日産社長 ホンダは未来ひらく仲間
トヨタが筆頭株主のアイシンが12日、スバルとトラクションモーターの共同開発に取り組むと発表した。これもスバルがトヨタと提携関係を結んでいることで成立したビジネスと言える。同様に日産、ホンダ、三菱自動車の「3社連合」ができれば、実力のある下請け部品メーカーにはチャンスが広がる。
A そのとおりです。背景には、自動車業界が100年に一度とも言われる激変の時代を迎えていることがあります。世界全体の車の販売台数を見れば、トヨタ自動車やドイツのフォルクスワーゲンなど、ホンダや日産と同じく、昔からの自動車メーカーが今も上位を占めています。しかし、EV=電気自動車や自動運転といった新たな分野では、アメリカのテスラや、中国のBYDといった新興メーカーが急速に存在感を高めています。EVの販売台数に限れば、テスラとBYDが世界のトップと2位で、日本メーカーの存在感は高くないのが実情です。また、自動運転の分野でも、米中の新興メーカーやIT大手などの異業種が開発を加速させています。さらには、こうした車の電動化や自動運転技術の進化にあわせて、車の機能を制御するためのソフトウエア開発の重要性が高まっています。これらの研究開発には巨額の費用が必要となり、大手の自動車メーカーであっても大きな負担となります。だからこそ、経営統合によって巨額の投資を分担するとともに、それぞれが持つ技術を持ち寄ることで、競争力を高める狙いがあるとみられます。
30年以上にわたって自動車業界を見てきたナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹さんは、「危機意識が両社の経営統合への道に突き動かしたと思う。自動車メーカーが戦っているのは、アメリカのGMやフォードではなく、テスラや中国の新興メーカーで、重要なものがハードウエアではなくて、ソフトウエアに変わってきている。大きなスケールを持たないと何兆円もの投資を個社でまかなうのは難しい」と話しています。また、業績が悪化している日産については「構造転換で少し利益が出るようになっても、そんなものでは不十分で、生き残っていけるという未来の希望が描けない。非常に強いパートナーと未来を見据えた改革を打ち出したいといった事情があった」と指摘しています。その上で経営統合に向けた課題について、「伝統のあるこの2社がプライドや自分たちのやり方に固執せずに新しいものにチャレンジしていく必要があると思う。時代の変革を表す象徴的な大きな事業統合で、この成否が日本の自動車産業の未来を左右すると考えている」と話しています。
日産自動車は本社(横浜市西区)で入社式を実施し、824人の新入社員が出席しました。内田誠社長は「日産は昨年、創立90周年を迎えました。その中で培った経験、技術力は私たちにとって大切な財産ですが、それだけに頼っていては、私たちの目指す新たな価値の創造は実現できません。皆さんの既成概念にとらわれない発想や豊かな感性、そこから生まれる気づきは大きな原動力となります。遠慮することなく、意見を積極的に発信してほしいと思います。そして新たな日産、モビリティの未来を一緒に創っていきましょう」と語りました。
A 日産にとっては、経営統合の協議もさることながら、足もとの業績の立て直しが差し迫った課題です。日産は先月発表した中間決算で、本業のもうけを示す営業利益、最終的な利益ともに90%を超える大幅な減益となりました。アメリカや中国での販売不振が主な要因で、世界で20%の生産能力の削減や9000人の人員削減を行う計画を発表しています。経営統合によって投資を分担するためにも、立て直しを着実に実行し、収益力を回復することが求められます。一方のホンダは、アメリカなどで販売が伸びているため、先月の中間決算では、営業利益がその時期として、過去最高となりました。ただ、EVシフトが進む中国市場では、現地メーカーとの競争激化などで販売が減少し、日産と同様に苦戦しています。これまでの両社の関係者への取材でも、自動車業界を取り巻く環境が激変する中で、1社単独での生き残りは容易ではないという危機感が何度も聞かれました。とくにホンダはこれまで技術提携などは行ってきたものの、自主自立の路線を堅持してきました。それだけに今回の経営統合の協議入りは、新興メーカーや異業種が参入する自動車業界の厳しい現状を表しています。経営統合に向けた協議の中で、両社が競争力の強化につながる戦略を描けるかが今後の焦点となります。
