ホンダの電動スポーツ戦略 狙い
ホンダとソフトバンクグループ傘下企業が共同開発したAI技術「Honda Automated Network Assistant」を搭載し、ドライバーの表情や声の調子からストレス状態を常に診断する、いわば「感情エンジン」を備えていました。
これもモーターによるダイレクト感を生かした走りを魅力として打ち出したモデルで、加速感の強さだけでなく、擬似エンジン音やシフトの再現、ドライバーのステアリング操作に対する応答性を高めた走りが魅力となりそうだ。しかもこれは単なるコンセプトモデルではなく、市販化を前提としているという。ホンダの意欲を感じさせるではないか。
現時点では2017年の発表以降、スポーツEVの市販化に向けた目立った動きはありませんが、ホンダは将来的に「2026年に操る楽しさを際立たせた小型EVを投入する」計画を公言しています。
八郷前体制の調整局面から、三部体制による“攻めの姿勢”へと戦略を明確に変えてきたホンダ。ただ、今回のEV戦略も中国、北米に母国市場の日本を加えた地域戦略にとどまっている。かつてホンダは「北米一本足打法」といわれたが、この間、世界最大の市場となった中国は同社にとっても最大の戦略市場であり、同国での足場づくりを進めてきた。
こうした四輪電動化領域の計画に加えて“頼もしさ”を感じたのが、「ソフトウエア・コネクテッド領域の強化」の施策だ。これからのビジネスでは、ハードを“売りっぱなし”にするのではなく、コネクテッド技術を活用した継続的なソフトウエアサービスが重要になるはず。そのためにホンダは、電動化・ソフトウエア領域の研究開発費に約3.5兆円もの予算を投じるというのだ。
時代は変わり、大変革の中で生き残りを目指すホンダ。吉野元社長は若手時代、米国の厳しい環境規制「マスキー法」を初めてクリアしたエンジン「CVCC」の開発に携わり、ホンダは低公害技術で世界をリードした。そのホンダの伝統を、電動化戦略でどういかしていくのか。注目したい。
中国と北米では量と質を追って収益を上げる一方で、母国の日本では軽自動車に重点を置く戦略が続くことになりそうだ。日本市場では、EVでも軽に狙いを定めていることが明確になった。
GMとの協業拡大はEVの量産効果につながる。両社が共同開発する300万円台の量販EVへの期待は大きい。2022年3月に公表したソニーとの提携については「ホンダのEVラインアップとは一線を画す」(三部社長)とするものの、「モビリティの付加価値拡大に大いに期待している」とし、EVの新たな方向性を打ち出す可能性を示唆している。
また四輪ビジネスに関しては、EV比率を高めると言いながらも、ホンダ全体としては「多面的、多元的なアプローチが必要」とも説明している。彼らは四輪だけでなく、オートバイやパワープロダクツ、船外機、航空機など、幅広い製品ポートフォリオを有している。これら“四輪以外”の機器のためにも、交換式バッテリーや水素燃料電池、カーボンニュートラル燃料への取り組みを続けるというのだ。EVにのめり込みすぎず、他のビジネスへの配慮も忘れない点も、ホンダならではの頼もしさといえるだろう。
明かされた販売台数の目標は「2030年に200万台以上」だ。ホンダの年間販売台数が450万~500万台であると考えると、200万台はその40~45%にあたる。しかもこれは先進国限定ではなくグローバルでの数字であり、「2030年は先進国で40%」とした前回の発表より、さらに進んだ目標といえる。しかし、同じ2030年のトヨタの目標は35%の350万台。より規模の大きいトヨタが35%であれば、ホンダの40~45%もあながち無理のない数字に思えた。たった1年で数字に感じる重みが変わるというのも不思議なもの。それだけ時代の流れが速いということだろう。
そこに“ホンダらしさ”を感じさせることができれば、他の商品にも影響が波及していく。実用性やデザインも大事だが、ホンダの電動車を魅力的にするのは、やはりホンダらしい走りを実現したモデルだろう。
トヨタが先ごろ実施したEV戦略についての会見では、豊田章男社長が17台ものEVを従えてプレゼンを行い、「EVにも本気」な姿勢を強調した。一方、今回のホンダの会見では、三部社長がヴェールに包まれた2台のEVの前に立ち、「ホンダ不変のスポーツマインドや際立つ個性を体現するような、スペシャルティとフラッグシップの2つのEVを2020年代半ばに投入する」と発表し、注目を集めた。EV時代のホンダらしさとは何かを示す特別なクルマの登場にも期待したい。
2025年7月、ベトナム政府が発表した「首相指令20号」を受けて、ホンダやヤマハ発動機など日系二輪車メーカーに衝撃が走った。庶民の足として広く普及しているガソリン二輪車を、首都ハノイの中心部から締め出す内容だったからだ。
ホンダの新型プレリュードの販売が好調だ。24年ぶりに復活させたスペシャリティカーは、ハイブリッド専用モデルで617万円という立派な価格にもかかわらず、月販目標(800台)の約8カ月分を発売直後に受注し、バックオーダーを抱える人気ぶりをみせている。
これらの取り組みにより、ホンダは2030年までに、軽商用からフラッグシップクラスまでを網羅する30車種のEVをグローバルで発売する。年間生産台数は200万台を超える見込み。ホンダのグローバル生産を約500万台とすると、4割程度がEVとなる計算だ。


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