ふくおかフィナンシャルグループのストラテジスト・佐々木融氏へのインタビューから、最新の為替動向と今後の見通しについてまとめました。
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FRB利下げの背景と市場への影響
昨日まで行われたFOMCで0.25%の利下げが決定されました。8月の雇用統計発表前まで、市場では9月の利下げが困難視されていましたが、雇用市場関連指標の悪化により、利下げが現実のものとなりました。
前回利下げ局面との類似点
佐々木氏は前回(2023年9月)の利下げ開始時との類似点として以下を挙げています:
政治的タイミング: 前回も今回も、利下げ開始後に自民党総裁選が控えている
市場の織り込み: 利下げ期待が相当程度織り込まれている状況
投機的ポジション: 円ロングポジションが高水準で積み上がっている
相違点と今後の展望
一方で、前回はトランプ大統領当選期待からドル高が進行しましたが、今回はそうした政治的要因が異なります。
トランプ政権下でのFRBの独立性
ミラン理事の就任など、トランプ政権の影響が懸念されていましたが、佐々木氏は「それほど政治的圧力は深刻にならないのではないか」と分析しています。
今回のFOMCでは:
・ミラン理事は50bp利下げを主張し反対票を投じた
・ウォラー理事とボウマン副議長は25bp利下げに賛成
・経済ファンダメンタルズに基づく判断が維持されている
日米関税交渉の詳細と課題
9月4日に合意に達した日米関税交渉の内容は以下の通りです:
合意内容
関税率引き下げ: 自動車27.5%→15%、その他25%→15%
対米投資: 日本が5,500億ドル(約80兆円)を3年半で投資
実行スキーム: JBICや日本貿易保険による融資・保証
実現可能性への疑問
佐々木氏は以下の点で実現の困難さを指摘しています:
1. 投資規模の問題: 現在の対米直接投資残高8,200億ドルに対し、3年半で5,500億ドルは約7割増に相当
2. 資金調達の課題: JBICのバランスシート規模(20兆円)に対し80兆円の融資は非現実的
3. 外貨準備の制約: 1兆ドルの外貨準備から5,500億ドルを振り向けるのは流動性の観点で困難
今後のドル円相場見通し
円の構造的弱さ
佐々木氏は円の構造的な弱さとして以下を挙げています:
実質金利のマイナス: 預金金利0.2%に対しインフレ率3%超
国際収支の悪化: 生活必需品の輸入依存とデジタルサービスの輸入増
企業の海外投資継続: 今回の対米投資約束でさらに加速
投資戦略のポイント
通貨分散の重要性
実質金利がマイナスの環境では、円だけでの資産保有はリスクが高いと指摘。佐々木氏自身は:
豪ドル: 地政学的リスクが低く、エネルギー・食料自給可能
スイスフラン: 金に次ぐ安全資産として史上最高値更新中
金: 中央銀行の緩和政策継続下で価格上昇継続
投資の基本原則
1. 資産の分散: 通貨・資産クラスの分散
2. 時間の分散: 一括投資を避け、時間をかけて投資
3. インフレヘッジ: 株式投資でインフレに対応
まとめ
円安の背景には構造的な要因があり、短期的な政策変更では解決困難な状況です。投資家にとっては、実質金利がマイナスの環境を踏まえた資産配分の見直しが急務といえるでしょう。
ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト
佐々木 融 (ささき・とおる)氏
1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。
2010年にマネージングディレクター就任、2015年から2023年11月まで同行市場調査本部長。23年12月から現職。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
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ドル円年末160円予想 日米関税合意でドル高加速 佐木融氏が警鐘を鳴らす円安
佐々木氏が外為ドットコムで、従前の円安ドル高(1ドル170円方向)予想を継続した。 同氏が予想を長期化させた理由は、トランプ関税によって米国や米ドルの信認が揺らいだこと。 仮に信認が早く回復するようなら、予想が早く実現する可能性もあると述べている。
一方で、前回はトランプ大統領当選期待からドル高が進行しましたが、今回はそうした政治的要因が異なります。
佐々木氏は米ドル、ユーロ、豪ドル、スイスフランを持てばよいのではないかと話している。
日米通商協議の合意で不透明感はやや後退しましたが、企業業績など実体経済への影響は限定的で、政治的な不安定さもあり、利上げには慎重との見方が優勢です。



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