【S&P500】強気の流れ。5,880超えで終えれば一段の上昇へ。
直近の日足は値幅の小さい陰線引けとなりましたが、下げエネルギーの強いものではなく、また5,820-30の下値抵抗にも跳ね返されており、短期トレンドもしっかりした状態を保っています。再度5,860超えの抵抗をトライする動きが強まると見られます。5,860-70にやや強い上値抵抗が出来ていますが、これを上抜けて終えれば一段の上昇へ。逆に、5,770-80の抵抗を下抜けて終えた場合は日足の形状が悪化して、5,700前後の足元を固め直す動きが強まり易くなります。この場合でも短期トレンドは5,650以下で終えない限り変化しません。上値抵抗は5,860-70,5,890-00,5,930-40に、下値抵抗は5,820-30,5,800-10,5,770-80,5,750-60,5,710-20にあります。
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SP500 プロの予想 上値抵抗を抜けきれず
運用成績が振るわなかった要因はいくつかありますが、最大の理由は当ファンドで組み入れているグロース株が、金利上昇により株価バリュエーションの切り下がりに見舞われたことです。この点については、2022年2月の月次報告書でキーエンスなどの事例をあげてご説明しました。 グロース株の場合、長期金利の上昇局面では将来見込まれるキャッシュフローの現在価値が目減りするため、株価の下押し要因となります。しかし、当ファンドではグローバルで成長が期待できる企業に投資し続けることが、人口減少が続く日本で最も有効なアプローチだと考えています。世界を舞台に成長できる企業であれば内需型企業に比べて潜在市場規模が遥かに大きいため、息の長い業績拡大が期待できます。キーエンスの現在の株価は2021年の過去最高値から3割程度調整した水準にありますが、同社の中長期的な成長見通しは大きく変わっていないと考えられます。これまでの年率10%超の利益成長が継続すれば、3~4年程度で下落分を取り戻せる計算になりますが、それまでは辛抱が求められると考えます。 一方でPER(株価収益率)切り下がりリスクがあまりなく、ファンドの絶対リターンを牽引してくれるであろう銘柄も存在します。今後バリュー株からグロース株への変貌を遂げると期待される日立製作所などです。当ファンドでは2021年に会社業績予想を前提にPER10倍程度の局面で同社に新規投資を行い、現在でも割安であると考えています。未だ製造業主体の企業として、原材料コスト上昇、半導体不足、中国におけるロックダウンなどの影響で短期業績の大きな成長は期待しにくい状況ですが、ルマーダ事業を通じてビジネスモデルの構造変化が進むことで、中長期で利益の継続成長とバリュエーションの切り上がりの可能性があると当ファンドでは予想しています。 三菱商事も、2022年末時点のPERは一桁台、PBR(株価純資産倍率)は1倍割れと長らくバリュー株としてレッテルを貼られていますが、当ファンドでは総合商社を世界中に人的ネットワークを持つ投資事業会社であると考えております。今日の彼らのバランスシートは世界的にも珍しい事業資産ポートフォリオを有しています。これら資産の積み上がりが総合商社の本源的価値の増加につながり、ひいては一株当たり純資産価値の成長に反映されると考えます。例えば、三菱商事の一株当たり純資産価値は過去5年、10年、15年、20年でみても一桁後半から10%前後の年率成長を達成しています。このことから、当ファンドでは三菱商事を成長性のないバリュー株ではなく、割安に放置されたグロース株であるとみています。
当ファンドのパフォーマンスは 、前月末比4.19%の上昇となり、参考指数の同4.42%の上昇を0.23%下回りました。 当月のプラス貢献銘柄は、ソニーグループ、キーエンスなどでした。一方、マイナス影響銘柄は、東京海上ホールディングス、ユニ・チャームなどでした。 当月は、昨年新規投資を行ったセブン&アイ・ホールディングスが2023年2月期第3四半期決算を発表しました。営業収益は8.82兆円(前年同期比43.5%増)、営業利益3,948億円(同30.4%増)と買収したSpeedway社(米国)が加わった米国事業を中心に大幅増益となりました。 