
本日のロンドン為替市場のユーロドルは、11日の欧州中央銀行(ECB)理事会を控えて動きづらい展開が予想される中、米労働省の雇用統計の年次改定に注目することになる。
本日はナーゲル独連銀総裁やビルロワドガロー仏中銀総裁の講演が予定されているものの、ブラックアウト期間中のため、金融政策への言及はないことになっている。
また、フランスでは予算案の成立が危ぶまれている中で、バイル内閣の信任投票が否決されたことで、本日、バイル仏首相はマクロン仏大統領に辞表を提出し、マクロン仏大統領は、1年余りで3人目となる首相を指名することになる。
マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右・国民連合(RN)や左派「不屈のフランス」は共に解散総選挙を要求しているものの、マクロン仏大統領は最新の世論調査で支持率が過去最低の15%に落ち込んでいるため、総選挙実施を回避する意向と報じられている。
また、本日は、米労働統計局から雇用者数の年次ベンチマーク改定(2024年4月から2025年3月)の速報値が発表される。昨年は8月21日に公表されたが、2023年4月から2024年3月までの1年間の雇用者増は81万8000人も下方修正されていた。
2024年4月から2025年3月までの雇用者数は、209.2万人増加(月平均+17.4万人)していたが、下方修正の数字次第では、9月16-17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.50%の大幅利下げの可能性が高まることになる。
市場では40万人から100万人程度の下方修正が予想されているが、ベッセント米財務長官は80万人減少と見ている。
昨年のような大幅な下方修正だった場合、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.50%の利下げ観測が高まることで、ユーロ買い・ドル売り要因となる。
想定レンジ上限
・ユーロドル:1.1829ドル(7/1高値)
・ユーロ円:173.97(7/28 高値=年初来高値)
想定レンジ下限
・ユーロドル:1.1687ドル(日足一目均衡表・転換線)
・ユーロ円:172.52円(日足一目均衡表・転換線)
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
見通し ロンドン為替見通しユーロドル 11日のECB理事会控えて動きづらい展開か
一方、このところの金融市場を揺らしてきたトランプ氏の高関税政策はユーロ円相場の値動きを小さくしている側面がある。ユーロと円はともにFX市場での安全資産とみなされ、トランプ氏を震源として世界経済が混乱するとの見通しが強まると、ともにドルに対して買われる傾向があるためだ。ブルームバーグによると、ユーロの対ドル相場(EUR/USD)は4月21日には1ユーロ=1.1573ドルをつけ、2021年11月10日(1.1595ドル)以来のユーロ高水準に到達。円の対ドル相場も1月10日から4月22日にかけて13%超の円高が進む局面があった。直近の1か月の値動きでも、ユーロの対ドル相場と円の対ドル相場は足並みをそろえた値動きといえる。
このためトランプ氏が高関税政策をめぐる言動を激化させるなどして世界経済の見通しへの不安が強まった場合には、ユーロ圏の物価やECBの利下げ動向に対する注目度が薄れることも考えられる。米国と中国は5月12日には関税の大幅引き下げで合意したものの、トランプ氏は30日には中国が合意内容に違反していると批判。さらに鉄鋼やアルミニウムに対する関税を6月4日から50%に引き上げるとも表明した。トランプ氏が今後もFX市場に波乱材料を提供すれば、ユーロ圏の物価上昇鎮静化の見通しによるユーロ安の流れが覆い隠されることも想定されそうだ。



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