ドル/円の5月見通し「円安地合い継続 米欧の利下げがカギに」

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ドル/円の5月見通し「円安地合い継続 米欧の利下げがカギに」

【外為総研 House View】

House View

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

目次

▼ドル/円
・ドル/円の基調と予想レンジ
・ドル/円 4月の推移
・4月の各市場
・4月のドル/円ポジション動向
・5月の日・米注目イベント
・ドル/円 5月の見通し

ドル/円

ドル/円の基調と予想レンジ

ドル/円 4月の推移

4月のドル/円相場は150.811~160.219円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約4.3%上昇(ドル高・円安)した。上旬は、一昨年10月、昨年10月と2年続けて上値を抑えられた152.00円手前で伸び悩んだが、10日に発表された米3月消費者物価指数(CPI)の上振れを受けてこれを突破。上値抵抗を突破したことで上昇に弾みが付くと15日には米3月小売売上高の好結果を受けて154円台へと上伸した。なお、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は16日、「最近のデータはインフレに関して我々に自信を与えるものではなく、むしろその自信を得るには予想よりも長い時間がかかる可能性が高いことを示している」として市場の利下げ後ずれ観測を追認した。
節目の155.00円を前に日本政府・日銀による円買い介入への警戒感や、イランとイスラエルの対立を巡る中東の地政学リスクの高まりから伸び悩む場面もあったが、24日のNY市場序盤には米長期金利の上昇を背景に155円台へ上昇。

26日に日銀が金融政策の現状維持を決め、円安に対する強い懸念を示さなかったことから一気に158円台へと続伸した。29日には仕掛け的な円売りと見られる動きで一時160円台へと急伸。その後は政府・日銀による円介入と見られる円買いが断続的に入り154円台まで下落する場面もあったが157円台に戻して4月の取引を終えた。

始値 高値 安値 終値
151.243 160.219 150.811 157.812

出所:外為どっとコム「外貨ネクストネオ」

1日
米3月ISM製造業景況指数は50.3と市場予想(48.3)を上回り、2022年9月以来1年半ぶりに活動拡大・縮小の分岐点である50.0を上回った。構成指数の「仕入価格」や「新規受注」が予想以上に上昇した。

3日
米3月ISM非製造業景況指数は51.4と市場予想(52.8)に反して前月(52.6)から低下。パウエルFRB議長は「経済の力強さとインフレを巡るこれまでの進展を踏まえると、今後発表されるデータに基づいて政策決定を行っていく時間がある」として、利下げを急ぐ必要はないとの考えを改めて示した。一方で、「年内どこかの時点で」利下げを開始するのが適切になる可能性が高いとの認識も改めて表明した。

5日
米3月雇用統計は、非農業部門雇用者数が30.3万人増と市場予想(21.4万人増)に反して前月(27.0万人増)から拡大。失業率は予想通りに3.8%と前月(3.9%)から低下した。労働参加率は62.7%へ予想以上に上昇(予想62.6%、前回62.5%)。平均時給は前月比+0.3%、前年比+4.1%と予想通りに伸びた。

10日
米3月CPIは前月比+0.4%、前年比+3.5%と市場予想(+0.3%、+3.4%)を上回り、前年比の伸びは2カ月連続で加速した。食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年比+3.8%で高止まりした(予想+3.7%、前回+3.8%)。FRBが公開した米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では「ほぼ全員が年内のいずれかの時点で借り入れコストを引き下げ始めるのが適切になると判断した」としつつも、「参加者は総じて、根強い高インフレを巡る不確実性を指摘し、最近のデータはインフレが持続的に2%に低下するという確信を強めるものではないという見解を示した」「一部の当局者は、金融政策が望ましい水準ほど制約的でなく、そのため総需要に勢いが増し、インフレに上昇圧力がかかるリスクがあると指摘した」ことが明らかになった。

15日
米3月小売売上高は前月比+0.7%と市場予想(+0.4%)を上回った。自動車を除いた売上高も前月比+1.1%と予想(+0.5%)を大幅に上回る伸びとなった。また、いずれも前月分がそれぞれ+0.9%、+0.6%に上方修正された。なお、国内総生産(GDP)の算出に用いられるコア売上高(自動車、ガソリン、建材、外食を除く)は前月比+1.1%とこちらも市場予想(+0.4%)を大きく上回った。