同社は日本人なら誰もが知るコンビニエンスストアであるセブンイレブンを筆頭に、百貨店やGMS(General Merchandise Store、総合スーパー等を指す)を展開する日本最大の小売企業グループです。しかし、利益構成比でみると米国のセブンイレブン事業が半分以上を占めており、実はグローバルな企業でもあります。興味深いことに、日本発の小売業態であるコンビニは、もともとは米国において誕生したSouthland Ice Company社に起源があり、1970年代に㈱イトーヨーカ堂(現在は同社の傘下)と国内ライセンス契約を結んだことから、主に日本においてビジネスモデルが発展しました。同社の米国事業は2006年以降になって、主にM&Aによって業容を少しずつ拡大してきました。そして今般、買収によって連結化されたSpeedway社が加わったことで、店舗数が現地で圧倒的最大手となったのです。本案件は実質的な取得価額が133億ドルであり、EV/EBITDA倍率(買収にかかるコストを何年で回収できるかを示す値)13.7倍で買収したことに相当しますが、同社が統合効果として6億ドル程度のシナジーによる増益効果を見込んでいるため、実際には6~7倍のEV/EBITDA倍率となります。日本で長年培われてきたセブンイレブン事業の様々なノウハウ(商品ラインアップ、店舗運営ノウハウおよび物流効率化など)を移植していくことで実現可能と思われることから、妥当な買収案件であると当ファンドは考えます。 同社は日本の会計基準を採用しているため、本件買収に伴いのれんの償却費が年間10億ドル程度計上されます。このため、損益計算書上では、通常のEPS(一株当たり利益)(同社今期予想317.03円)とのれん償却前EPS(同444.07円)とでは4割程度の開きがあります。後者のEPSを前提とすれば現在の株価は13倍台とTOPIXの平均PER(株価収益率)とほぼ同水準であり、割高感はないと判断されます(また当ファンドの平均PER水準も下回っています)。のれん償却費とは現金の流出を伴わない費用項目であることから、当ファンドでは減損リスクがない限りにおいて、のれん償却前EPSを使用すべきと考えます。 株価のバリュエーションについてもうひとつ言えることは、同社株は2010年前後と比べてPERが切り下がっており、割安感が強まっていると考えられます。2006年2月期~2015年2月期の同社の平均PERは約25倍でした。バリュエーション切り下がりの要因として考えられるのは、国内で小売業界自体が成熟化しているため今後の成長性が乏しいと思われていること、同社はGMS事業などの低採算事業を抱えており、グループ全体の価値を毀損していること、また株式市場が同社の米国コンビニエンスストア事業の成長性にいまだ確信を持てないことなどが考えられます。当ファンドでは、後述するようにこれらの点については、過度な懸念は必要ないとの見解を持っています。 資本収益性についてはどうでしょう。同社は長年、連結ベースのROE(株主資本利益率)が10%に届かない状況が続いており、経営陣も問題意識として持っていることが決算説明会などにおいて確認されています。しかし2023年2月期以降はSpeedway社の連結が利益押し上げ要因となるため、のれん償却前ベースで10%を超えてくることが予想されます。加えて、1)国内コンビニ事業が低位ながらも成長が続くこと、2)米国での上述シナジー効果の発現と更なる業容拡大、そして3)同社が抱えるいくつかの低採算事業の撤退の可能性などを考慮すれば、更なるROEの改善も十分にありえると考えられます。 一点目の国内コンビニ事業では、絶え間ない既存店のレイアウト改善や、ネットコンビニ分野でのデリバリーサービスの拡充などに取り組んでいます。2023年2月期は既存店売上伸び率が第3四半期時点で4.9%増と好調であり、コロナ禍前の2019年比でみてもプラスに転じています。成熟化が言われて久しい日本のコンビニ業界ですが、工夫次第でまだ伸びる余地は残されていると考えます。例えば、同社のプライベートブランド(自社企画商品)である「セブンプレミアム」には現在追い風が吹いていると考えます。国内における物価高によってナショナルブランド(製造メーカーブランドの商品)が値上げを余儀なくされていますが、この結果として品質が同等で価格が相対的に割安な同社プライベートブランドの優位性が増しているためです。