18日の東京株式市場は、日産自動車の株式は取り引き開始直後から注文が殺到して値がつかない状態が続きましたが、午前9時半すぎに一日の値上がり幅の限度となるストップ高の水準で取り引きが始まりました。その後も買い注文が殺到し、午後に入ってからは株価はストップ高の水準から動きませんでした。また、日産が筆頭株主となっている三菱自動車工業が今後、協議に加わるかどうかも焦点となっていますが、三菱自動車の株式にも買い注文が殺到し、ストップ高の水準まで値上がりして取り引きを終えました。
こうした中でホンダと日産の経営統合が実現し、日産が筆頭株主となっている三菱自動車工業も加わることになれば、もうひとつの大きなグループが生まれることになります。
ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入り、三菱自動車工業の合流も視野にあると報じられたことについて、3社はそれぞれコメントを出し、「当社が発表したものではない。各社の強みを持ち合い、将来的な協業について報道の内容を含め、さまざまな検討を行っているが、現時点で決定した事実はない」としています。
ホンダの三部敏宏社長は18日朝、記者団に対し「協業含めて今、検討していて、その他の可能性についても話はしているが、決まったものはなく、公式に発表した事実もない。何か決まったものがあれば、お知らせしたい」と述べました。
去年1年間の販売台数はホンダが398万台で世界7位、日産が337万台で世界8位ですが、両社を合わせると735万台にのぼっていて、統合が実現すれば世界3位の巨大グループが誕生することになります。両社は経営統合に向けて近く基本合意書を締結する見通しで、日産が筆頭株主になっている三菱自動車工業が加わるかどうかも焦点になります。
本田技研工業には772人が入社しました。入社式は宇都宮市内のメイン会場と6事業所会場をオンラインでつなぎ、新入社員を迎え入れました。三部敏宏社長は、「ホンダの強みは、やはり夢への挑戦と、それを生み出し、実行するのは人なんだ、ということ。リスクを恐れずチャレンジし、そこから生み出されたものは、われわれの勝ち技になります」と語りました。そして「ホンダにとっての最大の財産は人材です。これからのホンダを引っ張っていくのは、誰でもない皆さんです。ぜひ主人公は自分たちなんだ、という自覚をもって、今日からチャレンジしてください」とメッセージを送りました。
資本関係で見ると、日本の乗用車メーカーは、広義のトヨタグループと、日産・三菱連合、ホンダの3グループに分かれている。
ホンダの創業者 本田宗一郎氏の出身地の静岡県浜松市では、期待や不安の声が聞かれました。本田氏は1906年に現在の浜松市天竜区で生まれ、天竜区にある「本田宗一郎ものづくり伝承館」では、各年代のホンダのバイクなどが展示されています。奈良県から伝承館を訪れた男性は、「企業文化が違う2社が統合することでシナジー効果が生まれそうなので、賢い選択だと思いました」と話していました。本田氏の実家があった場所に近い菓子店の鈴木美納江店主は、「ホンダの名前が残るのかどうなのかと心配になりました。ホンダの『H』のマークがなくなってしまうと寂しくなる。地元にとっては宗一郎さんの存在は誇りなので、そのスピリットを継承していってほしい」と話していました。
様々な企業価値試算のどれをとっても経営統合はホンダ主導になることは自明です。その結果、社長、取締役構成ともホンダがリードします。持株会社は会社の経営最高意思決定と統治の仕組みです。当面、実際の経営はホンダ、日産とも独立性が保たれる可能性が高いでしょう。ホンダが日産を支配するのではなく、ホンダが主導するガバナンス構造の中で日産が自ら再生するという構造と理解します。日産はいい要素をいっぱい持ってます。しかし、現在のカバナンスがその力を引き出せなかったことは明らか。ホンダ主導のカバナンスが日産を再び輝かせることを期待します。
世界の自動車グループの2023年の販売台数は▽1位のトヨタグループが1123万台▽2位のフォルクスワーゲングループが923万台▽3位のヒョンデグループが730万台▽4位のステランティスが639万台▽5位のGMが618万台▽6位のフォードが441万台▽7位のホンダが398万台▽8位の日産自動車が337万台などとなっています。
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