によると、売却したヨークHDの傘下には、ほかにヨークベニマル、ロフト、赤ちゃん本舗、デニーズなど約30社がある。3月の発表資料によると、売却価格は約8100億円。売却後にセブン&アイが35.07%、創業家が4.93%を再出資しており、セブン&アイの持ち分法適用会社として今後も関係は継続する。
セブン&アイの源流は1920年に創業者の故伊藤雅俊氏の叔父が開業した「羊華堂洋品店」。73年に米国のセブン-イレブン運営会社と提携し、日本でコンビニ事業に進出した。時代の流れとともに、総合スーパー事業の採算が悪化し、25年2月期の営業利益は国内コンビニ事業の2336億円に対し、スーパーストア事業は104億円に落ち込んでいた。
セブン&アイの井阪隆一社長は「自律的な財務の下、成長戦略を一層加速的に実現していく」とヨーカ堂を中心としたグループ再編を、こう表現している。当初(24年4月)は「(ヨーカ堂は)27年度以降のIPO(新規株式公開)をめざす」としていたが、その計画はグループ再編を経て大幅に前倒しされることになった。
セブン&アイHDはここ数年、アクティビスト(物言う株主)から不採算事業のそごう・西武、イトーヨーカ堂などの売却を求められている。24年8月にはカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール(ACT)から7兆円規模の買収提案を受けた。セブン&アイは、企業価値を高めて株価を引き上げ、買収を阻止するための構造改革を急いでおり、非コンビニ事業の非連結化(持ち分法適用会社になる見込み)は、事実上の買収防衛策と言えるだろう。
だが、実際のところは真逆といえる。今回のスキームは、セブン&アイや創業家が祖業であるヨーカ堂の主導権を握り続ける意思を示したものといえるのだ。ではなぜセブン&アイは、「売却」報道を黙認したのか。次ページでは、その背景を解説する。
イトーヨーカ堂など計31社で構成するヨーク・ホールディングス(HD)については6日付でベインと最終契約を結んだ。ただ、セブンはベイン側にヨークの全株式を売却後、創業家を含む40%の保有比率分をヨークに再出資する。このため、ベインが実際に投資する金額は約4900億円になる見通しだ。セブンは一連の取引を9月1日までに終わらせる。
「グループ構造を最適化して、SST(スーパーストア)事業グループについても成長戦略を強化する」。セブン&アイ・ホールディングスが10月10日に開いた2024年3~8月期決算説明会で、井阪隆一社長はそう強調した。
セブン&アイ・ホールディングス(HD)がカナダのコンビニエンスストア大手、アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けました。実現すれば海外企業による日本企業買収としては最大級となる見通しでしたが、その後提案は撤回されました。


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