
執筆:外為どっとコム総合研究所 小野 直人
執筆日時 2025年10月10日 15時59分
円安炸裂、政局不安の円安継続も154.50円付近に抵抗帯
米ドル/円、約5.8円上昇
米ドル/円は急騰。自民党総裁選で高市氏が勝利し、財政拡張・金融緩和路線が進展するとの期待から円安が進行しました。また、フランスのルコルニュ首相の辞任によりユーロ売り・米ドル買いが進んだこともあり、米ドル/円は8カ月ぶりの高値となる153.272円まで上昇。1週前の終値から約5.8円の上昇となりました。しかし、自公連立解消と伝わると、米ドル/円は152円半ばへ下げました。
(各レート水準は執筆時点のもの)
※相場動向については、外為どっとコム総研のTEAMハロンズが配信している番組でも解説しています。
日米の政局睨む展開が継続
来週も、本邦政治と米国の暫定予算の行方を睨みながらの展開となりそうです。
本邦政治では、高市氏の勝利を受けて円安が急ピッチで進みましたが、自民党が与党として残れるかどうかは、まだはっきりしていません。来週中にも開催が見込まれていた臨時国会は再来週の開催となる見通しで、それまでに政権の大枠がどのような形になるのか、目が離せません。
連立交渉や財務相人事など、政局を巡る不透明感が漂う中で、日銀も簡単には重い腰を上げないと見られ、次期政権による円安許容度を試す流れが続きそうです。ただし、政権の枠組み次第では、足元の円安の流れが一時的に休止し、調整的な動きが強まる可能性もあります。
また、米国の暫定予算を巡る動きも重要です。米政府機関の閉鎖は2週目に入っていますが、これまでのところ大きな混乱は起きていません。ただし、25万人以上の連邦職員が給与を受け取れていないほか、来週以降はその数が200万人に膨れ上がる見通しで、経済的な痛みは徐々に広がると見られます。
閉鎖が長引けば、米国の格付け引き下げへの懸念がくすぶり始め、米資産売りが警戒される事態も想定されるかもしれません。全体的には、米ドル/円は上向きの目線が続くと見られますが、米国発のドル売りには注意が必要です。また、日米の金融当局者の発言が続くため、10月末に向けた金融政策会合を巡る思惑にも留意したいところです。
154.50円の動向に着目(テクニカル分析)
米ドル/円は、今年4月以降のレジスタンスラインを上抜けし、一気に153円台まで上伸するなど、堅調な展開が続いています。4月22日の安値139.883円を起点とする上昇チャネルの上限である154.50円〜155.00円付近までの上昇は、引き続き期待されます。
ただし、昨年の高値161.949円と今年これまでの高値158.866円を結んだレジスタンスラインが、現在154.00〜154.50円付近に位置している点には注意が必要です。これらのラインが交差する154円台前半〜半ばでは、上昇の勢いが和らぐケースも考えられます。
このポイントをこなしてさらに上昇幅を広げるのか、それともレジスタンスラインに抑えられて調整地合いが進むのかが、今後の焦点となりそうです。
【米ドル/円チャート 日足】

出所:外為どっとコム「TradingViewチャート」
予想レンジ:USD/JPY:150.800-155.300
10/13 週のイベント:

一言コメント
刺し身にしても天ぷらにしても焼いても美味しい高級魚のタチウオが、今、東京湾で豊漁だそうです。1メートル以上の大物も多く、私も落ち着かないのですが、台風と台風の狭間ということもあり、海には行けず大変残念です。
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来週の為替予想 米ドル 円
シナリオ②:急速な円安の進行と突発的な円の買い戻し シナリオ①で指摘した急速な円安の進行は、円の買い戻しを誘発する可能性がある。しかし、自公大敗による政局不安と日銀の利上げ期待の後退を考えるならば、調整の円買いは「突発的」な動きで終わる可能性がある。