17日
日米韓3カ国の財務相がワシントンで会談。「最近の急速な円安及びウォン安に関する日韓の深刻な懸念を認識しつつ、既存の G20 のコミットメントに沿って、外国為替市場の動向に関して引き続き緊密に協議する」とする共同声明を発表した。その後、鈴木財務相はイエレン米財務長官と個別に会談したことも明らかにした上で「為替の動向をめぐって日米で緊密に意思疎通を図っていくことを確認した」と述べた。

26日
日銀は政策金利を0~0.10%に維持。長期国債の買い入れも月6兆円を目途とする方針を維持した。植田総裁は会見で「当面、緩和的な金融環境が続くと考えている」「基調的な物価上昇率に、円安が今のところ大きな影響を与えているということではない」などと述べた。日銀が円安への対応を協議するとの観測報道が相次いでいたが、そうした動きは全く見られなかった。米3月個人消費支出物価指数(PCEデフレーター)は前年比+2.7%、コアPCEデフレーターは前年比+2.8%で、いずれも市場予想(+2.6%、+2.7%)を上回った。

29日
昭和の日の祝日で薄商いの中、ストップロスの誘発を狙った仕掛け的な円売りと見られる動きでドル/円は1990年4月高値の160.20円付近へと急伸。しかし、その後は政府・日銀による市場介入と見られる円買いで急落した。その後も、断続的に介入と見られる円買いが入り、一時154円台へと反落。なお、財務相の神田財務官は「介入の有無について申し上げることはない」としながらも「投機による激しい異常とも言える変動が国民経済に与える影響を看過できない」「必要に応じて適切な対応をする」「介入かどうか申し上げないが24時間365日、平時であっても対応できる」などと述べた。

4月の各市場

4月のドル/円ポジション動向

【情報提供:外為どっとコム】

  • ※ データの更新は、NYC時に行われます(前営業日のデータが追加)。また、過去180日間のデータが表示されます。
  • ※ 外為どっとコムのFX口座「外貨ネクストネオ」でお取引をされているお客様のポジション保持情報の比率を表しています。
  • ※ 尚、このポジション比率情報は情報提供を目的としており、投資の最終判断は投資家自身でなさるようお願い致します。

 

5月の日・米注目イベント

ドル/円 5月の見通し

ドル/円は4月29日に一時160円台へ上昇した。その後、日本政府・日銀による円買い介入騒動でいくぶん下落したとはいえ歴史的な高値圏での推移が続いている。日銀は3月にマイナス金利を解除したが、4月会合でも「当面は緩和的な金融環境が続く」としてハト派スタンスを維持。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が4月16日の講演で、インフレ圧力が根強く続けば「必要な限り」金利を高水準に据え置くとしてタカ派姿勢を表明。市場では、日米金利差は容易に縮小しないとの見方から、低金利の円を売って高金利のドルを買うキャリートレードが活発化している。円に買いが入るとすれば、本邦当局による介入もしくはキャリートレードの手仕舞いくらいしかないというのが足元の状況だろう。

5月のドル/円は、4月29日に介入が発動されたと見られる159円台半ばが上値ポイントとして意識されようが、介入は時間稼ぎでしかなく相場のトレンドは変えられないとの見方に沿えば月内にも再び160円台へ上伸する可能性は低くないと考えられる。反対に、もし介入騒動で付けた安値154.50円付近を下回るとすれば、ドル安主導でキャリートレードの手仕舞いが起きた場合だろう。すなわち、いったん後退した米国の利下げ観測が再び強まるケースでは市場参加者の見方が修正されることになるため、積み上がったドル買い・円売りポジションが大きく巻き戻される公算が大きい。現時点では前者がメインシナリオであり、後者の蓋然性は低いと見るが、1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)や3日の米4月雇用統計の結果を確認した上で予想を再点検したい。
(予想レンジ:152.000~163.000円)

参考:ドル/円チャート(1974年~2024年)

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株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。