同社決算資料によると、2021年11月月間のカップラーメンカテゴリーにおける単品売上ベスト10には、セブンプレミアム製品が3品のみのランクインでしたが、2022年の同時期比較では上位8品を独占しています。 二点目の米国コンビニ事業で注目すべき点は、まだまだ伸びしろが大きいと考えられることです。同社の開示資料によると、米国でのコンビニ総店舗数は2020年12月末時点で150,274店ですが、このうち買収前の同社が9,519店(市場シェア6.3%で1位)、今回買収したSpeedway社が同シェア2.6%で3位に位置しており、店舗数は3,854店です。即ち、今回の買収によって同社は合計約13,000店を抱える圧倒的なプレーヤーになったのです。また、日本のコンビニ業界はセブンイレブン、㈱ファミリーマート、㈱ローソンの3社で既に寡占化状態にありますが、米国では上位10社でも占有率はまだ2割程度しかありません。追加的な買収による業容拡大余地が多く残されているのが魅力です。 なお、米国コンビニ事業はガソリン併設店が多いことから、今期の売上と利益は年初からのガソリン市況高騰の恩恵を受けていますが、株式市場では来期以降の持続性が懸念されているようです。当ファンドは、ガソリン価格が下落すれば、むしろ人々が車で外出する機会が増え、コンビニでの物販消費にまわるおカネも増えるため、一概にマイナス要因とは言えないとの立場です。一方、ガソリン価格が高止まりすることも考えられます。かつてはエネルギー価格が高騰すれば、油田などの新規開発が進み、供給増・価格下落が誘発されました。しかし世界的な脱炭素化によって、従来のように価格上昇が供給増になかなか結び付かず、高価格が常態化する可能性があります(同社はガソリン価格高騰によってEV(電気自動車)普及が加速することを見据えてEV充電設備の設置拡大も進めています)。 米国におけるコンビニエンスストアのガソリンスタンドビジネスは、ガソリン販売量にCPG(セントパーガロン:1ガロンあたりの荒利額)を掛けあわせたものが売上となります。このCPGはガソリンスタンド業界によって決定され、その水準は常時変動しますが、近年は継続的な上昇傾向にあります。これはガソリンスタンド店舗内のコンビニ部分の物品販売が、インフレによるコスト高や売上の伸び悩みによって厳しい環境となるなか、零細店舗オーナーがガソリンスタンド業において収益を確保しようとしているため、業界全体としてマージンを高く維持するインセンティブが働いていると考えられます。このため仮にガソリン販売数量の減少やガソリン単価の下落があったとしても、CPGの引き上げによって収益を補うことがある程度可能となっており、同社など大手資本はこの流れに追随しているとみることができます。過去に石油会社がガソリンスタンドを経営していた頃は、CPGの引き下げによるシェア争いが散見されましたが、近年では事業の取捨選択によって石油会社はコンビニ・ガソリンスタンド事業から撤退しているケースが多く、競争環境が非常に緩やかであるのが特徴です。またガソリンスタンド事業に新規参入しようと考えるプレーヤーもまず考えられませんので、同社を含む既存事業者にとって魅力的なビジネスとして位置づけられるのではないでしょうか。以上の理由から、同社のガソリンスタンド事業は来期以降も底堅く推移するものと思われます。 そして三点目の低採算事業については、百貨店事業とGMS事業の存在が挙げられます。既に報道されているとおり、同社が運営するそごう・西武百貨店については、海外投資ファンドへ売却することが決定しています。今後も同社の資本収益性や株主還元策の改善に向けた取り組みが注目されます。同社は2022年4月7日に経営メッセージを公表後、新たな取締役会の下、事業ごとの効率性・成長性を踏まえ新しい成長戦略を現在策定中です。「キャピタル・リアロケーションプラン」と呼ばれる同プランは、その名の通り今後の資本配分方針の枠組み決定する重要なものとなりそうです。最適な資本配分は株主価値の増加には欠かせない点で、企業経営者は毎年創出する利益をどのように活用するかを考えるのが唯一の仕事といっても過言ではないと当ファンドは考えています。例えば、いくらを設備投資にまわすのか、あるいは買収戦略に充てるのか、はたまた借入金の返済に充当するのかなどが考えられます。また株主還元の視点も重要です。いくらを配当として払うのか、そして自社株買いをするのか、などといった点です。