24年度ベア 中小企業にも広がり

24年度ベア 中小企業にも広がり
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24年度ベア 中小企業にも広がり

連合が15日発表した2024年春季労使交渉の第1次集計で、中小企業の賃上げ率は4.42%に達し、32年ぶりの高水準となった。引き上げ機運は中小にも広がり、物価と賃金が持続的に上がる好循環に弾みがつく。

自動車総連はベアの統一要求を見送り、目指すべき賃金水準は各労組の判断に委ねる。上げ幅だけでの要求では、賃金水準が異なる大手と中小の格差は縮まらないと考えるからだ。19年から賃金の引き上げ額全体と絶対額の双方を重視する取り組みを進めており、「中小が大手を上回るベアを獲得するなど着実に成果を挙げてきた」(並木泰宗事務局長)と意義を強調する。ただ、23年は価格転嫁が進展せず厳しい収益環境に置かれた中小の賃金改善の獲得が進まなかった。こうした事態を重く見て、24年は企業間取引の是正に力を入れる。「ティア(部品納入メーカー)の深い仕入れ先まで(価格転嫁を)浸透させる必要がある」(同)との認識に基づき、加盟労組を通じ現場の実態を把握。その上で対応を促すとともに産別との情報共有を進める構えだ。

芳野友子会長は15日の記者会見で「満額や要求を超える回答は昨年以上という印象だ」と語った。産業別では機械、金属など中小の労組を中心に構成する「ものづくり産業労働組合JAM」の賃上げ率が15日時点で4.09%と前年実績を0.57ポイント上回る。月額1万1302円の引き上げで、99年の結成以来過去最高となった。

1次集計時点での妥結数は358組合で前年から40減った。高水準を要求する労組と企業の間で交渉が長引いているとみられる。価格転嫁の難しい中小企業ほど賃上げの厳しさがうかがえる。

大手との取引をめぐっては原材料やエネルギー価格の上昇分に加え、人件費の増加分を納入価格に上乗せする価格転嫁が十分に進んでいないとの不満は根強い。こうした取引慣行の是正が賃上げに結びつくかが24年春闘のカギとなる。政府は円滑な価格転嫁を促すための交渉指針を23年秋に公表し、監視を強めるが、指針の周知はこれからだ。中小の中には労働組合がない企業も少なくないことから賃上げ機運の醸成と同時に社会全体で取引慣行是正につなげる必要がある。

中小企業の賃上げは大企業にはやや及ばない。賃上げ率は組合員数300人以上の大企業は5.30%で、中小との差は23年の0.36ポイントから0.88ポイントに拡大した。22年は0.1ポイントだった。

政府は「物価を上回る賃上げ」をかかげ、2023年に賃上げ率の低さが目立った地方や中小企業を24年春季交渉の要ととらえる。足元の消費者物価指数(CPI)は24年1月に2.0%上昇と中小でもベアだけで上回っている。

24年春闘は中小企業の動向が一段と重要性を増す。23年は大手平均の賃上げ実績が3・99%(経団連集計)だったのに対し、中小は3・23%(連合集計)にとどまり、企業規模が小さくなるほど賃上げ率は低い。人材の獲得や定着のための「防衛的賃上げ」にも限界があり、収益構造の改善や生産性向上を伴わなければ、持続的な賃上げの流れから取り残される可能性がある。

規模別にみると、ベアの引き上げ率が3・0%以上と回答したのは大企業49・9%、中堅・中小企業60・0%。年収ベースでも3・0%以上引き上げたのは大企業93・4%、中堅・中小企業80・1%に上り、賃上げの動きが中堅・中小企業にも広がっていることが分かる。

調査は、同局が管内の経済情勢報告を取りまとめる際に継続的にヒアリングを実施している企業90社(大企業29社、中堅企業31社、中小企業29社、その他1社)を対象に行った。

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