また、財政規律を重視する候補者が新総裁に就いても、石破内閣の不人気を考慮すると、次回の衆院選と参院選で国民の支持を取り戻すために自民党は財政拡張路線へ舵を切る可能性もある。いずれにせよシナリオ①では、財政悪化の懸念を国債市場の参加者に意識させることになろう。国内金利の上昇幅が急速に拡大すれば、外為市場では「悪い金利の上昇」と受け止められるだろう。金利の上昇スピード次第では、円安が急速に進行するだろう。このケースでは、予想レンジの上限151.60レベルを一気にトライする可能性もある。
ほとんどの国家は赤字で運営しています。けれども、対外債務が増えると、投資家に懸念を与えます。莫大な対外債務と公的債務がインフレを加速させています。過去20〜30年間のドル/円相場の変動は、両国のうち、どちらかが借入を増や したか、あるいは赤字予算を削減したことに起因しています。
9/29の97円52銭を安値に、9/30の豪中銀政策理事会で政策金利据え置きが全会一致で決定されたことを受け反発。同会合では、7-9月期のインフレ率が8月時点の想定より高めとなった可能性を指摘する一方、これまでの利下げの影響を見極めつつ慎重な政策運営が必要との見解を示しました。その結果、次回11/4の利下げ確率が低下し、豪ドル円は98円15銭へ上伸。しかし、米政府機関閉鎖の長期化による景気減速懸念や金融政策を巡る混乱が海外に波及すれば、豪主要輸出品である鉱物資源への需要減退が意識され、上値を抑制。さらに、複数のFRB高官による利下げに慎重な発言が相次ぎ、対ドルで豪ドルの上値の重さも意識されたため、10/2には96円86銭へ下落。その後は、10/3にドル円やクロス円での円買い一服を背景に97円49銭へ反発し、97円36銭で取引を終えました。
ドル 円 リアルタイム。
自民党は18日、石破茂総裁(首相)が21日午後2時から党本部で記者会見を開く予定と明らかにした。参院選の結果次第では首相辞任を表明する可能性がある。来週以降、自民党が次期総裁選に動き出せば、減税や社会保険料の引き下げを主張する野党と協調する必要性から、財政拡張路線を志向する高市早苗氏などの候補者が新総裁に選出される可能性を市場は意識しよう。昨年9月に行われた自民党総裁選では、高市早苗氏が有利と見た円安の場面が見られた。しかし、決選投票で高市氏が敗れると一気に円高へ振れた経緯がある。
9/29、早朝に149円53銭をつけた後、日銀・野口審議委員が「利上げの必要性が高まりつつある」と発言したことや、米議会での「つなぎ予算案」を巡る政府機関閉鎖懸念を背景に148円47銭へ下落。さらに、9/30発表の米9月消費者信頼感指数が市場予想を下回り、10/1には「予算失効」による米政府機関の一部閉鎖が決定。加えて、米9月ADP民間部門雇用者数が2ヵ月連続で減少したことから、9/17以来2週間ぶりの円高水準となる146円59銭へ下落しました。その後、10/2の146円60銭を安値に、複数のFRB高官が利下げ継続に慎重な見解を示したことや、米9月企業人員削減数の改善が好感され147円51銭へ反発。10/3午前には、植田日銀総裁が利上げに慎重な姿勢を示したことや日経平均株価が史上最高値を更新したことを受け、持ち高調整を伴い147円82銭へ上昇。ただし、米政府機関閉鎖の長期化懸念が上値を抑え、147円45銭で取引を終えています。
最新のドル円為替レート 147.44円。日の範囲の 147.44 - 147.44円。前日 147.44円。前日比 0.00%。