基本的には資本コストを上回る再投資機会が本業に存在するのなら、経営陣は積極的に内部留保を行うべきです。一方、再投資機会が乏しいなら株主に配当や自社株を通じて還元するのが正しいアプローチといえるでしょう。なお自社株買いを行う場合、自社が考える適正な株価よりも市場で取引されている株価が割安な時のみ行うべきであるのは言うまでもありません。なお、定量面を含む具体的なプランの概要は改めて情報公開予定となっており、引き続き注目です。 最後に、当月は米国の著名な友好的アクティビストファンドとして知られるValue Act社(米国)が、同社経営陣に対し書簡を送り、改めて同社のコンビニエンスストア事業の株主価値を最大化するためのスピンオフなどを求めたとロイターが報じました。Value Act社は2021年より同社の株主となっており、これまで幾度となく、同社の株主価値を最大化するための抜本的なグループ再編を求めてきました。具体的には、成長性の高いコンビニエンスストア事業を他の不採算事業であるGMS事業から切り離すことなどを提案しているようです。これまでのところ同社経営陣は、本提案に対し難色を示していると推測されますが、これまで多くの投資成功事例を持つValue Act社の友好的かつ粘り強いアプローチが実を結べば、当ファンドも株主として大きな恩恵を受ける可能性があります。また当ファンドとしても、同社とのIRミーティングの際に同様の提案を働きかけていくことも視野にいれて今後の調査を継続していく方針です。
この3月のFOMCの結果を受けて、S&P500指数はこれまで心理的な節目となっていた5,200ポイントの大台を超えてきた(5,200ポイントという水準は、米国株に対して当初最も強気だった某ストラテジストの24年末時点の目標株価)。さらに、今回は超長期の「上値抵抗線」を超えてきた点においても、インプリケーションがあると考えられる。
一方、ロート製薬や日立製作所などは運用成績に貢献しました。 ロート製薬は創業時の胃腸薬販売から始まり、20世紀初頭に市販⽬薬事業、1990年代から2000年代にかけてスキンケア事業を加えてきました。⽬薬、スキンケア商品はいずれも今⽇の稼ぎ頭です。2023年3⽉期第1四半期決算は、連結売上が前年同期⽐23.5%増、営業利益が同37.8%増と⼤変好調でした。全体売上の約6割を占める⽇本では、コロナ禍のリモートワークで需要が⾼まっている⾼額⽬薬や、⾏動制限の緩和に伴って外出機会が増加したことから⽇焼け⽌めや、スキンケアシリーズの「メラノCC」などが⼤幅に伸びました。海外も⼤変好調です。全体売上の約4分の1を占めるアジアではコロナ禍が収束に向かうベトナムでV字回復となり、インドネシアも好調です。また売上規模は⼩さいですが⽶国とヨーロッパも増収増益となっておりポジティブです。 同社の魅⼒は市販⽬薬(アイケア部⾨)や化粧品(スキンケア部⾨)のアジアにおけるニッチなブランド⼒です。インドネシア、ベトナム、カンボジアなどの国々では今後、全⼈⼝に占める⽣産年齢⼈⼝の割合が⾼まっていく、所謂「⼈⼝ボーナス」期への移⾏が予想されます。現段階から同社ブランドの消費者認知度を⾼めるための先⾏投資を⾏うことは、⻑期的にみて正しい戦略であると当ファンドでは考えます。もう⼀点将来楽しみなのは、10年ほど前から国内で取り組み始めた再⽣医療事業と、近年開始した眼科⽤医療⽤医薬品事業です。再⽣医療について同社が進めているのは、脂肪由来の幹細胞を利⽤した再⽣医療⽤製剤で、肝硬変、新型コロナウイルス感染症、肺線維症、重症⼼不全などの適応症向けに治験が進められています。独⾃開発した⾃動培養システムを使って、再⽣医療⽤細胞を受託製造するビジネスも本格展開する予定です。 日立製作所は、ルマーダ事業を通じてこれまでの単純なハードウェア製造・売り切り型ビジネスから顧客企業の課題解決型ビジネスへの脱皮を目指しています。同事業は2023年3月期売上19,000億円(連結売上構成比約18%)を見込んでおり、利益率も先行投資をこなしながら全社平均を超えている高収益部門です。このため、同事業の利益貢献度は売上の見た目以上に高くなります。 