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[紹介元] 外為どっとコム マネ育チャンネル ドル/円の5月見通し「円安地合い継続 米欧の利下げがカギに」

ドル 円の5月見通し 円安地合い継続

4/19にラムスデン副総裁によるインフレ緩和を見込む発言を受けて英中銀の6月利下げ開始観測を背景に4/22の1.2300ドルを安値に1)4/23発表の英4月サービス業/総合PMIが市場予想を上回り製造業PMIの下振れを相殺したこと 2)英中銀チーフエコノミストのピル氏が早期利下げ開始観測を牽制したこと 3)ポンド円が4/22の190円32銭を安値にドル円を軸にした円安基調を背景に連日で安値/高値を切り上げ、4/26の日銀政策決定会合を受けて197円93銭まで上昇したことを背景に4/12以来の1.2541ドルまで上昇。しかし、米3月PCEコアデフレーターが市場予想を上回ったことから1.2449ドルへ反落し1.2494ドルで取引を終えたほか、ポンド円は197円82銭で取引を終えました。今週は英国発の主要経済指標もないため、1)4/30-5/1のFOMCのほか、5/1発表の米4月ISM製造業景気指数や5/3の米4月雇用統計を受けてドル高基調が一段と進むか 2)歯止めのかからない円安が続く中、本邦通貨当局による円買い介入の有無を含め、ドル円が160円を目指して一段と円安が加速し、ポンド円も節目の200円台へと一段高となるか注目されます。ポンド円は先週1週間で7円60銭ほどの急速な円安進行の後だけに円買い介入への警戒のほか、ポジション調整にも注意が必要です。こうした状況下、ポンドドルは日足・転換線(1.2420ドル)を下値支持線として基準線(1.2504ドル)を明確に上抜け、200日移動平均線(1.2557ドル)を回復するか、あるいは基準線を上値抵抗線として転換線を下抜け、4/22の1.2300ドルを目指して下落するか注目されます。

ユーロドルは6月のECB理事会での利下げ開始を既に織り込んだこともあり4/16の1.0601ドルを目先の安値にポジション調整の買戻しに加え、4/23発表のドイツやユーロ圏4月サービス業/総合PMIが市場予想を上回った一方、米製造業/サービス業が予想を下回ったことを受けて1.07ドル台前半を回復。さらに1)4/24発表のドイツ4月IFO景況感指数が予想を上回ったこと 2)ドル円が連日高値を更新する円全面安の中、ユーロ円が4/22の164円40銭を安値に4/26には2008年8月以来の169円39銭へ上昇したことにサポートされ、1.06ドル台後半から1.07ドル台前半での底堅い値動きを継続。4/26の日銀金融政策決定会合や植田日銀総裁の会見を受けたユーロ円の上昇とともに1.0753ドル上昇したものの、米3月PCEコアデフレーターが市場予想を上回ったことから1.0674ドルへ反落し、1.0693ドルで取引を終えたのに対し、ユーロ円は169円30銭で取引を終えました。FRBの利下げ開始観測の後退に対し、既に市場はECBの6月の利下げ開始を織り込んでいるため、「4/30-5/1のFOMCが予想以上にタカ派的見解が示されなかった場合を除き、ドル堅調地合いが続くと見込まれます。そのため、日足・基準線(1.0743ドル)や4/26の1.0753ドルを下値支持線として一段と上昇する可能性は限られ、FOMCでのパウエル総裁の会見がタカ派寄りとなれば4/23以降の下値支持線となっている転換線(1.0677ドル)を下抜け、この水準を上値抵抗線として再び4/16の1.0601ドルを試す下振れに注意が必要です。こうした中、1)4/29-30発表のドイツおよびユーロ圏4月消費者物価指数や1-3月期GDPを受けて6月以降の利下げ継続観測が高まるか 2)5/1発表の米4月ISM製造業景気指数や5/3の米4月雇用統計の結果とユーロドルの反応が注目されます。また、ユーロ円は歯止めのかからない円安進行に対し、本邦通貨当局による円買い介入の有無を焦点に2008年7月の高値(169円96銭)を上抜け170円台まで円安が加速するか注目されます。

