外国資本が旅館を買収 温泉街の今
外資によるホテルへの投資では、都心の高級ホテルや地方都市のシティホテルを対象にしたものが数の上では目立っているが、観光リゾート地におけるホテル事業を手がけるケースもある。地方におけるホテルへの投資は、雇用や資材調達等を通じ、地域の経済への波及効果も少なくないと考えられる。また、国民の価値観やレジャー嗜好の多様化に追いつけず客足が遠のいて経営困難に陥る老舗温泉旅館を我が国企業と共同して再生させるため、外資が資金やノウハウを提供するケースも増えており、地域の活性化に貢献している。ホテル業への投資の担い手は主として欧米資本であるが、これらに交じって韓国や香港資本がホテルを買収し経営に乗り出す事例もみられる。韓国資本は、例えば、北海道や東北の福島県、九州の長崎県等でホテル事業を行っている。おおむね共通しているのは、韓国からの航空便等、アクセスが良好な地で、ゴルフや温泉観光、買い物が一体的に楽しめるところに資本投下がみられる点である。香港資本も、温泉地や観光地でのホテル経営に投資を行っている。
地域外の資源の活用という意味では、外国からの直接投資を促進することも重要と考えられる。
外国人の受け入れを目指してコロナ禍に完成したホテルが、オープンしないまま売却されるケースも出てきています。
地方における外国からの直接投資案件として最近目立っているのが、リゾートホテルや温泉旅館、ゴルフ場、レジャー施設、レジャー施設近くでの長期滞在型分譲ホテル(コンドミニアム)建設等への外国からの投資である。
静岡県熱海市に戦後、憧れの新婚旅行先だった温泉旅館がある。1934年に開業し、吉田茂元首相ら政財界の要人も愛用した「つるや旅館」だ。尾崎紅葉の小説「金色夜叉」に登場する「お宮の松」の正面に位置する。80年代にかけて団体旅行でも人気だったが、2001年の閉館後は廃虚となり熱海衰退のシンボルとも呼ばれた。
週末を利用して、伊豆・修善寺を訪ねた。コロナ前は中国資本に買収された旅館やホテルに大勢の中国人観光客が押し寄せ大にぎわいしていた温泉郷も、まだ外国人観光客の客足は止まっていた。
外資系企業がホテルを買うことは、外国人客の集客に起因する関係人口の増大、多様性の確保、そして日本人にはない視点がサービスに加わるというメリットがあります。
太平洋を一望する関西の温泉宿の経営者(78歳)は、3年前に働き手不足のため旅館を手放す決意をした。
運営施設には、創業100年・2500坪の広大な敷地を有する、熊本県玉名市の「玉名温泉 山もみじの宿 八芳園」、1300年の歴史を誇る、長野県下高井郡山ノ内町の温泉旅館「渋温泉 小石屋旅館」、大阪市此花区のグランピング施設「パームガーデン舞洲」などがあります。同社代表の近藤様は、ひがしだての事業承継に乗り出した経緯について、次のように説明します。
日本人は経営にあたり銀行で借入をしている場合が多いため、豊富な現金を持っている外国人への売却を希望することが少なくありません。
観光庁の宿泊旅行統計によると、3月の宿泊者数は前年同月比49%増ののべ4973万人。うち外国人は同23.9倍の789万人だった。政府は4月、30年までに対日直接投資100兆円を目指して海外から人材や資金を呼び込むアクションプランを公表している。
しかし、部屋食を提供する温泉旅館はインバウンド需要を十分に取り込めないままコロナ禍に直面し、負債を抱えての事業継続が難航している。
この跡地を香港に本社を置くグローリー・チャンピオン・エンタープライズ・リミテッドが17年に買収し、約250億円かけて改修。全87室に温泉風呂とバトラー(執事)がつく高級宿「熱海パールスターホテル」として昨年9月に開業した。
志賀高原に対して特別な想いを抱いていた近藤様は、創業時の浅からぬ縁を感じたと振り返ります。また、同宿は近隣の渋温泉(長野県下高井郡山ノ内町)に旅館を引き継いだばかりで、志賀高原への事業拡大も非常によいタイミングでした。
少子高齢化による働き手不足や経営者の高齢化、施設の老朽化などが重なり温泉旅館の廃業が相次いでいる。この担い手として台頭しつつあるのが中国富裕層だ。新型コロナウイルス禍で経営が悪化して積極的な銀行融資が見込めない中、相場の倍近い高値もいとわない中国資本が売却先として魅力を増している。


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