2010年から2021年まで社長・会長を務めた中西氏によると、同社には1)システムインテグレーターとして培った情報技術(Information technology)、2)社会インフラ(発電所、ビルのエレベータ、鉄道システムなど)や工場の運転操業を行う経験で培った運用・制御技術(Operational technology)、および3)メーカーとして様々な製品技術(プロダクト)を併せ持っていることが他社にない強みとしています。これらを掛け合わせることで、昔のように製品技術と販売力だけで勝負せず、顧客企業と一緒に課題解決していくソリューション事業の展開が可能となるのです。このソリューションを発掘するために顧客の現場データをIoT(Internet of Things、モノのインターネット)経由で収集・分析する同社独自の仕組みを「ルマーダ」と呼んでいます。 ルマーダ事業の具体的な流れとしては、まず顧客の経営課題・現場課題を、日立製作所と当該企業が協力して明らかにしていきます。次に顧客企業が保有する設備やIoT機器からビジネス現場(工場、店舗、社会インフラなど)でリアルタイムに発生する膨大なデジタルデータ(設備や店舗の稼働データ、従業員の作業データ、商品の販売動向データ、生産工程に使われる原材料データ、生産技術に関するデータなど)をルマーダ上で収集・分析します。そして、そこから導き出されたソリューションを顧客に導入し、付加価値を生み出すことを最終目標としています。ソリューションの中身は、日立製作所の持つハードウェアの販売、ITシステムの納入、オペレーションの請負、メンテナンスやモニタリングサービスの提供など様々で、これらをパッケージ化したものも考えられます。 同社は、顧客企業に導入した課題解決の成功事例(ユースケース)を標準化して社内に蓄積することで、似たような問題に直面している他の企業・業界に応用していく方針です。また今後全ての事業セグメントは、「ルマーダを通じて顧客の課題解決を助ける」という視点で進められ、かつて同社の中心だったメーカー機能はソリューションビジネスの一環に過ぎなくなります。ユースケースが揃ってきた現在、同社はあまりコストをかけずに業容拡大できる段階に入ってきており、今後は利益率改善および売上成長スピードが上昇することが予想されます。当ファンドではまさにこの点をスケーラブルなアセットライトなビジネスとして注目しており、また顧客の囲い込みもできることから参入障壁が高い、魅力的なビジネスになると考えています。
以上のように課題・問題点はありますが、今後が期待できる部分も数多くあります。 まず注目すべきは米国コンビニ事業です。同社開示資料によると、米国でのコンビニ総店舗数は2020年12月末時点で15万店程度ですが、Speedway社の買収によって同社は合計約1.3万店を抱える圧倒的なプレーヤー(市場シェア約10%)になりました。日本のコンビニ業界はセブン-イレブン、㈱ファミリーマート、㈱ローソンの3社で既に寡占状態にありますが、米国では上位10社でも占有率はまだ2割程度しかありません。米国コンビニ市場の潜在規模は非常に大きいと考えられるため、同社が市場シェアを引き上げることで多くの利益をもたらすことが考えられます。長期的にはEV(電気自動車)の普及に伴いコンビニに併設されているガソリンスタンド事業の先行きが懸念されますが、店舗におけるオリジナルのフレッシュフード商品やプライベートブランド商品の売上拡充により十分カバーできると考えられます。また米国における2022年のEVの新車販売割合は6.7%に留まり、ガソリン需要は当分の間なくならないでしょう。需要が構造的な減少トレンドに入ったとしても、新たなガソリン事業者の参入やガソリンスタンドの新規設置もみられないことから、同社のような業界大手は残存者メリットを享受することも見込まれます。そして、ガソリン事業が業界全体として衰退傾向になれば、ガソリンスタンド併設型コンビニエンスストア事業者の6割強を占める零細プレーヤーが立ち行かなくなり、身売りするオーナーが続出することが想定されます。同社にとってはそのような事業者を買収し、業界再編・コンビニ事業拡大を加速させる絶好のチャンスとなるでしょう。 一方、国内コンビニ事業は成長の頭打ちが心配材料ですが、同社は絶え間ない既存店のレイアウト改善や、ネットコンビニ分野でのデリバリーサービスの拡充などに取り組んでいます。海外からの訪日客が回復すれば、同社売上にも寄与するでしょう。足元の円安は米国事業の拡大をもたらすだけでなく、訪日客増加を誘引するきっかけにもなると考えられます。