ユーロドルは先週を通じて、日足・基準線(1.1763ドル)が上値抵抗、50日移動平均(1.1678ドル)が下値支持として意識され、膠着感の強い展開に終始。今週も米政府機関閉鎖が続くと見込まれるほか、ラガルド総裁の議会証言やデギンドス副総裁をはじめとする複数のECB高官発言が予定されています。ただ、先週同様、ECBは利下げを急ぐ姿勢を示さないとみられ、1.16ドル台後半での底堅い動きが続く公算です。一方で、米政府機関再開に向けた進展があれば一時的に50日移動平均線を割り込む可能性もありますが、今月のFOMCでの利下げが確実視されていることが下支えとなり、1.16ドル台後半では買い戻しが入り易い展開が見込まれます。ユーロ円については、高市氏が自民党総裁選で勝利したことから財政拡大期待を背景に円安が進行する可能性があります。そのため、基準線や転換線(173円14銭/173円66銭)を下値支持線として昨年7/11の高値(175円42銭)を上抜ければ一段高となる可能性があるだけに注目されるとともに、ユーロドルも9/23の1.1820ドルを上抜けるか注目されます。
10/7発表の10月消費者信頼感指数や、10/10に予定される豪中銀ブロック総裁の発言への反応に注目。また、10/8に利下げが見込まれるNZ中銀政策委員会後の対NZドルでの値動きも焦点となります。さらに、米政府機関閉鎖の長期化による鉱物需要減懸念のほか、閉鎖解除に向けた動きの有無にも注意が必要。一方、高市次期自民党総裁が来週の臨時国会で首班指名され高市内閣発足の可能性が高いことから受け財政拡大路線への期待とともに、ドル円を中心に円安が進行すると見込まれます。そのため、1/24の高値(98円77銭)を上抜け1/7以来の99円台を回復するか注目されます。
ドル円が146.00を目指すサインとして注目したいのが、8月以降サポートラインとして機能し、かつ先週5日の下落を止めた半値戻しの水準146.80の攻防となろう(日足チャート、赤矢印を参照)。現在、147.30台で推移している50日線の下方ブレイクは、146.80のラインをトライするサインとなろう。
10年後の2010年、日本のインフレ率は0.72%まで上昇しましたが、米国は1.64%にまで下がっています。ドル/円相場は1ドル87.78円まで下落しました。現在のインフレ率は、日本0.23%、米国0.62%、ドル/円相場は 107円となっています。このことから言えることは、インフレ率は為替レートに影響を与えるものの、それ以外の様々な要因も関係していることを明らかにしています。
ポンドドルは、9/29に1.3392ドルの安値をつけた後、ユーロポンドが7/28以来の高値圏から反落したことによるユーロ売りや、米議会での「つなぎ予算案」を巡る政府機関閉鎖懸念を背景に上昇基調を維持。さらに、10/1発表の米ADP民間部門雇用者数が2か月連続で減少したことを受け、1.3527ドルへ上伸。しかし、英財政悪化やスタグフレーション懸念など積極的なポンド買い材料に乏しい中、複数のFRB高官が利下げに慎重な姿勢を示したことでドル買い戻しが優勢となり、1.3401ドルへ反落。その後、10/3には英FTSE100指数が反発し、史上最高値を更新したことが好感され、1.3485ドルへ反発し1.3483ドルで取引を終えました。週を終えました。ポンド円は、9/29に200円42銭へ上昇後、日銀高官発言による利上げ観測を背景にドル円の下落とともに水準を切り下げ、10/2には197円49銭まで下落。ただし、その後はポンドドルの反発に支えられ198円86銭へ切り返し、198円82銭で取引を終えています。
輸出額が輸入額を下回ると、その国の通貨は弱くなります。これは貿易赤字と呼ばれ、中国のように自国通貨を強くし「仕事を家に持ち帰る」国と米国との間で、近年繰り広げられている貿易戦争の原因となっています。日本は自動車、工業用 品、その他関連部品など、アメリカへの輸出量を増やしています。現在、日本の対米貿易収支は685億ドルの黒字、サービス収支は105億ドルの赤字となっています。2010年、米国と日本の貿易収支が600億ドルの赤字だったとき、ドル/円は 87.78円でした。
その一方で、様々なリスクやマーケット変動に伴い、ドルに対する優劣も変わります。円はドルよりも安全だと考えられています。


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