自動車大手3社が赤字転落 9月中間
三菱自動車が5日発表した2025年4―9月期連結決算は、当期損益が92億円の赤字(前年同期は379億円の黒字)で、4―9月期として5年ぶりの赤字に転落した。営業利益段階で為替影響が384億円、関税影響が277億円のマイナス要因となった。世界小売販売台数は前年同期比2万4000台減の38万4000台と低調。加藤隆雄社長は「タイで第3工場を27年半ばから休止する」と明かし、構造改革を進める考えを示した。
トヨタ自動車グループの主要部品メーカー7社の業績はおおむね堅調を維持している。主要取引先であるトヨタの販売が北米やアジアなどで好調。部品各社の主力製品の供給量も増加するなど事業環境は悪くない。ただ、米国関税の影響や品質の維持、半導体調達が揺らぎ始めるなど思わぬリスクが顕在化。コストを最小限にしつつ、事業の合理化や競争力向上を図り、2026年3月期の計画達成に向け手を打つ。
トヨタ自動車は5日、2026年3月期連結業績予想(国際会計基準)の売上高と全利益段階を上方修正すると発表した。米国や中国でハイブリッド車(HV)を中心に販売が好調なことに加え、補給部品などバリューチェーン(VC)事業の収益も拡大。米国の自動車関税の逆風を補った。売上高は従来予想比5000億円増の49兆円(前期比2・0%増)、営業利益は2000億円増の3兆4000億円(同29・1%減)に引き上げた。
日野自動車は4日、2026年3月期連結業績予想で全利益段階を上方修正したと発表した。営業利益は4月の期初公表値比250億円増の650億円、当期利益は同200億円増の400億円に引き上げた。国内アフターサービスの収益増加や固定費削減などの改善活動が寄与する。
【名古屋】トヨタ自動車系中堅部品メーカー5社が30日発表した2026年3月期連結業績予想は、3社が各利益段階を上方修正した。トランプ米政権の関税影響が押し下げ要因となる一方、OEM(完成車メーカー)の生産が堅調。また合理化改善も実を結んでいる。25年4―9月期決算は3社が営業増益または黒字転換となった。
旭化成は5日、2026年3月期連結業績予想の当期利益を5月公表比150億円増の1400億円(前期比3・7%増)に上方修正した。米国の医薬事業が伸びるほか、半導体材料や自動車内装材販売も当初想定を上回る。アクリル樹脂原料事業撤退で特別損益は悪化するものの、政策保有株式売却などで補って一転増益となる。
【ニューヨーク=時事】米電気自動車(EV)大手テスラが22日発表した2025年7―9月期決算は、売上高が前年同期比12%増の280億9500万ドル(約4兆2700億円)と過去最高だった。米国で9月末に連邦政府のEV購入支援策が終了する前の駆け込み購入が増えた。一方、本業のもうけを示す営業利益は40%減の16億2400万ドルと大幅減益となった。
トヨタ自動車は米関税が営業利益ベースで9千億円の減益要因となり、北米の営業損益は赤字となった。
日産自動車が6日発表した2025年9月中間連結決算は、純損益が2219億円の赤字(前年同期は192億円の黒字)に転落した。世界的な販売不振に加え、トランプ米政権の自動車への追加関税によるコスト負担が利益を下押しした。中間期の赤字は5年ぶり。26年3月期の純損益予想はリストラ費用の算定中を理由に開示を見送った。再建策の一環として横浜市にある本社の土地と建物を970億円で売却する。
ファナックの業績が好調だ。数値制御(NC)装置などのFA事業やロボット、ロボマシン、サービスの全事業が堅調で、工場の稼働率が向上していることも踏まえ、2026年3月期連結業績予想を上方修正し、増収、全利益段階での増益を見込む。売上高は過去最高だった23年3月期以来の8000億円超の見通し。トランプ米政権による関税影響などの不安要素はありつつも、米国製造業の国内回帰をはじめとする自動化需要を取り込む。
日産自動車が6日発表した2025年4―9月期の連結決算は、当期損益が2219億円の赤字(前年同期は192億円の黒字)。営業損益段階で関税影響が1497億円、為替影響が645億円のマイナス要因となった。26年3月期は関税影響がマイナス2750億円、営業損益は2750億円の赤字(同698億円の黒字)と予想。当期損益の見通しは見送った。
【京都】ジーエス・ユアサコーポレーションが6日発表した2025年4―9月期連結決算は増収・営業増益だった。国内の自動車用鉛蓄電池や産業電池電源、車載用リチウムイオン電池(LiB)の売価見直しや販売数量増加がけん引。売上高と各利益段階で4―9月期として過去最高となった。海外の自動車用鉛蓄電池は、東南アジアや豪州の販売数量が好調だったが、トルコは市況低迷を受け、販売が減少した。
ホンダは7日、2026年3月期の連結業績予想(国際会計基準)を下方修正し、当期利益が8月公表時より1200億円減の3000億円(前期比64・1%減)になる見通しと発表した。4輪車販売が特に中国、アジアで振るわず、世界販売台数見通しを同様に28万台減の334万台(前期は371万6000台)へ引き下げた。関税影響や蘭半導体メーカー、ネクスペリアの供給問題が重くのしかかる。電気自動車(EV)の黒字化と、内燃機関(ICE)車の建て直しを急ぐ。
大手商社2社が4日発表した2025年4―9月期連結決算は三菱商事が当期減益、丸紅が当期増益となった。三菱商事は原料炭市況の悪化や、前年同期に計上した売却益の反動減などの影響を受けた。丸紅も原料炭などの市況影響は受けたものの、北米の自動車販売金融などの事業が伸びた。両社ともに26年3月期の連結業績予想は据え置いた。
トヨタ自動車が収益構造の強靱(きょうじん)化に取り組んでいる。勝てる商品の投入やサプライチェーン(供給網)全体での原価改善、用品事業やコネクテッド(つながる)サービスといった「バリューチェーン」(VC)の構築などに裏打ちされた強い財務基盤を発展させる。目指すは着実な利益の積み上げ。トランプ米政権による関税政策の影響を最小限にするだけでなく、次なる成長のために競争力の源泉を磨き直す。



コメント