さらに上述のように海外コンビニ事業拡大のアクセルを踏むことで、国内利益は相対的に小さくなっていくことが予想されるため、懸念も少しずつ和らぐと考えます。だからこそ、コンビニ事業に経営資源を集中し、今以上に海外出店ペースをあげていくことが望まれます。 同社株価バリュエーションに話を移すと、現在の株価は割安な水準にあると考えます。例えば日本の会計基準を採用している同社では、Speedway社買収に伴うのれん償却費が年間1,000億円以上に上るため、通常EPS(1株当たり純利益)(同社2023年度予想322.68円)とのれん償却前EPS(同450.06円)の間には4割程度の開きがあります。のれん償却は現金支出を伴わない費用項目であることから当ファンドでは後者のEPSを使用すべきと考えており、実質的なPERは13.8倍程度と東証株価指数の平均を下回っています。 EV/EBITDAでみるとどうでしょう。前述のとおり、買収による借入金が増えたことで、現在のEV/EBITDAは約8倍弱になりましたが、それでも同業他社で米国2番手プレーヤであるAlimentation Couche-Tard社(カナダ)と比較すると割安な水準にあります。なおセブン&アイ・ホールディングスは2023年2月期より在外子会社の会計基準を変更しており、オペレーティングリース債務はバランスシート上に負債計上されるようになりました。これに伴い、全額費用計上されていたオペレーティングリース料が、支払利息と減価償却にわけて損益計算書上に反映されることになり、2023年2月期実績EBITDAは新たに追加された減価償却費分の推定800億円程度が前年度に比べて「かさ上げ」されていると考えられます。しかし、このような会計要因を排除しても、同社が同業他社よりディスカウントされているのは変わらないと考えられます。 フリーキャッシュフローでみた場合は、2022年度の営業キャッシュフローは9,284億円、投資活動に伴う支出は4,132億円、よってフリーキャッシュフローは5,152億円となり、フリーキャッシュフロー利回りは9.4%程度(フリーキャッシュフロー/時価総額)です。これは国内リスクフリーレートを大幅に上回る水準です。また仮に、営業キャッシュフローから㈱セブン銀行に関わる預金やコールマネーなどの資金流入を営業キャッシュフローから差し引いたとしても、フリーキャッシュフローは4,000億円を優に超えており、控えめにみても同社株価に割高感は認められないと考えます。なお、同社が開示している2025年度のフリーキャッシュフロー目標(除く金融)は5,000億円以上であり、十分に達成可能な水準と考えます。 最後に、冒頭のプロキシーファイトは会社側の勝利で終わりましたが、取締役の再任議案に関しては昨年までの90%以上の賛成比率が今回は約65%~約76%まで低下しました。現経営陣は今回の件をきっかけに、株式市場から従来にも増して厳しい目で業績が評価されることになるでしょう。ValueAct社にしてみれば、プロキシーファイトで敗れはしたものの、一定の成果は残したと言えそうです。
当ファンドの投資戦略である「魅力的なビジネスと卓越した経営陣を併せ持つ企業を安く買う」は、企業が生み出す利益(キャッシュフロー)をビジネスに再投資することで更なる価値を生むという本源的価値の増大プロセスに着目します。そのため当ファンドでは参入障壁が高く資本収益性に優れたビジネスを展開し、平均を上回る成長性を持つと考えられる企業を選好します。株式投資の王道ともいえるこのアプローチは、米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏の投資方法にも共通するものです。しかし、バフェット氏が投資するような業種やビジネスモデルに似た日本企業に投資しても成功するとは限りません。日本で同アプローチを実践するには、日本特有の国民性、企業文化の理解が必要であるためです。そこで当月は株式投資の視点から気づく「ここが違うよ日本」、「ここが変だよ日本」、や「ここが凄いよ日本」などについてお話しようと思います。
