廃棄非公表 日本郵便に指導検討
今回の2500台の「5年間使用禁止」という極めて重い処分には、単なる法令違反への対応を超えた意味合いが見え隠れします。注目すべきは、日本郵便がこの行政処分案に対して異議申し立てを行わず、受け入れていることです。通常であれば、事業存続に直結する処分に対しては強い反発や法的手段が講じられるものです。しかし、そうした動きが見られませんでした。
日本郵便の不適切点呼問題に端を発した一連の行政処分は、単なる違反への制裁にとどまらず、郵政民営化の矛盾を象徴する事件となりました。2500台のトラック、さらに軽貨物車の処分によって、日本郵便が自力でゆうパックを維持する道はほぼ閉ざされています。
① グループガバナンスの機能不全コンプライアンス委員会では、かんぽ生命及び日本郵便において不適正な募集行為が行われている端緒を把握していたにもかかわらず、十分な実態把握や対応を両社に対して指示してこなかったこと。また、代理店手数料や営業目標の設定、募集品質の改善に向けた体制の構築や対策の策定等、かんぽ生命と日本郵便の両社に跨り、募集品質に重要な影響を与える経営戦略の決定や内部統制の構築について、保険持株会社としての統括・調整機能を果たしてこなかったこと。加えて、メディアによる報道や当局による報告徴求命令があったにもかかわらず、保険持株会社としてグループ各社を主導した対応を適切に行ってこなかったこと。更には、2019年9月以前の営業自粛・再開については、経営上の重要な判断であるにもかかわらず、取締役会等に諮ることなく各社長間での非公式な会合で意思決定を行ったこと。
今回の処分について日本郵便は6月5日、「郵便・物流事業という社会的インフラを担っている運送事業者として、その存立にも関わる重大な事案であると受け止めております。本日、国土交通省より日本郵便あてに、点呼未実施事案を受けた行政処分が課されることに関する聴聞の告知がありました。事業許可取消という厳しい行政処分であり、日本郵便としては、極めて深刻な事態だと受け止めております」とコメント。その上で、今後予定されている行政処分の内容や顧客への影響などを精査し、物流の代替手段も含めた今後の具体的な対応について検討していくとした。
売却先が見つからず、採算性にも疑問が残る場合、ゆうパック自体を廃止する可能性も否定できません。郵便法で義務付けられているのはあくまで信書の送達であり、小包については必ずしも日本郵便が担う必要はありません。
その後、同省で処分基準に照らし合わせたところ、事業許可の取り消し処分に該当することとなった。今後はこれを受けて、6月18日に日本郵便に対する聴聞会を開催し、その上で処分内容が最終決定されるという。
なお、今回の事業許可取り消しで、通販も含めた国内の物流への影響が懸念されているが、同省では「我々としては(日本郵便が)事業をする上では当然『安全を守ってください』ということ。今回、違反行為があった部分に関してはこれまでの処分基準に基づいて処分する。一方で物流サービスを維持していくことが重要であることは我々も考えている。一時的にはまず日本郵便にしっかりと体制を考えてもらうが、我々として協力できるところは最大限協力する」(物流・自動車局安全政策課)とした。
この点を踏まえると、国交省の処分は「事業売却・事業廃止を前提にしたもの」と考えるのが妥当です。日本郵便自身も、もはやゆうパックを自社だけで維持することは困難と理解しているからこそ、あえて抗議せず受け入れたと解釈できます。国交省としても、郵便のユニバーサルサービス(信書)を維持する必要性は認識しながら、宅配便という競争市場については民間に任せるべきだと判断した可能性が高いのです。
一方でAmazonやDHLといった外資系企業も候補には挙げられますが、公共インフラ的性格を持つ日本郵便の小包事業を外資に売却することを政府が容認する可能性は低いと考えられます。
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(2)また、かんぽ生命及び日本郵便が、「特定事案調査」として実態把握を行った契約類型以外にも、かんぽ生命の保険商品に関し、以下のような不適正な募集行為の可能性がある類型の存在が認められた。
また、軽貨物事業を行う軽トラックに関しても点呼の不備の疑いがあることを日本郵便から報告を受けているため、今後の監査の対象になるが、軽貨物事業に関しては許可制ではなく届け出制となっており、処分内容としては車両使用停止になることが予想される。一般貨物運送のような全国一律の事業停止処分ではなく、郵便局ごとの処分となり、違反行為の認定、その数の積み上げで使用停止が決まる。
子会社の日本郵便輸送は日本郵便とは別に許可車両約2600台を持つ。主に幹線輸送を担っていた。日本郵便は対応策として、①子会社に配送・集荷を委託、②子会社から外部の物流事業者への委託先増加――などの選択肢を検討する。
今回の不適切点呼問題は、ガバナンス不全と労務管理の弱さを象徴しています。民営化の旗印の下で膨張した宅配事業が逆に経営の重荷となり、今や撤退の岐路に立たされているのです。ゆうパック撤退は、日本郵政株式会社全体の収益縮小を招きます。小包は郵便事業の数少ない収益源として期待されてきただけに、その影響は小さくありません。
許可取り消しに配送事業者が加盟する全日本トラック協会は、「飲酒も点呼もせず、記録の偽装もしていた。組織的に常態化していたのは悪質で、運べなくなるから困るという問題ではない」とコメントした。


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