[11] 改めて冒頭の図表1をみると、日本円が一番強かったのは25年余り前の1990年代半ばだった。これと比べると、リーマン・ショック後の1ドル=80円台、70円台は実質実効ベースでは、それほど極端な円高ではなかったのだが、既に競争力を失いつつあった日本の産業界は円高是正を強く求めた。その結果が「異次元緩和」という名の円安政策だったが、その後の10年余りで競争力の立て直しが進むことはなく、そこに「レパトリ神話」の消滅が加わって、現在の極端な円安になったと言うことができよう。

4/22のシドニー・ウエリントン市場での99円07銭を安値に4/26のNY市場終盤にかけて103円48銭まで上昇し、103円45銭で取引を終えました。1)英米両政府がロシアへの追加制裁として、ロンドン金属取引所(LME)とシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でロシア産の銅、アルミ、ニッケルの取引を禁止したことで、総合的な商品価格を示すCRB指数が2022年8月以来の高値圏で推移したこと 2)4/23の米2年債入札に対する旺盛な需要が確認され米長期金利の低下とともに欧米主要株価指数が上昇したリスク選好にサポートされたこと 3)4/24発表の豪1-3月期CPIが前期比/前年比ともに市場予想を上回り年内の利下げ観測が後退したことやドル円が155円台を上抜けても本邦の通貨当局が静観したこと 4)4/25-26発表の米1-3月期及び米3月PCEコアデフレーターが市場予想を上回りFRBの利下げ開始観測の後退とともに日米金利差拡大を受けて円売りが加速したこと 5)4/26の日銀金融政策決定で「緩和的な金融環境を維持する」との方針があらためて示されたことから円が全面安となったことが材料視されました。今週も本邦通貨当局による円買い介入がないままドル円が一段高となれば2013年4月以来の105円台まで円安が進行する可能性があります。しかし、先週を通じて円が全面安となったことから急ピッチな上昇に対するポジション調整や利益確定売り、さらには円買い介入への警戒が上値抑制につながるか注目されます。一方、4/30-5/1のFOMCや5/3の米雇用統計を受けてドル円が160円台へと一段と円安が加速する可能性もあり、日足・転換線/基準線(いずれも100円48銭)を目先の下値支持線とする堅調地合いを維持すると見込まれます。そのほか、1)4/30の豪3月小売売上高や5/2の豪3月貿易収支 2)5/1発表のニュージーランド1-3月期雇用統計に対する対NZドルへの反応が合わせて注目されます。

中東情勢を巡る過度な地政学リスクが後退した一方、4/25-26の米1-3月期GDPや米3月PCEコアデフレーターの発表を控え対ドルで伸び悩んだものの、4/23の8円03銭を安値に南ア2月の景気先行指数が112.80と1月(110.80)から上昇した一方、米4月製造業/サービス業PMIが市場予想を下回ったこと、さらにドル円、クロス円の上昇とともに4/25には8円21銭へ上昇。さらに4/26の日銀金融政策決定や植田日銀総裁の会見を受けて円が全面安となる中、8円42銭まで上昇し8円41銭で取引を終えました。心理的節目とされる8円00銭を目先の下値として意識するとともに、日足・転換線/基準線(いずれも8円16銭)を下値支持線とする堅調地合いを継続。また、中東情勢を巡るリスク回避の後退や日銀金融政策決定会合で「緩和的な金融環境を維持する」意向を示したことが下値をサポート。一方、南アの財政面を巡る脆弱性や景気先行きへの不透明感などファンダメンタルズの脆弱性に加え、5/29実施の総選挙でラマポーザ大統領率いる与党ANC(アフリカ民族会議)が大幅に議席を失うと見込まれる政局不透明感が上値抑制につながるか注目されます。また、4/30発表の南ア最大の貿易相手国である中国4月製造業/非製造業PMIへの反応ほか、4/30-5/1のFOMC、さらに5/3の米4月雇用統計を受けた対ドルでの反応も注目されます。しかしながら、本邦通貨当局による円買い介入でも円安基調を大きく転換することが難しいとされるだけに今週も8円台前半を中心に8円50銭を目指し一段高となるか注目されます。

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