事実、今期も⽶国や中国EV(電気⾃動⾞)メーカーから⾃動運転機能や⾞内エンターテインメント機能に関するデザイン設計案件が増えています。最近の中国⼈消費者の嗜好性を⾒る限り、EVの選択基準はガソリン⾞と異なりソフトウェアまわりが中⼼です。つまり搭載される半導体(カスタムSoC)が重要な製品差別化ポイントになっているのです。中国景気は低迷していますが、現地EVメーカーは欧州、ASEANへの輸出にも積極的であるため、同社はその恩恵を受けるかもしれません。 同社の商談獲得残⾼には、他にも通信機器、データセンター、スマートデバイス、産業機器向けがありいずれも成⻑分野です。また現時点では同社に⽬⽴った商談獲得実績はなさそうですが、昨今の⽣成AIブームが⽕付け役となり、AIサーバー向け半導体が脚光を浴びています。いずれ⽣成AIがデータセンター内のサーバーから末端デバイスのエッジコンピューティング⽤にAI専⽤半導体が幅広く採⽤されるようになれば、同社にとって追い⾵となるかもしれません。 今期は踊り場ですが、同社業績は組織改⾰を経て中⻑期的に利益成⻑率が⾼まる局⾯にあると考えられます。半導体技術者数が台湾競合の倍以上を誇りながらも、⼀⼈当たり売上・利益では未だ低⽔準です。しかし、獲得商談のグローバル化で仕事量の増加と案件⼤型化に加え、技術者の⽣産性向上の取り組みなどにより、営業利益率は15~20%程度を⽬指せるのではないでしょうか。30%を超えるROEも可能かもしれません。 さらに同社は研究開発型企業ということもあり、「⼀般試験研究費の額に係る税額控除制度」(各事業年度において、試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額に⼀定割合を乗じて計算した⾦額を、その事業年度の法⼈税額から控除することを認める制度)の恩恵を存分に享受しています(2022年3⽉期売上1,928億円に対し研究開発費493億円)。このため2023年3⽉期の実際の法⼈税率(「税効果会計適⽤後の法⼈税等の負担率」)は僅か15.5%でした。これは法⼈実効税率30.6%よりもかなり低いので同社が将来⽣み出すキャッシュフローを考えるうえで無視できないポイントです。 フリーキャッシュフローについては、前期は案件が急激に増えてマスクブランクス(半導体デバイスを製造する元となるガラス基板)調達などコストが嵩んだこともあり、当期利益に対して低⽔準でしたが、本来はキャッシュを潤沢に⽣むビジネスです。経営陣の株主還元⽅針である連結配当性向40%程度、総還元性向50%程度を前提としてもキャッシュが積みあがっていくことが予想されます。 当ファンドが投資リスクとして念頭に置いているのは、⼤⼿ハイテク企業(⽶国のApple社、Microsoft社、Alphabet社など)による半導体デザイン設計のさらなる内製化、⽶国のBroadcom社、Marvell Technology Group社(両社ともASSPメーカーであり、部分的にソシオネクストと競合)や台湾勢(前述した企業やMediatek社など)との競争激化、および同社が獲得した案件にキャンセルが発⽣することなどです。また獲得した案件で不具合が⾒つかり、同社のレピュテーションに傷がつくケースなども、評判が広がりやすい狭い業界ということもあり注意が必要と考えます。
以上のように日本人は欧米からみて良くも悪くも文化や国民性がかなり特異です。加えて言葉の壁もあります。だからこそ日本株への投資で成功する際には、日本人の特徴をしっかりと理解したアプローチが必要です。とくに外国人投資家の参加率が高い日本株式市場では、こういった日本ならでは特異性を知りつつ、欧米資本主義的な視点で企業分析できるアクティブ運用者は銘柄選択において大きな競争優位性になると考えます。 アクティブ運用対パッシブ運用の対決では世界的にアクティブ運用の存在価値の低下が言われて久しいです。しかし日本に限って言うと、まだまだ当ファンドのようなアクティブ運用が活躍できる余地が多分にあると考えます。その理由は、まさに日本の特異性にあるのではないでしょうか。日本の株式市場では株価のミスプライシングが発生しやすく、統計上の「市場の効率性」が低くなっています。モーニングスター・ジャパン㈱が2024年1月末時点で集計した内容によると、10年間の運用成績がTOPIX(配当込み)を上回ったアクティブ型大型株投信の割合は約32%、期間が3年間と5年間の場合はそれぞれ約32%、約40%でした。これは同割合が1割を大きく下回る米国に比べて格段に高い数値です(つまり日本株市場はアクティブ運用が市場平均を上回れる余地が大きい)。日本株に投資するのであれば、パッシブ(ETF)ではなくアクティブ運用を通じて行うほうが有効であると当ファンドが考える理由はまさにここにあります。
