追加利上げ巡る日銀発言 市場関心

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追加利上げ巡る日銀発言 市場関心
[紹介元] Yahoo!ニュース・トピックス – 経済 追加利上げ巡る日銀発言 市場関心

追加利上げ巡る日銀発言 市場関心

そして、それ以上に注目しておきたいのが、為替動向だ。大幅な円安進行が続く場合には、日本銀行は追加利上げの前倒しを示唆し、市場の金利見通しを上方修正させることを通じて円安をけん制する可能性が出てくる。さらに、実際に追加利上げを今年後半に前倒しする可能性も出てくるだろう。

展望レポートで示されている日本銀行の経済、物価見通しは、市場の金利見通しがベースとなっている。スワップ市場での2年物金利が0.3%程度、現物国債市場の2年物金利が0.2%弱であることは、先行きかなり緩やかな利上げのペースを市場が織り込んでいることを意味する。向こう1年の間に1回程度の利上げが市場では想定されているのではないか(コラム「日銀の政策金利見通しと物価見通しが整合的でないことの危うさ」、2024年3月28日)。

金融市場の安定を維持する観点からも、今後の利上げは、金融市場の期待に概ね沿った形で実施していくことを日本銀行は目指すだろう。その市場の金利見通しを上方修正させる意図を持ったメッセージを日本銀行が発する場合には、それは、それまで金融市場が織り込んできたスケジュールよりも、追加利上げが前倒しで実施される可能性を強く示すものだろう。

為替市場や債券市場の安定に目配りしつつ、いかにして金融政策の正常化を推し進めていくのか。ある日銀関係者は「政策判断は難しい。難しいが、それが日本銀行の仕事だ。何かシナリオがあるわけではない。データを見て、金利を動かす。それをひたすらにやっていくだけだ」と話す。日銀のナローパスは続く。今後も取材を続け、見届けたい。正常化はこれからだ。

そして、日本銀行もこうした金融市場の金利観を尊重している。これが、現時点での日本銀行の基本的なスタンスであり、先行きの日本銀行の政策を考える際の「起点」となる。筆者も、追加利上げは来年年初になることを、現時点でのメインシナリオとしている。

ただし、日本銀行の今後の政策スタンスは、環境変化によって変わっていくだろう。春闘での賃上げが物価に及ぼす影響は、夏場の物価統計で確認され始めると考えられるが、それが想定以上に大きければ、今秋の追加利上げの可能性も浮上するかもしれない。

日本銀行の植田和男総裁は19日(日本時間20日)、米ワシントンで講演し、一時的要因を除いて基調的に物価が上昇し続ければ「(追加で)金利を引き上げる可能性が非常に高い」との考えを改めて示した。具体的時期は言及しなかった。外国為替市場では日米の金利差が意識され記録的な円安が進んでおり、追加利上げを巡る発言に市場の関心が高まっている。

日銀が緩和的環境が続くという見方を示しているとはいえ、なぜ、ここまで円安が加速するのか。「為替市場は日米の金利差はもちろん、それがどこまで続くかを見ている」こう指摘するのは、あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストだ。日銀はマイナス金利政策を解除したものの、政策金利はまだまだ低く「0.0%~0.1%」。一方のアメリカは「5.25%~5.50%」と、その金利差は圧倒的だ。金利が高い通貨の方が投資家にとっては魅力的で、今の金利差であれば、ドル資産を持ちたい人も多いだろう。さらにこうした状況では、金利が低い円で資金を借り入れ、より金利が高いドルなどの通貨で運用して利ざやを稼ぐ「円キャリートレード」と呼ばれる取り引きがしやすくなる。その際には円を売ってドルを買う動きが増えるので、円安要因として働くことになる。一方、この取り引きで利益を稼ぐ投資家にとって、最大のリスクは急激な円高だ。ドル資産などで運用して利ざやを稼ぐため、為替が円高に大きく動くと、一気に評価損が出かねないからだ。このため、日米の金利差が“安定的に”大きく開いていることが重要となる。諸我さんは日銀やFRBの姿勢に変化がなければ、今の状況が続くとみている。

日銀が緩和的環境が続くと説明する背景には、政策の連続性を強調することで長期金利が跳ね上がるのを抑える狙いがあるとみられる。長期金利が急上昇すれば、実体経済の冷え込みなどの悪影響につながりかねないからだ。こうした説明が奏功したのか、日銀がマイナス金利の解除を発表したあとも債券市場は落ち着いていた。一方で、こうした説明は為替市場では円安を加速させる要因となり、日銀の内部からは「為替の先行きを読むのは不可能だ」と当惑する声や「経済へのショックを抑えるため仕方のない説明だが、国民の暮らし向きにどう影響するか心配だ」という声も聞かれる。また、日銀が追加利上げについて、慎重なコミュニケーションを取ろうとすれば取ろうとするほど、その時期は早まる可能性があるという指摘もある。

今後も金融政策の正常化を進めていく姿勢を示した内容だと感じたが、市場が大きく反応したのは“ゆっくり”ということばだった。タカ派のイメージがある田村委員が追加の利上げについて踏み込んだ発言をせず、“ゆっくり”ということばを使ったことで、利上げまでの道のりは遠いと受け止められたのだ。講演を受けて円相場は急落。政府・日銀は三者会合を実施し、円安をけん制しなければならなくなった。講演後の記者会見で、“ゆっくり”の真意を問われた田村委員は「現在の経済物価見通しを前提にすれば、米国のように1年で5%利上げといったようなことになるとは考えていない」と語った。

諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト「アメリカではインフレ懸念が根強く、すぐには利下げしないという見方が強い。こうした中、日銀が『当面は緩和的環境が続く』と発信していることで、市場では日米の金利差が一気に埋まることへの警戒感が薄くなっている状況だ。従って、両者のいずれかが動かない限りは、ドル資産への人気が高まり、円安を招きやすい状況が続くことになる」

田村委員の発言が急速な円安のきっかけとはなったが、為替市場ではその前から円安基調が続いてはいた。日銀が「当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」として、マイナス金利を解除しても、金融環境は緩和的だという見方を示していたからだ。日銀が17年ぶりの利上げを決めた3月19日も会合の結果が公表されると、円相場は1ドル=150円台半ばまで下落し、その後の海外市場でも151円台後半まで円安が進行した。

金融市場は、マイナス金利政策解除後の日本銀行の次の動きを探る観点から、この「主な意見」に注目していた。しかし実際には、次の政策を明確に示唆するような発言はなかった、というのが金融市場の受け止めのようだ。

それでは、日銀が追加利上げに動くのはいつなのか。複数の市場関係者にタイミングについて見立てを聞くと、まだ自信がないという声も聞かれたものの、おしなべてことし7月や10月という意見が多かった。7月は春闘の最終的な集計がまとまること、10月は短観や支店長会議もあり、経済や物価に関するデータも集めることができるということが、それぞれの根拠として挙げられていた。

三菱UFJ銀行 井野鉄兵チーフアナリスト「『当面は緩和的環境が続く』と言い過ぎると円安が進みやすくなる。足元では円安要因で輸入物価が上がってきていて、今後も円安が続けば、輸入物価の上昇を通じて消費者物価が上振れする可能性がある。そうなると、日銀は物価の見通しを引き上げざるをえなくなり、遠くない将来の追加利上げが視野に入ってくることになる」

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