ラブブ人気失速 製造元の株価急落
アートトイ市場はこれまで、投機的な転売需要と純粋に楽しむコレクター需要の両輪で成り立ってきた。しかし熱狂が冷めれば前者は退場し、残るのは後者だけだ。企業にとってはむしろ健全化とも言えるが、ラブブという単一IPへの依存度が高い現状はリスクとされる。
王寧CEOは胸元に新商品「ミニラブブ」をつけて決算説明会に現れた。従来のフィギュアよりも小さなミニラブブはスマートフォンなどにもつけることができ、消費者との接点を増やし、より人目に触れることを目指しているという。
例えば中国の玩具大手で香港市場に上場している泡泡瑪特国際集団(ポップマート)。23年から足元までに株価はテンバガーを達成していて、25年以降だけでも約3倍に急成長しています。「ラブブ」などの自社の人気キャラのフィギュアがランダムで当たるブラインドボックスなどを販売しており、時価総額も既にサンリオを抜き去っています。
第4代ミニラブブシリーズが8月28日に発売された。価格は79元(約1600円)で、AとBの2組が展開され、それぞれ14種類の通常デザインと隠しキャラ1種が含まれる。隠しキャラの出現率は168分の1と設定され、発売直後には瞬く間に完売。整箱は一時3200元(約6万4000円)に達し、取引価格は1000元(約2万円)近くまで跳ね上がった。
ラブブの価格崩落は、一つの人気キャラクター(IP)の浮沈にとどまらず、アートトイ市場全体が転換期を迎えていることを象徴している。希少性の演出や一時的な熱狂に依存するのではなく、ストーリー性や美的価値といった本質的な魅力をいかに持続的に育てていくかが問われている。
この動きと歩調を合わせるかのように、中古市場ではラブブの「隠しキャラ(シークレットフィギュア)」の価格が下落。かつて数千元(数万円)で取引されていたものが、今では800元(約1万6000円)台にまで値を下げた。
価格下落を受け、これまで市場を支配してきた転売業者も次々と撤退を表明した。SNS上では「ラブブシリーズは全面的に買取停止。市場回復の兆しを待つ」といった投稿が目立ち、中古市場には「赤字転売」「出血セール」と銘打った出品が増加している。
ポップマートの香港上場株は、直近3営業日で11%下落している。モルガン・スタンレーのアナリストは最近のリポートで、ポップマートのファンダメンタルズが弱含んでいるように見受けられると指摘。その要因は、ミニラブブの再販プレミアムが見込めなくなったことかもしれないとしている。
(ブルームバーグ):人気キャラクター「ラブブ」のコレクターズアイテムが中国の流通市場で、かつてのプレミアム価格を維持できなくなっている。アジアで最も話題を集めたデザイナーズトイであるラブブに対する投機的な需要が後退していることがうかがわれる。
POP MARTは2025年に映画スタジオとジュエリーブランドを立ち上げた。フィギュアメーカーからより広義のキャラクタービジネスに転換し、ディズニーやサンリオに肩を並べる企業になる——。ラブブによって同社はその一歩を踏み出したと言える。
ラブブ人気の副産物として、衣装カスタムや改造フィギュアを手掛ける職人など新しい職業も誕生したが、需要が急減すれば周辺市場も一気に冷え込む可能性がある。ポップマートは商品の補充をあえて不定期に行い、投機的な動きを抑えようとしているが、数量コントロールを誤れば価格暴落を招きかねない。
株価が年初来の3倍になり、過去最高を更新し続けていることから、決算発表会では「今後の成長性」「ラブブ人気の持続性」に関心が集中した。
経営陣がかなり丁寧に説明したのがサプライチェーンの強化だ。空前のヒットで供給が追いつかなくなり、入手困難となったラブブは「Z世代のマオタイ(高級白酒)」「金より儲かる投資商品」「先物商品」などと言われるほど取引価格が高騰し、転売ヤーの格好の商売道具になった。
中古市場でラブブの価格が急落し、転売業者が撤退を余儀なくされる事態になっている。
封面新聞などによると、香港株式市場で8日、ポップマート株は最大8.9%の急落を記録し、終値は300香港ドルを割り込んだ。背景には株価の急騰後に投資家が持ち株を手放す「調整売り」が広がったことやラブブシリーズへの需要懸念があると指摘されている。


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