3月のFOMCでは事前予想に反して「ハト派」サプライズが飛び出したことから、3月20日のS&P500指数は史上最高値を更新したほか、超長期の「上値抵抗線」も明確に超える展開となった。FRBの金融緩和期待や生成AI経済圏の拡大という2つのけん引役によって、上昇トレンドが今後も継続する可能性が高まったと考える。
オリックスには他にも中期的に訪日客の恩恵を受けるビジネスが立ち上がる計画があります。いわゆる大阪IR(Integrated Resort/統合型リゾート)の開発です。日本では初となる本格的なカジノ施設を目玉とし、高級ホテル、娯楽施設、国際会議場、ショッピングモールを網羅した一大リゾートプロジェクトとして2030年頃の大阪夢洲において開業を目指しています。オリックスは開発主体である大阪IR社に約43%出資しています。シンガポールのMarina Bay Sands、マカオのCotai Stripや米ラスベガスの成功にみられたように、外国人客を惹きつける観光資源として注目されています。同社とMGM Resorts International社(米国)が中心になり、プロジェクト全体で計画されている1兆円クラスの投資は海外に匹敵するスケールです。まだ最終的な投資金額や建設スケジュールなど流動的なところが多いですが、リスク・リターンをしっかり考えて立ち上げに成功すれば同社株の魅力はさらに増すと思われます。
このように、FRBの金融緩和期待と生成AI経済圏の拡大という2つのドライバーが株式市場の上昇をけん引する蓋然性が高まっている。超長期の上値抵抗線を突き抜けたS&P500指数は、新たなフェーズに入った可能性がある。
2024年5月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比1.16%上昇し、日経平均株価も前月末比で0.21%上昇しました。 当月の日本株式市場は、月前半は4月の米国雇用者数が市場予想を下回り、米利下げ観測が強まったことから日米株式市場ともに上昇しましたが、日銀の金融政策正常化観測などから上値が抑えられました。月半ばには米消費者物価指数や米小売売上高など予想を下回る指標が発表され、金融引き締めの長期化への懸念が後退しました。その結果、米国の主要3株価指数が史上最高値を更新し、日経平均株価も一時39,000円を回復しました。さらに、NVIDIA社(米国)が市場予想を上回る好決算を発表し、半導体株が軒並み上昇して相場を支えました。月後半は、米景気の底堅さを背景とする利下げ動向への懸念や、日銀総裁の追加金融引き締めを示唆する講演が再び注目されて日米長期金利の上昇により株価が下落しましたが、最終的には金利上昇がひとまず一服したとの見方が買い戻しにつながり、前月末を上回る水準で月を終えました。
S&P500指数の2000年3月24日と2022年1月3日の終値(高値)を直線で結ぶと超長期の「上値抵抗線」が引ける(図表2)。S&P500指数はちょうどこの「上値抵抗線」を3月20日に明確に超えてきたことから、ここもとの上昇トレンドが今後も継続する蓋然性が高まったとも解釈できる。
2024年4月、日本株式市場の代表指数であるTOPIX(配当込み)は前月末比0.91%下落し、日経平均株価は前月末比4.86%の大幅下落となりました。 月前半は利益確定売りや、⽶連邦準備制度理事会(FRB)高官の年内利下げ先送り示唆に伴い米長期金利上昇が懸念され、米国株式市場の下落を招き、日本株式市場は上値を抑えられました。月半ばには米CPI(消費者物価指数)の市場予想を超える上昇や半導体関連企業の大幅下落、また中東情勢の悪化などから日経平均株価は一時37,000円を割り込みました。月後半には中東情勢の落ち着きから買い戻しの動きが見られ、日経平均株価は38,000円台を回復しました。26日まで開かれた日銀金融政策決定会合では緩和的な金融政策の維持が決定され、日本が祝日だった29日にドル円相場は一時160円台へ急伸し約34年ぶりの高値を更新しました。しかしながら、その後一転して154円台まで大きく円高に振れ、市場では政府による為替介入が行われたとの観測が広がりました。
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