ドル円急落の要因分析と市場展望【外為マーケットビュー】
動画配信期:公開日から2週間
外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
動画の内容まとめ
ドル円の急激な下落とその背景
昨日のドル円はロンドン時間に149円13まで上昇したが、その後急落して147.88円前後まで下落し、現在は148円付近で推移している。急落の材料は2つあり、米求人数の予想下回りとFOMC関係者のハト派発言により長期金利が低下したことが要因だ。10年債利回りは4.3%付近から4.2%付近まで低下した。
求人数の大幅悪化
求人数は718万1000件となり、前月の735万7000件から低下した。この前月の数値も当初の743万7000件から下方修正されており、予想738万件をさらに下回る弱い結果となった。求人数はここのところじわじわと低下しており、パンデミック後の1000万件台から徐々に減少し、ついに失業者数を下回る10か月ぶりの低水準となった。
この弱い数字を受けてドル円は148.80円付近から148円割れまで急落し、9月利下げ期待が高まった。フェドウォッチは9月利下げ確率を発表前の85%から96.6%まで引き上げており、再び149円が重い水準となった。
FOMC関係者のハト派発言
ウォラーFRB理事は9月利下げが必要で、その後数カ月かけて利下げしていくのが適当と景気次第の発言を行った。ボスティック・アトランタ連銀総裁は利下げ時期を明言しなかったが、労働市場軟化の証拠が見られれば年内に0.25%の利下げを一回実施する可能性が高いとの見方を示した。これらがさらなる長期金利低下とドル下落を促した。
ベージュブックと関税影響
昨日深夜発表のベージュブックでは、12地区連銀の多くが経済活動にほとんど変化がないとの認識を示し、4地区が控えめな成長を報告した。物価については10地区が緩やかまたは控えめな上昇としている。関税やトランプ政権政策が家計・企業に与える影響がじわじわと出てきていることも報告された。
世界的な金利上昇の一服
アメリカだけでなく日本の政局混乱やフランスの9月8日信任投票と財政赤字拡大で世界的に長期金利が上昇していたが、今週は米長期金利低下もあって世界的に金利上昇が一服した。
米株式市場の堅調推移
米株式市場はダウが0.05%下落したものの、S&P500が0.51%上昇、ナスダックが1.03%上昇と総じて堅調だった。長期金利低下が株価のプラス材料となったが、それ以上にアルファベットとアップルが上昇した。
連邦地裁がアルファベットの独占禁止法違反訴訟で検索事業売却は必要ないと判断し、これを好感してアルファベットが急伸した。アップルもSafariのデフォルト検索エンジンにGoogleを採用する手数料収入が継続するためプラス材料となった。メイシーズは通期業績見通し上方修正で20%急騰し、富裕層の購買力が衰えていないことを示した。
日経平均とドル円の展望
日経平均は4万2000円付近で推移しており、来週のSQに向けてレンジが続いている。ドル円については148円付近がサポートできれば148.70-80円への上昇が見込まれるが、147.80-90円を下抜けすると147.50円まで下落する可能性がある。

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外為市場に長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケット展望を解説します。
YEN蔵 氏
株式会社ADVANCE代表取締役 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。YouTubeなどで個人投資家に対して為替に関する情報を発信しており、人気を博している。
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ドル円急落米9月利下げ96織り込み FOMC発言でドル安鮮明に YEN蔵
日経平均は4万2000円付近で推移しており、来週のSQに向けてレンジが続いている。ドル円については148円付近がサポートできれば148.70-80円への上昇が見込まれるが、147.80-90円を下抜けすると147.50円まで下落する可能性がある。
ドル・円は147円14銭まで下落し8日来の安値を更新した。ユーロ・ドルは1.1693ドルから1.1722ドルまで上昇。ポンド・ドルは1.2553ドルから1.3583ドルまで上昇し、7月24日来の高値を更新した。
また、FRBに対する政治介入が高まっていることにも注意したいと思います。8月に入って、FRB理事達への辞任・解任工作が現実の動きとなってきており、パウエル議長に対して外堀が一層埋められてきました(9月のFOMCでは理事7人の過半数が利下げ派の可能性も)。9月のFOMCが近づくにつれてパウエル議長への利下げ圧力、解任圧力がさらに強まることも予想されます。
NY外為市場でドルは一段安となった。米7月消費者物価指数(CPI)の結果が想定内にとどまったことに加えて、ベッセント米財務長官の発言を受け、9月連邦公開市場委員会(FOMC)での50ベーシスポイント利下げの憶測が強まった。10年債利回りは4.233%まで低下し、7日来の低水準となった。
ドルの上値を重くしている背景は、FRBへの利下げ期待がありますが、さらにその期待を高めているのがFRB理事の人事の動きです。
しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待によってドルの上値は重たくなることが予想されますが、日銀が年内利上げを示唆するような発言に踏み込まない限り、円高の動きは抑制的になるかもしれません。ドル/円のさらなる円高には日銀の利上げ期待が一層高まる必要がありそうです。
これらの理事の人事の動きが利下げ推進につながるとの見方から、ドルの上値を重くしていますが、一方で政治圧力によってFRBの独立性が懸念されている点には留意する必要があります。
ドル/円は、147円台前半から149円手前まで円安に動きました。NY市場では、8月米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数が48.7と前月を上回りましたが、予想を下回り、引き続き好不況の分岐点である50を下回ったことからドル安となり、一時148円を割れる円高となりました。
パウエル議長の講演直後、株は上昇しましたが、クック理事の解任通知が出ると、株安、債券安(金利高)、ドル安の動きが見られた点には注目したいと思います。FRBの政治介入色が強まるにつれて、FRBの独立性が脅かされ、FRBの政策への信頼が低下し、本格的にドルの信認低下につながるのではないかと懸念されます。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、理事の過半数がハト派(利下げ推進派)になっているかもしれませんが、一方で政治介入色の強まったFRB体制を市場が嫌気しているかもしれません。相場の動きも激しい動きになることも予想されるため注意する必要がありそうです。



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