
14日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、7月米卸売物価指数(PPI)が予想を大幅に上回り、米連邦準備理事会(FRB)による大幅利下げ観測が後退したことで147.96円まで上昇した。ユーロドルは、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁が「来月の大幅な利下げは適切とは考えていない」「0.50%の利下げは不必要な緊急性のシグナルを送ることになる」と発言したことや米インフレ指標の上振れをきっかけに米長期金利が上昇したことで1.1631ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、日本の4-6月期実質国内総生産(GDP)速報値を見極めた後は、日米の10年債利回りや日経平均株価の動向に連れた値動きが予想される。
8時50分に発表される日本の4-6月期実質GDP速報値は、前期比+0.1%、年率換算で+0.4%と予想されており、2四半期ぶりのプラス成長が見込まれている。
トランプ米政権の高関税措置により、米国向けの自動車輸出は25%の追加関税が課されていたが、販売価格を引き下げてコストを負担する形で輸出数量を維持していたことで、堅調な輸出が寄与している可能性が見込まれている。
GDP速報値が予想通りにプラス成長を回復していた場合、日銀の利上げ再開の目安である「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」が整うことになる。
また、トランプ米政権による対日相互関税は、9月中旬までに合意通りに15%程度になることが見込まれるため、植田日銀総裁が利上げ停止の理由としていた「不確実性」が後退することになる。
米7月の消費者物価指数(CPI)は、前月比+0.2%、前年比+2.7%、卸売物価指数(PPI)は、前月比+0.9%、前年比+3.3%とまちまちな数字だった。
しかし、米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利据え置きの理由としていた健全な労働市場という見立てが崩れかけているため、2つの責務である「雇用の最大化」と「物価の安定」の内、「雇用の最大化」に軸足を移していく可能性が高いのではないだろうか。
目先のリスクシナリオは、来週22日に、パウエルFRB議長がジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム:21-23日)で労働市場に対する見立ての過ちを認め、昨年同様に利下げを表明する可能性となる。
また、米国の雇用統計に関しては、アントニー次期米労働統計局長が、月次の発表から四半期毎の発表に変えると述べたが、ベッセント米財務長官は否定的な見解を示していた。
今年1-7月の雇用者数に関しては、労働省発表の非農業部門雇用者数は、大幅に下方修正された後で+59.7万人(月平均+8.5万人)、ADP社発表の全国雇用者は+58.7万人(月平均+8.4万人)だったことで、集計方法に改善の余地があるのかもしれない。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
市場概況 東京為替見通しドル円 46月期実質国内総生産
なお、急速な金融引締めが進む中で、金融市場においては、ドイツとユーロ圏の一部の国との国債利回りの差の拡大、国債市場のボラティリティの高まり、新興国等における為替相場の大幅な変動や資金流出入等の市場の変動もみられている。
欧州における天然ガスの卸売価格は、2010年頃までは長期契約による石油価格にリンクした価格(石油インデックス)であったが、2010年代には市場における競争価格(スポット価格)への移行が進んだ5。このために他地域での需給動向が欧州の市場価格に反映されやすくなった。
また、欧米中銀は政策金利を連続して大幅に引き上げるといった急速な金融引締めを進めており11、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は2022年3月の連邦公開市場委員会(FOMC)においてフェデラル・ファンド・レート(FF金利)の誘導目標範囲を0.25%ポイント引き上げて以降、2023年2月までに累計で4.50%ポイントの大幅な引上げを行った。欧州中央銀行(ECB)は7月の理事会において主要リファイナンスオペ金利を0.50%ポイント引き上げて以降、2023年2月までに累計で2.50%ポイント引き上げた。また、イングランド銀行(BOE)は2021年12月の金融政策委員会においてバンク・レートを0.25%ポイント引き上げて以降、2023年2月までに累計で3.75%ポイント引き上げた(第1-1-8図)。
15日午前の東京外国為替市場で、円相場は下げ幅を縮めている。10時時点は1ドル=147円47〜49銭と前日17時時点と比べて92銭の円安・ドル高だった。前日の米長期金利が上昇し、日米の金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが優勢だった。内閣府が15日発表した4〜6月期の国内総生産(GDP)速報値が市場予想を上回ったことが円相場の支援材料だった。輸出企業など国内実需筋の円買い・ドル売り観測も円相場の支えとなった。
4〜6月期の実質GDP速報値は、前期比年率1.0%増と市場予想を上回った。米関税政策への警戒感が高かったなかで日本経済は底堅いとの受け止めから、「日銀の今後の利上げを後押しする内容」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)との指摘があり、円相場の支えとなったようだ。
目先のリスクシナリオは、来週22日に、パウエルFRB議長がジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム:21-23日)で労働市場に対する見立ての過ちを認め、昨年同様に利下げを表明する可能性となる。
一方、IMF (2022d)においては、2022年、2023年の物価上昇率見通しが上方修正された(第1-1-30表)。その背景としては、感染症の収束に伴う需要回復、財需要から観光等のサービス需要へのリバランス、国際商品市場における食料・エネルギー価格の上昇が消費者価格に遅れて波及すること等が指摘された。また、国・地域ごとに状況は異なり、欧州ではウクライナ情勢を受けた食料・エネルギー価格の高騰が主な物価上昇要因となる一方、アジアではエネルギー及び食料価格の上昇が穏やかであることから物価上昇が欧米と比べて相対的に緩やかとしている23。さらに、物価安定に向けて急速な金融引締めが進む中、物価上昇率は2022年にピークを迎え、2023年は総じて低下する見込みとなっている。
しかし、米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利据え置きの理由としていた健全な労働市場という見立てが崩れかけているため、2つの責務である「雇用の最大化」と「物価の安定」の内、「雇用の最大化」に軸足を移していく可能性が高いのではないだろうか。
雇用情勢について、主要国の失業率をみると、ユーロ圏と英国では2021年末頃には感染症拡大前(2020年3月)の水準を下回り、緩やかな減少傾向が続いている。アメリカも2022年夏頃までに感染症拡大前(2020年2月)とほぼ同水準まで低下した後、同水準で推移している(第1-1-16図)。このように雇用は安定しており、労働市場の引締まりを受けた名目賃金の上昇(地域別の詳細は後述の2節を参照)が消費の下支えに寄与している。
こうした市場構造の中で、欧州のガス卸売価格のベンチマークであるTTF価格については、2021年央より、感染症からの経済活動再開に伴うアジア市場での需要増の影響に加え、ロシアから欧州へのガス供給が低調であったことから需給がひっ迫して徐々に上昇6し、12月中旬には2020年初と比較して15倍近い水準まで高騰した。その後2022年に入ると、ロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアからのガス供給が徐々に減少することに伴いTTF価格は更に上昇し、8月下旬には2020年初と比較して26倍近い記録的な高水準にまで高騰した。
今回の結果が市場予想を上回ったことを受け、15日の外国為替市場の円相場は対ドルで上昇。一時147円20銭まで上昇した。債券相場は売りが優勢。東京株式相場は反発し、日経平均株価は一時前日比0.9%高と、4万3000円台を回復した。


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